2016/11/11

つっぱり大相撲


【発売】テクモ
【開発】テクモ
【発売日】1987年9月18日
【定価】4,900円
【媒体】ファミコン用カートリッジ
【容量】512Kbit
【ジャンル】スポーツ




技術とセンスが光る家庭用機初の相撲ゲーム


【ストーリー】
 どすこーい、どすこい!君も相撲をやってみないか?最初は前頭十三枚目だけど、戦いながら経験を積んで、強くなっていく。どんどん勝って、うでっぷしを上げて、横綱を目指せ。勝者となって相撲界の星となるか、敗者となって負け犬人生を送るかは、君の努力にかかっている。親方気分を味わいたい君は、対戦モードで勝ち抜き戦。キミも親方、友達も親方、みんなでワイワイガヤガヤ、はっけよーい、のこった!


【概要】
 テクモ(現コーエーテクモゲームス)による家庭用ゲーム機初の相撲ゲーム。簡単な操作でありながら、ボタンの組み合わせによって多彩な技が繰り出せる奥深さを兼ね備え、なおかつ勝ち星を重ねるごとにプレイヤーの力士が成長する育成要素まで盛り込んだ意欲作。相撲ゲームの基本システムを確立し、同ジャンルにおける以降のスタンダードとなっただけあって、1作目にして完成度は非常に高い。また、後の対戦型格闘ゲームの原型となった作品のひとつでもある。


【ゲームシステム】
 固定画面のサイドビュー形式による対戦型相撲ゲーム。プレイヤーは新入幕の前頭十三枚目となって一場所15日の取り組みを勝ち抜いていく。「立ち合い」から「寄り」、「押し」、「投げ」、「つっぱり」、「はたき」といった基本動作、「もろだし」、「すうぷれっくす」、「ぶれえんばすたあ」などの特殊技まで、全て十字キーとA、Bボタンの組み合わせで行う。これらの技は、画面下に表示されている「体力メーター」が点滅するタイミングに合わせてボタンを押す事で発動する。体力メーターは相手の技を受けると減り、相手を攻撃すると回復。相手の強さや受けた技によってメーターの減り方は異なる。

 また、プレイヤーは勝ち星を重ねる事で「うでっぷし(レベル)」が上がり、攻撃力と防御力が上昇する。前頭十三枚目から順に前頭一枚目、小結、関脇、大関と番付を上げ、二場所連続優勝を果たして横綱に昇進した後に優勝するとエンディング。番付は負けが込んでも下がる事はなく、パスワード制によるコンティニューも導入されている。2プレイによる対戦モードでは、4つの相撲部屋の中から各1部屋を選択し、その部屋に所属する5人の力士による勝ち抜き戦ができる。


【総評】
 『テニス』や『ゴルフ』、『F1レース』など、任天堂からファミコン初期に発売された一連のスポーツゲームは、各競技「初」にして既に基本システムを確立させた作品が多い。以降、野球ゲームのスタンダードとなった『プロ野球ファミリースタジアム』(ナムコ)や、当時はあまり馴染みのないアメリカンフットボールが題材の『10ヤードファイト』(アイレム)など、様々な競技がゲームの題材となった。が、こと大相撲に関しては、千代の富士関の「ウルフフィーバー」とファミコンブームの時期が重なるにも関わらず、家庭用ゲーム機はおろかアーケードでもほとんど見かける事がなかった。本作以前に相撲を題材にしたゲームは、84年にテクノスジャパンが開発した『出世大相撲』(新日本企画)とデコカセットシステム用カセットテープ『大相撲』(データイースト)のたぶん2作程度で、どちらもアーケード用だった。

 他競技に比べ、なぜ相撲ゲームの登場がここまで遅れたのか。それは、相撲のルールそのものにあったのではなかろーか。1対1による対戦形式ながら、まず「組む」事から始めなければならない。その状態で多彩な決まり手を繰り出すデバイスは、ボタン数の少ないファミコンやアーケード筐体のコントローラだ。単なる押し相撲では「相撲ゲーム」として成立しない。「シンプルながら奥深い」という表現は何にでもわりと安易に使われがちだが、実際に両立させるのは簡単ではなく、当時の各ゲームメーカーが敬遠するのも分からなくはない気がするのだった。

 本作では、立ち合いから寄り、つり、投げ、はたきといった基本動作のほとんどをBボタンに割り振り、相手の体力メーターが減った際に十字キーとAボタンによるコマンド入力を行う事で、決まり手となる技が出しやすくなり、勝敗が決まるというシステムを築いた。まだ「対戦型格闘ゲーム」という概念さえ曖昧だった時代だ。これにレベル上げの要素を重ねる事で、プレイヤーに成長の手応えを感じさせ、ゲームに奥深さを与えた。この体力メーターこそが本作のキモなのだ。元々テクモは前身のテーカン時代からサッカー、アメリカンフットボール、野球、プロレスなど、現在までに幅広い競技のゲーム化を手がけているだけあって、このシステム周りの完成度はさすがと言えよう。

 本作にはもうひとつキモがある。それは、質実剛健な大相撲の世界を、比較的低学年層の多いファミコンユーザーへ取っ付き易く表現したローカライズのセンスだ。ゲームを始めると、当時では珍しい漢字表示でまずは四股名を決める。55文字という制限はあるが、当て字で自由に四股名を決めるだけでもチビッ子達にとっては楽しめる。力士のグラフィックはプレイヤーも相手も肌と廻しの色違いのみだが、そのぶん表情が非常に豊かに描かれている。取り組み前の四股や塩撒き、ポーズボタンを押した際にほうきを持って土俵を清める呼出の登場など、さりげない演出にもセンスが光る。特に(≧▽≦)←こんな顔したうさぎの行司がかわいい!

 派手なプロレス技も用意されているが、『つっぱり大相撲』の技と言えば「もろだし」だろう。要は廻しが取れて局部っていうかちんこっていうか、あ、ちんこって書いちゃったけど、これ、bloggerの規定に引っかかったりしないですかね?なんか心配になってきたんで、今のうちにちんこって書いた事を謝っておきます。ごめんなさい。…えーと、何の話だっけ…ああ、ちんこじゃねえ「もろだし」の話だ。本来は「不浄負け」という非技の名前で、100年に1度あるかないからしいが、「廻しが取れる=もろだし」と信じている元ちびっ子達は自分を含めきっと多いはずだ。ともだちんこ!へけけ!←マイナス5億点。

 練り込まれたシステム、軽やかな演出とBGMに親しみのあるグラフィック。大きな欠点もなく、現在も名作のひとつに挙げられる本作は、僅か2ヶ月で開発されている。先にスタートした『キャプテン翼』の開発が遅れに遅れまくっていたため、そっちを一時中断して本作が開発されたのだ。当時のゲーム開発は今とは比較にならない少人数&短期間で行われていたとは言え、『マイティボンジャック』の3ヶ月といい、テクモわりかしめちゃくちゃである。そして、何よりそんな短期間で異常な完成度のゲームを生み出す当時のテクモ開発陣のスキルの高さ&センスのよさ。実際、80年代から90年代初期にかけてのテクモ製ゲームには、上記以外にも『スターフォース』や『アルゴスの戦士』、『ソロモンの鍵』、『忍者龍剣伝』、『キャッ党忍伝てやんでえ』などの良作が多い。

 ちなみに、本作の開発に携わった鶴田道孝氏のサイトでは、超ハードスケジュールに追い詰められながらも考え出されたプログラムの一部が後に『キャプテン翼』の開発に転用できた話や、鉛筆画によるキャラクタースケッチといったテクモファン必読な内容が掲載されているので、ぜひ読もう!

 その完成度の高さからPCエンジンやスーパーファミコンなどで続編も発売。本作自体も相当数が売れたため、現在の中古市場では200円前後と安く入手できる他、Wii、Wii U、ニンテンドー3DSの各種ダウンロード販売や、発売されたばかりのニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータにも収録されているため、今でもわりと気軽に楽しむ事ができるので、君も相撲をやってみないか!


【2016.11.21.追記】
 本作の開発に携わられた鶴田道孝様より、本エントリーをTwitterで紹介して頂きました。ありがとうございます。鶴田様の最新情報や現在の作品はWELCOME turu3netからご覧頂けます。




1987 (C)TECMO LTD.

2016/11/04

ナムコミュージアムVOL.4


【発売】ナムコ
【開発】ナムコ
【発売日】1996年11月8日(PlayStation the Best版:1999年10月28日)
【定価】5,800円(PlayStation the Best版:オープン価格)
【媒体】プレイステーション用CD-ROM
【ジャンル】オムニバス
【周辺機器】ネジコン、アナログジョイスティック対応
【受賞】1996年:CESA大賞'96ゲームジャンル別賞バラエティ賞




昔のナムコが好きだ!その4


【ストーリー】
 お陰様をもちまして、当ミュージアムも第4弾を迎えました。これもひとえに皆様方のご支援の賜物と、スタッフ一同心より感謝しております。そこで今回は、そういった感謝の意味も込めまして、比較的記憶に新しい1984~1988年にかけての作品を集めました。もちろん、当時好評を博した作品が中心となっております。オールドファンのみならず、若いファンの方々にも馴染みのあるものが多いのではないでしょうか?それでは本日も「ナムコミュージアム」をごゆっくりお楽しみ下さい。




【収録作品】
01.パックランド(84年8月)
02.イシターの復活(86年7月)
03.源平討魔伝(86年10月)
04.アサルト(88年4月)
05.アサルトプラス(88年)
06.オーダイン(88年9月)






【概要】
 ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)が地球一輝いていた頃に発売されたアーケードゲームの数々を完全移植で複数収録したオムニバスソフト。ゲームのみならず、多くの関連資料や同社の会社資料までも収録したプレイステーション用ソフトとして、全6本が順次発売された。本作はその第4弾。『アサルト』、『アサルトプラス』は家庭用ゲーム機では初の移植で、別売りの周辺機器「アナログジョイスティック」(ソニー・コンピュータエンタテインメント)に対応。

 また、『イシターの復活』は特別付録「PERSONAL PASSWORD NOTE,ROOM NAME NOTE,おまけ」シートが同梱されている他、本作独自仕様の「裏イシターの復活」が追加されている。オリジナルグラフィックやサウンドが楽しめる「劇場」では、ロボットバンド「ピクパク(PIC-PAC)」の歌が聴けたり、資料類が閲覧できる「図書室/展示室」には、広報誌「namco COMMUNITY MAGAZINE NG」に冨士宏氏が連載していた『迷廊館のチャナ』も全23話中13話までが収録されていたりと、今作もナムコファンなら死んでも買おう!



【ゲームシステム】
 ミュージアム内の基本構成は前作『ナムコミュージアム VOL.3』と同じだが、演出やグラフィックは大幅にパワーアップし、隠し要素や裏技も充実している。

 『アサルトプラス』は隠しゲームとして収録されている。出し方は、ミュージアム受付の階段を上って一番左側にある真っ暗な部屋に入り、上+△+L1+R1ボタンを同時に押す。入力が成功すれば効果音と共に女性司令官が現れるので、正面で○ボタンを押す。すると、リアル等身だった女性司令官が三頭身のディフォルメモデルに変化し、部屋の中央にある台座の前で再び○ボタンを押せば、『アサルトプラス』専用の「ゲームルーム」に入る事ができるのだ。

 また、「パックマン」を主人公に収録作品のキャラクター達が織り成す従来通りのオープニングムービーとは別に、今作では隠しムービーとして『源平討魔伝』のプロモーションビデオ映像をオープニングで見る事ができる。方法は、プレイステーション本体の電源を入れてすぐにL1+R1ボタンを押し続けていればオッケー。10分弱あるオリジナル版を3分ほどに編集したものではあるが、『ゼイラム』や『牙狼-GARO-』シリーズの雨宮慶太氏が監督を務め、実写と特撮とアニメを組み合わせたPVは、往年の特撮ドラマ『怪奇大作戦』っぽい雰囲気もあったりなんかして、なかなかの見応えだ。


【総評】
 シリーズ4作目という事で円熟味を増した今作。ミュージアムから各ゲームモードへの移行はよりスムーズになり、ロード時間は更に短縮。前述した隠し要素や裏技、ちょっとした演出に至るまで、もはや貫禄さえ漂わせる作りとなっている。また、既にファミコンやPCエンジンへ移植されている比較的メジャーどころと共に、家庭用ゲーム機初移植となった『アサルト』と『アサルトプラス』を加えた収録作品群のバランス&コストパフォーマンス。いや、もうね、まだ買ってない人がいたらとにかくこれだけでも買おうよと。

 グラフィックの回転、拡大、縮小を得意としたアーケード基板「SYSTEM II」による開発第1弾ゲームだった『アサルト』は、「SYSTEM II」の特徴と類似した機能を持つスーパーファミコンでの発売を期待していたものの、その特殊な操作性故に、家庭用ゲーム機への移植は本作まで待つ事になった。一方、既に高い再現性でPCエンジンに移植されている『パックランド』、『イシターの復活』、『源平討魔伝』、『オーダイン』も硬軟バランスよく収録。この隙のなさ。完璧じゃないすか?

 前述した『源平討魔伝』PVも含め、前3作よりも更に資料性が高くなったのもナムコファンには嬉しい。『アサルト』では『機動戦士ガンダム』や『タイムボカン』シリーズのメカニックデザイナーである大河原邦男氏による初期デザイン画や企画書まで収録。そして、なんと言っても「図書室/展示室」で読む事のできる『迷廊館のチャナ』!冨士宏氏特有の温かで柔らかなタッチで描かれる少女「チャナ」と、「扉」の向こうに住む「オルオル」の小さな大冒険。未だ単行本化されておらず、現在でも読めるのは当時のNGか本作のみという薄幸の作品ではあるが、『午後の国』同様に良作なので、どこか単行本化して下さい!(血の涙)

 「劇場」でライブを行っているロボットバンド・ピクパクについても触れておきたい。ビデオゲームと並び、ナムコでは60年代から「仕事ロボット」、「単機能型ロボット」、「エンターテインメントロボット」、「自立型知能ロボット」など、80体以上のロボット開発を行っていた。その実績から、85年に開催された国際科学技術博覧会(つくば科学万博'85)にて、マスコットキャラクター「コスモ星丸」のロボットを開発。ナムコ単独でも84年11月17日にリリースしたロボットバンドが演奏を行った。これがピクパクだ。

 ドラムスの「ストロボ・ゴンザレス」、ヴォーカルとキーボード担当の「マリア・ソケット」、ギターの「デジタル・トメIII」のメイン3体に、司会兼マネージャーの「まじめんたろう」と5体のバックコーラス「ザ・カスタネッツ」による5種9体のロボットで構成されたグループ全体をセンターコントロールシステムで制御し、更に各機の歌や演奏、セリフ、挙動などはレーザーディスクによる信号で制御していた。また、拍手や歓声など、観客の反応を音情報によって判断し、それによってショーの構成を変更して観客とのコミュニケーションを図ったという。総制作費は1億5,000万円。貸し出しも行っており、そのレンタル料は諸経費を除いて1週間で350万円だったそうだが、現在は全て所在不明との事。

 本作では3Dキャラとして蘇ったピクパクが劇場でのBGMとして「ピクパクのテーマ」と「ロボットマーチ」の2曲を奏でている。最近知ったんですけど、これ、「ピクパクのテーマ」の作詞がEPOで作曲が清水信之、「ロボットマーチ」の作詞作曲が大貫妙子って!2曲ともどこからどう聴いても80年代テクノポップ全開な曲なので、忘れた頃や疲れた時に聴くと泣けます。ちなみに、歌は前述した様にLDから流れているため、実際にロボットが楽器を演奏しているわけではないが、そこはロボットに「かわいげ」や「情緒」を求めるナムコらしさの表れ。ナムコのこういうところが好きなんだよー!ソフトバンクに爪の垢を煎じて飲ませてやりたい!←いらん事書くな。また、本作のロード画面ではピクパクの他にも「マッピー」や「キュージくん」ら、往年のナムコ製ロボット達のCGが表示されるので、これまたナムコファンは嫁を質に入れてでも買うべし!マジで!


【2018.10.25.追記】
 マッグガーデンのWebコミックスサイト「MAGCOMI」にて、『迷廊館のチャナ』が25年ぶりに完全新規復活で連載開始。




Books
『迷廊館のチャナ』1巻










【著】冨士宏
【発売】マッグガーデン
【発売日】2019年8月26日
【定価】600円


 18年10月より上記「MAGCOMI」で連載が開始された『迷廊館のチャナ』、待望の単行本化!第1話「開かずの扉」から第8話「三人の迷走」までを収録。NG掲載時との相違点やラフスケッチなども掲載されており、往年のナムコファンは全員読むべし!



Produced by NAMCO LTD. (C)1996 NAMCO LTD.,ALL RIGHTS RESERVED

2016/10/12

グーニーズ2-フラッテリー最後の挑戦-


【発売】コナミ
【開発】コナミ
【発売日】1987年3月18日
【定価】5,300円
【媒体】ファミコン用カートリッジ
【容量】1M+64KRAM
【ジャンル】アクション




市場のニーズに合わせた前作と似て非なる続編


【ストーリー】
 グーンダックスの町で相変わらず楽しくやっているグーニーズの元に、ある日フラッテリー一家から挑戦状が届きました。 「おまえ達の仲間の人魚のアニーを我々のアジトに監禁している。助けられるもんなら助けてみな」という内容のものです。もちろん、スリルと冒険が大好きなグーニーズ、そんな挑戦状に尻込みする者は1人もいません。次々とアジトに乗り込んで行きました。でも、誰1人帰って来る者はなく、マイキーは最後の1人になってしまいました。マイキーは無事、仲間を救い出し、人魚のアニーを助ける事ができるでしょうか?


【概要】
 スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮、リチャード・ドナー監督の映画『グーニーズ』を原作としたアクションゲームの第2弾。映画を原作とした前作『グーニーズ』とは異なり、今作はゲームオリジナルの設定となっている。基本的には前作同様サイドビュー形式のアクションゲームだが、新たに3Dダンジョンが追加され、ステージマップが広大になった。また、アイテムや敵キャラクターの種類も豊富になった一方、難易度も上がっている。メインBGMは前作で高い評価を受けたシンディ・ローパーの歌う映画の主題歌「The Goonies 'R' Good Enough」が引き続き使用されている。


【ゲームシステム】
 サイドビュー形式の探索型アクションゲーム。主人公「マイキー」を操り、さらわれた6人の仲間と人魚の「アニー」を助け出すのが目的。サイドビューのステージには「表」と「裏」があり、今作で新たに追加された3Dダンジョン内にある「ワープの部屋」を経由して行き来する。基本攻撃はヨーヨーだが、アイテムを入手する事で遠距離攻撃用のパチンコやブーメラン、特殊攻撃用の爆弾や火炎瓶が使える様になる。前作同様にライフ制だが、ゲームオーバー時にはその場から復活するコンティニューかパスワードを取るかが選択できる。前作にあった時間制限とスコアの概念は今作では廃止された。


【総評】
 絶妙な難易度やストレスのない操作性などでヒットした前作『グーニーズ』。原作の映画は近年まで続編の噂が立っては消えの繰り返しだが、ゲームでは前作の好評を受け、配給元のワーナー・ブラザーズとの契約期間内に続編の本作が製作された。

 一見すると前作と変わらないサイドビュー形式のアクションゲームだが、新たに追加された3Dダンジョンを経由した表と裏に分かれるステージは、広大かつバリエーションに富んだ構成になっている。また、3Dダンジョン内でのアイテム探索は、コマンド選択式アドベンチャーゲームのスタイルが流用された。ゲーム全体のボリュームアップに伴い、ゲームオーバー時にはアン・ラムジーが演じた「フラッテリー・ママ」の大きなグラフィック(これがなかなか似ている)が映し出され、その場からの復活orパスワードによるコンティニュー制も導入された。

 ワープによるマップのボリュームアップという本作の基本スタイルは、『キングコング2 怒りのメガトンパンチ』などで既に実装されており、また、言ってしまえば「水増し」によるステージ数の増加(マップの広さ)も『がんばれゴエモン!からくり道中』や『コナミワイワイワールド』に見られる同社お得意のスタイルだ。この時期、ファミコンではアドベンチャーゲームがブームとなり、徐々にロールプレイングゲームも増え始めていた。『スーパーマリオブラザーズ』(任天堂)の登場から1年以上が経ち、それまでのスタンダードジャンルだったサイドビュー形式のアクションゲームは、ただ走って跳ぶ以上の付加価値とコストパフォーマンスを求められていたのだ。

 大幅なボリュームアップと新要素の追加は、ヒット作の続編として前作のファンに応え、かつ、ファミコン市場のニーズにも合わせた内容と言える。だが、「幅広いユーザーが楽しめる良質なアクションゲーム」という前作最大のセールスポイントは、水増しによる広大なマップと、ワープまでしてしまう3Dダンジョンによる煩雑さによって完全にスポイルされてしまった。グラフィック的なメリハリ以外には必然性のない3Dダンジョンで繋がれた広大な表と裏のステージを頻繁に往来するため、自分の現在地やワープ部屋、捕らわれた仲間のいる場所など、度々サブ画面を呼び出してマップを確認しなければならない。加えて、種類の増えたアイテム類と敵キャラクターの強さが難易度を上げた。

 見た目は前作と変わらない正統進化。だが、前作で意気揚々と敵を蹴散らしながら進むマイキーの軽やかさは、残念ながら今作では消されてしまっている。前述したコナミの作品達はどれもそれなりのセールスを記録しており、それが当時のサイドビュー形式アクションゲームに求められた市場のニーズだった。本作単体で見る限り、それらと同様に決して悪いゲームではないのだが、どうしても前作と比較されてしまうのが続編モノの宿命。今作オリジナルの曲を含めノリのいいBGMは健在なだけに、どうしても似て非なるものと感じてしまうのだった。



(C)Konami 1987
THE GOONIES IS A TRADEMARK OF WARNER BROS.INC. (C)1985 WARNER BROS.INC.ALL RIGHTS RESERVED.

2016/06/21

季節を抱きしめて




【発売】ソニー・コンピュータエンタテインメント
【開発】シュガーアンドロケッツ、プロダクションI.G
【発売日】1998年7月23日(PlayStation the Best版:2001年8月16日)
【定価】4,800円(PlayStation the Best版:2,800円)
【媒体】プレイステーション用CD-ROM
【容量】CD-ROM2枚組
【ジャンル】アドベンチャー
【周辺機器】アナログコントローラ対応(振動のみ)




「やるドラ」とは何だったのか


【ストーリー】
 樹々が芽吹き、花咲く春。山間の地方都市に住む主人公は、1年間の浪人生活の末、地元の大学へ通う事になった。大学へ続く坂道を歩く彼の隣には、予備校時代からの友人トモコがいる。暗く寂しい浪人生活をクリアできたのはトモコのおかげだと主人公は思っているが、自分の事を恋人だと思っている彼女に少々迷惑もしているのだった。そして、大学に入って間もないちょうど桜の花が咲き始めた頃。



 大学から出て来た主人公とトモコは、1人の女の子が構内の桜の樹「悲恋桜」の下で倒れているのを見つけた。駆け寄って助け起こした主人公は、彼女の顔を見て思わず息を飲む。女の子は彼が高校の時に交通事故で亡くなった片想いの相手「麻由」にそっくりなのだ。

 しかし、目を覚ました彼女が主人公にくれたものは、顔面への強烈なキックだった…。ようやく目が覚めた彼女だが、名前を聞いてもどこから来たのかを聞いても「分からない」と首を横に振るばかり。結局、主人公は彼女とほとんど話もできず別れてしまった。その夜、バイト先のタウン誌編集部。明かりの消された編集部内で1人、原稿を書く主人公。彼の頭の中には、昼間出会ったあの子の事が消えないままでいた。「あの子は今頃どうしているんだろうか?」意を決した様に席を立つ彼は…。


【概要】
 「みるドラマから、やるドラマへ。」のキャッチコピーで98年にソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)が発売した「やるドラ」シリーズ4作の第2弾。アニメーション制作会社のプロダクションI.Gによるフルアニメーション&フルボイスのクオリティは非常に高い。本作はシリーズの中で最初に開発されたものの、プロモーション的な理由から発売第1弾ソフトは『ダブルキャスト』に譲っている。やるドラシリーズは当初、『フォーシーズンストーリー』という1本のソフトとして企画されていたため、各作品ごとに季節と花が設定されている。本作は当初『サクラサク』というタイトルだった事もあり、舞台の季節は「春」、象徴的な花は「桜」。


【ゲームシステム】
 フルアニメーション&フルボイスで進行するアドベンチャーゲーム。プレイヤーは途中で表示される選択肢を選び、その結果によってストーリーが変化する。マルチエンディング方式で、ベストエンディングは5種類、ノーマル及びバッドエンディングは22種類ある。1周するごとにゲーム中に存在する経路のうち、どれくらいの経路を通過したかが分かる「達成率」が表示され、その数字が高くなるごとに新たな選択肢が登場するため、プレイする度にストーリーのバリエーションが増える。何度もクリアする事が前提なので、1回のプレイ時間は2~3時間と比較的短く、また、1度クリアしただけでは登場しないキャラクターもいる。


【総評】
 歌がいい!なにはなくとも歌が最高にいいんだぜー!大藤史氏の歌は『ぼくのなつやすみ』の「この広い野原いっぱい」もよかったけど、本作のテーマソング「季節を抱きしめて」は個人的プレイステーション史上一番のテーマソングと断言しちゃうくらいいい!本作を知ったのはTECH PlayStation付録の体験版CD-ROMに収録されていたプロモーション映像だったけど、もうこの歌に一発でやられてしまい、当時付き合ってたコの着メロに設定してたくらいにいいのだ←恥ずかしい。もうね、イントロ聴くだけであの頃の甘じょっぺえ想い出が走馬灯の様に蘇ったりしてアレですよ?

 『ダブルキャスト』、『季節を抱きしめて』、『サンパギータ』、『雪割りの花』と季節ごとに4作が立て続けに発売されたやるドラシリーズ。前述の通り、『ダブルキャスト』との兼ね合いで本作のみ夏に発売されたが、バラエティに富んだ絵柄と内容の中で、恋愛+現代ファンタジーのストーリーに90年代の主流アニメ絵キャラクターと、本作が最もベタである。これは『ダブルキャスト』と共にまずはアニメファンを取り込もうというセールス的な部分での、最大公約数的な意味合いからだ。なので、絵だけ見てダメな人はダメでしょうな。

 ストーリーにも向き不向きや好みがあるが、個人的にはあまり惹かれなかった。メインヒロインの「麻由」、ガールフレンドの「トモコ」、階下に住む「綺麗なお姉さん」の3人の女性が登場するが、恋愛要素はほとんどなく、現代ファンタジーのストーリーもよくある話だ。1度のプレイ時間が短いため、あまり詰め込めなかったのかもしれないが、このテのゲームはストーリーが肝なので、ここはもう二捻りくらいしてほしかった。また、プレイする度にストーリーのバリエーションは増えるが、それでもディスク1枚目に関してはディテールの違い程度なので、若干肩透かし気味である。とは言え、絵柄やストーリーが人を選ぶのは何もゲームだけの話ではないので、各自自分の好みに素直に従いましょう。

 シリーズの中で最初に開発された事もあり、システムもまだ洗練されてはいない。繰り返しプレイする事が前提であるにも関わらず、フローチャートや達成率のグラフ化がされていないのは不親切だ。攻略サイトによると、達成率を100%にするには50回以上のプレイが必要らしいが、プレイヤーに全ての選択肢のメモを取らせるというのは前時代的であり、不親切と言わざるを得ない。

 では、『季節を抱きしめて』は凡百な美少女アドベンチャーゲームなのかと問われれば、そうではない。当ブログで何度も述べているコマンド選択式アドベンチャーゲームのシステムの行き詰まりから、90年代に入りアドベンチャーゲームの形態は多様化し、デジタルコミックやサウンドノベルといった新たな派生ジャンルを生み出した。デジタルコミックを大幅に進化発展させた中にサウンドノベルのシステムを取り込んだ。


 それまではゲーム本編の幕間を繋ぐ程度の扱いだったアニメーションムービーをオリジナルビデオアニメ並みのクオリティで全編構成するやるドラは、そんな派生型アドベンチャーゲームの集大成とも言えるシリーズであり、その先陣を切って開発されたのが本作である。ゲームのアニメーションムービーが「繋ぎ」程度の扱いでしかなかったのには、技術面やコスト面での問題の他、それがあくまで「ゲーム」だからだ。ユーザーはアニメを見たいのではなく、あくまでゲームをプレイしたいのである。出来の悪いゲームの場合、本編のゲーム画面とアニメのムービー画面の落差がプレイヤーの興を冷ます一因になったり、まずいゲーム本編より力の入ったムービーシーンだけで売れと皮肉を言われるゲームも多かった。一時期「インタラクティブムービー」なんつーものもあったが、結局ムービーを売りにしたゲームで成功した作品はほとんどない。だったらいっそ何度も繰り返しプレイしたくなる様なゲームの本編全部をアニメーションムービーにしたらいいんじゃね?と思ったかどうかは知らないが、それを実現させたのがやるドラだ。

 全編をアニメーションムービーで構成するには、プレイステーションの機能をフルに駆使する技術力が必要だ。そもそも、ムービーが「繋ぎ」程度の時間でしか扱えなかったのは、その容量にある。やるドラではSCEIの開発部門が分社化したシュガーアンドロケッツ(現SCEI)が、その難関をクリアした。そして、全てを高クオリティのアニメーションで表現するのは、『機動警察パトレイバー2 the Movie』や『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 』などの劇場用アニメで高い評価を受けていたプロダクションI.G。更に4作品を一気にシリーズ化というSCEIの強力なプロモーション力が結集し、初めて実現可能となったのである。セールス的には本作のみで約19万本、4作累計では約70万本を売り上げている。この数字はおそらくSCEIの当初予想を下回っているだろうが、1年で4作発売した影響も相応にあるはずで、派生型アドベンチャーゲームの集大成として、ゲーム史に足跡を残したシリーズと言ってもいいのではなかろーか。

 本作は、05年にはプレイステーション・ポータブルに移植された他、09年にはダウンロード販売もされている。また、中古市場では200円前後と比較的入手しやすい。シリーズ自体はアドベンチャーゲームの更なる衰退と共にプレイステーション2以降は廃れてしまったが、その後も多くのSCEI製ゲームに影響を与えたシリーズであり、90年代後半、家庭用ゲーム市場全体が活気に溢れていた最期の時期に発売された意欲的な佳作で切ない思いを体験するとよいよいよいよい(残響音含む)。




Books
『オフィシャルやるドラファンブック 季節を抱きしめて CD-ROMスペシャルデータ集』










【著】murmur's GROUP
【発売】ソニー・コンピュータエンタテインメント
【発売日】1998年7月23日
【定価】2,500円


 SCEIのオフィシャルブック。レイアウトこそあまり整理されていないが、発売元自らが発行しているだけあって、ゲーム本編の映像を惜しみなく使用した台本、キャラクターや舞台背景などの設定画、スタッフインタビューなど、特にビジュアル面での内容が充実している。付属のCD-ROMにはグッドエンディング5種類のセーブデータ、ハイレゾリューション画面の本編312カット、名場面171シーン、拡大できる設定原画集が収録されている。フローチャートが目視できないゲームだけに、セーブデータの価値は大きい。

 そこそこ値の張る定価だが、僕は100円で買いました。攻略本の類は当時定価で買った物もあるけど、当ブログで採り上げる際にAmazonやオークションなんかで叩き売られている物を買う場合も多いので、一部のプレミア品を除けばレトロゲームの攻略本は現在かーなーり安く買う事ができます。それでも、最低一度はクリアして、そのうえで内容やバックボーンをもう少し深く知りたいと思わせるゲームの本しか買いませんけどね。



(C)1998 Sony Computer Entertainment Inc. All rights reserved. Produced by Sugar & Rockets Inc.
※「やるドラ」はソニー・コンピュータエンタテインメントの商標です。

2016/06/11

ミシシッピー殺人事件

【発売】ジャレコ
【開発】トーセ
【発売日】1986年10月31日
【定価】5,200円
【媒体】ファミコン用カートリッジ
【容量】1M
【ジャンル】アドベンチャー




理不尽さ満載!ゲームオーバーの嵐!


【ストーリー】
 セントルイスを出航し、広大なミシシッピー川を下り、ニューオリンズへと向かう豪華客船「デルタ・プリンセス号」。この船には様々な男女が乗り込んでいた。お金持ちの婦人、判事、etc…。その中に世界的に著名な探偵がいた。チャールズ・フォックスワース卿と助手のワトソンである。2人は久しぶりの休暇を優雅な船旅で楽しもうという計画で、この船に乗り込んだのであった。外は爽やかな6月の風が吹き、船のエンジンは快調だった。こんな心地よい日にあんな恐しい出来事が起こり、自分が捜査に乗り出さなくてはならなくなるとは、さすがのチャールズ卿も夢にも思わなかっただろう。

「 いやあ!なんとも今日は爽やかな日ですね!」
「本当だね、ワトソンくん。楽しい旅行になりそうだ。デッキを散歩しながら他の船室のお客さんに挨拶でもしてこようか?」
「 まいりましょうか、先生」
 そんな会話を交わし、2人は自分達の船室を後にしたが…?


【概要】
 オリジナル版は86年にアメリカのアクティビジョン社(現アクティビジョン・ブリザード社)がコモドール64及びAppleII用に開発した『Murder on the Mississippi』で、同年にジャレコがローカライズ移植したのが本作である。助手の「ワトソン」という名前は、オリジナル版では「リージス・フェルプス」という全くの別名だが、これはローカライズに際して日本で馴染みのある名前をと、アーサー・コナン・ドイルの『シャーロック・ホームズ』にあやかってジャレコが独自に変更したものと思われる。尚、本作は『ポートピア連続殺人事件』(エニックス)に次いでファミコンで2番目に発売されたアドベンチャーゲームである。


【ゲームシステム】
 サイドビュー形式のアドベンチャーゲーム。「チャールズ・フォックスワース卿」を操り、ワトソンと共に船内を歩き回って捜査する。乗客達から得られる情報はワトソンにメモをさせる事ができ、このメモを他の乗客に見せて新たな証言を得ていく。ただし、メモは1人につき3回までしか取れないため、4回目からは古いメモが自動的に消えてしまう。加えて、乗客達は同じセリフを1度しか話さないため、重要証言をメモし忘れた場合はクリア不可能になってしまう。入手した証拠品は自室にストックして、後で詳しく調べる事ができる。船内には落とし穴やナイフのトラップもあり、その難易度と理不尽度は非常に高い。 


【総評】
 度々書いていますが、当ブログは定番のクソゲーとして笑い者にするレビューサイトとは目的を異にしているため、できる限り当時の世相や状況を思い出しながら評価しているつもりです。作られた時代を考慮せず、ネット上での評判を元にして安易に「クソゲー」と評するのは、色が着いていないという理由だけでモノクロ映画を小馬鹿にしているのと同じだと思うからです。「ファミコン史上屈指のクソゲー」とも言われている本作に関してもスタンスは変わらない所存でしゅっつーか、あのですね、ここまで偉そうな前口上垂れといてアレなんですけど、ヒドイよね、このゲーム←おい。

 では、何がヒドイのか。まずはシステム面。必要以上に難易度を上げている独特の会話は、登場人物全員が1度話した事は2度と口にしない確固たる信念を持ったコミュ障だらけなので、重要証言をメモし忘れるor上書きして消してしまうと、容疑者を追い詰める事ができずにクリア不可能となり、ゲームオーバー。大事な事なので2回言いましたとか甘えです。ドユコトー!いちいち「あるく」コマンドを選ばないと歩けない事に関しては、時代によってはそれが当たり前だったりもするので、よしとしましょう。これくらいは昔のパソコンゲームではあったあった。でも、その歩くスピードがオリジナル版よりも遅いってのはドユコトー!そして、オリジナル版にはあるコンティニューの廃止。ファミコンで初めてバッテリーバックアップ機能を搭載したのは翌87年発売の『森田将棋』(セタ)なので、この頃はまだ望むべくもありませんが、既に85年には『チャンピオンシップロードランナー』(ハドソン)や『フラッピー』(デービーソフト)がパスワードによるコンティニューを実装しています。つまりは、移植の際に失敗したわけです。誤字脱字まであるし。

 次に理不尽さ。部屋に入った途端にチャールズ卿目掛けてどこからともなく発射されるナイフや、これまたチャールズ卿のみに反応する落とし穴など、トラップの数々。場合によっては本来の被害者を発見する前にチャールズ卿が被害者となり、事件が幕を開ける前にゲームオーバー。ナイフなんて飛んで来るのが分かっていても足が遅いので避けきれず、眉間にサックリ突き刺さってゲームオーバー。これらの罠は誰が何のために仕掛けたのか、ゲームをクリアしても明かされません。ドユコトー!更には攻略本でもなければ一生かかっても分からない様な全く脈略のない手がかりを探さなければならない徹底っぷり。とにもかくにも山の様な理不尽さの前にゲームオーバーの嵐です。

 決定的なのは、オリジナル版自体の出来の悪さ。推理モノのアドベンチャーゲームにおける理詰めでのアリバイ崩しやトリックの解法はほとんどなく、基本的には勘だけが頼りなので、ぶっちゃけどうしようもありません。頼れるのは専門用語でいうカンピューターだけです←ヘボい。理不尽トラップでの即死も嫌ですが、メモの取り忘れによる手詰まりはプレイヤーが気付くまでこれまたどうしようもなく、いたずらに無駄な時間を過ごしてしまいますっつーか過ごしました。

 それでも、全く面白くないかと言われれば、そういうわけでもない。洋ゲーの移植作らしく、固有名詞や会話は日本のゲームにはない独特のテキストで、これがなかなか味わいがあるのです。チャールズ卿とワトソンを除いた登場人物は、船長の「ネルソン」、船員の「ヘンリー」、判事の「カーター」、慈善家の「ウイリアム」、未亡人の「ヘレン」、売春婦(※これはファミコンのゲームです)の「ディジー」、謎の女「テーラー」の7人+被害者の「ブラウン」なんですが、爽やかな初夏の風が心地よい船旅を共にする者同士、彼らはお互いをこう評価し合います。

「ネバダでは彼は能なしとか言われていた様ですね」
「あいつは自分勝手だし、残忍な奴です」
「あっ、あの下品な若い女か。洋服の着方などから分かりますよ」
「卑しい家の生まれですわ。あんな田舎者に何ができるんでしょうね」
「あいつは人間のクズですよ。下品で無教養で信用できない奴ですからね」
「たかが雇われ船員ですしね。彼の様な人の事をお聞きになるなんて侮辱ですわ」
「あれは単なる売女に過ぎません」(※大事な事なので2回言いますがファミコンのゲームです)

 なんでしょうか、もう何人か殺人事件が起こってもおかしくないほど差別と偏見と職業蔑視に溢れる船旅です。実際にはひらがなとカタカナで表示されていますが、全て原文ママです。かえってひらがなで「ばいしゅんふ」とか表記される方がアレです。その売春婦のディジーだけはニューオリンズに住んでいる有名な料理人のおばさんが作るオクラスープの評判のおかげで、嫌悪感は比較的抱かれてはおらず、「若くてかわいい売春婦よ」と褒められています。いや、やっぱ褒めてねえ。にも関わらず、ラストで真犯人を突き止めると、全員が入れ替わりやって来ては、「無罪だと思います」だの「これは明らかな正当防衛ですな」だのと一致団結して犯人の味方をしだします。もうどういうことなんだぜ…。それどころか、「この事件を一番恐ろしく感じたのは○○(犯人)自身でしょ。それをあんな風に言うなんて」だの、「そうだ!おまえ、なんて勝手な事を!(中略)それなのに酷いじゃないか」とこちらが批難される有様です。ネットでよく見ますね、こういう掌返し。ネットってこわい(違)。いやー、20年ぶりくらいにコントローラーを床に叩き付けましたネ!いろいろとおしえられることのおおかったゲームだったな…。



(C)1986 JALECO (C)1986 ACTIVISION,INC. CODE FOR NINTENDO FAMILY COMPUTER

2016/05/31

ダライアスII

 
【発売】タイトー
【開発】ナツメ
【発売日】1990年12月20日
【定価】8,900円
【媒体】メガドライブ用カートリッジ
【容量】8M
【ジャンル】シューティング




単なるダウングレード移植ではないメガドラ版の熱意


【ストーリー】
 かつて高度な文明を誇ったダライアス星は滅びてしまった。プロコとティアットの2人はダライアス星を脱出し、新天地を求めて惑星オルガで新世界を築いた。数千年後、プロコとティアットの子孫は、銀河系から発信される怪電波をキャッチ。その怪電波は、祖先の暮らしていたダライアス星からのSOSだった。怪電波の正体を突き止めた彼らは、強力に改造されたシルバーホークに乗り込み、銀河系へ向かって出発。ダライアス星人の危機を救うため、銀河系の惑星上で、宇宙空間でと、厳しい戦いを続けていく。シルバーホークに乗り込んだキミは、この救出隊のメンバー。さあ、いよいよ戦闘開始!


【概要】
 オリジナル版は89年にタイトー(現スクウェア・エニックス)がアーケードで発売した横スクロールシューティングゲームで、『ダライアス』シリーズの2作目。アーケード版では2画面のモニターを連結した専用筐体と、前作『ダライアス』の3画面連結筐体を流用したバージョンが存在する。メガドライブへの移植はナツメ(現ナツメアタリ)が担当。海洋生物をモデルにした敵キャラクター、1ラウンドクリアするごとに分岐するステージ構成などの特徴はそのままに、画面の上下に黒帯を入れて「擬似ワイド画面」となる様に工夫されている。


【ゲームシステム】
 パワーアップ型横スクロールシューティングゲーム。オリジナル版では2人同時プレイが可能だったが、本作は1人プレイ専用に変更され、自機が「シルバーホーク赤(プロコJr.)と「シルバーホーク青(ティアットヤング)」の選択式となった。シルバーホーク青は初期状態で各武装が1段階パワーアップされたビギナー向けの機体になっている。各武装は特定の敵を全滅させると出現するパワーアップユニットを取る事で攻撃力がアップ。ステージ構成は全7ラウンド28ゾーン。ラウンドクリア後の分岐画面で次に進むゾーンを選択する。各ゾーンの最後にはボスが待ち構えており、進んだゾーンによって結末が異なるマルチエンディング。


【総評】
 88年から90年にアーケードで発売されたシューティングゲームには、後に「名作」と呼ばれる作品が多い。コナミ(現コナミデジタルエンタテインメント)の『グラディウスIII-神話から伝説へ-』、『XEXEX』、アイレム(現アイレムソフトウェアエンジニアリング)の『イメージファイト』や『R-TYPEII』、セイブ開発の『雷電』(発売はテクモ)などなど。「シューティングの雄」タイトーも主に東亜プランが手がける『TATSUJIN』、『ヘルファイヤー』、『大旋風』などを積極的にリリースしている。一見すると豊作期に思えるが、結果的にはこれら名作が91年以降のアーケードゲームシーンで格闘ゲームに王座を奪われた遠因ともなった。いや、実際はどうか分かんないすけど←テキトー。

 アーケードゲームの基本命題は、ジャンルに関わらず「ユーザーにいかに金を使わせるか」という点にある。それまでにも高難易度をよしとするシューティングゲームはいくつもあったが、88年からの3年間は主だったシューティングゲームのほとんどが適正難易度を遥かに超えた「凶悪」と言っていいほどの高難易度となり、やがては一部のマニア向けジャンルになってしまったのだ(後にいわゆる「弾幕系」と呼ばれるゲームも登場するが、それはまた別の機会に)。この『ダライアスII』も名作が故にその凶悪な難易度に拍車をかけたゲームのひとつだった。

 家庭用ゲーム機への移植に際し、メディアがCD-ROMになって以降は「オリジナルと寸分違わぬ移植こそ正義」という風潮だが、制約の多いカートリッジの時代ではダウングレードが当たり前だったため、オリジナル要素の取捨選択センスと技術力が求められた。ハーフミラーを連結した筐体は物理的に不可能だが、移植を担当したナツメは、各キャラクターが小さくなってしまう代償を払っても、画面をシネスコサイズに近い形にしてオリジナル版のワイド感を表現した。一方で、ゾーンKとMのボス「ヤマト」は、オリジナル版に近い迫力を再現。このために当初予定の6メガから8メガに容量が増やされたとも言われている。

 インパクトのある筐体や敵キャラクターのビジュアルと並び、BGMもまた『ダライアスII』の大きな特徴のひとつだ。およそシューティングゲームに似つかわしくない曲の数々と、強制スクロールというシューティングゲームの特徴を活かしたBGMによるステージ演出は、これまた強烈な個性としてファンが多い。例えば、最終ステージでは中ボス戦まで一切の効果音がなく、切なく美しいメロディーが流れ、曲調が変わると同時に効果音が復活なんつーイカした演出はプレイしていて鳥肌が立つほど。ただ、ファンの方には申し訳ないが、僕はこの『ダライアスII』の曲がどうも苦手なのだ。タイトーのサウンドチームであるZUNTATAのアレンジCDを聴いてもしっくりこなかったし、今回改めて聴いてみてもやっぱり同じ感想だった。ごめんなさい。とは言え、ファンの間ではこのメガドライブ版のサウンドも評価が高い。本作のBGMは、後に『グランディア』(ゲームアーツ)のBGMや東京ディズニーリゾートのパレード曲を手がけた岩垂徳行氏が、1曲できる度にオリジナル版を作曲したZUNTATAの小倉久佳氏の元に通って作り上げたそうだ。

 取捨選択によるワイド感の再現と、代償となったキャラクターの縮小化。それを補うべく意地とも言えるヤマトの再現。オリジナル版と移植版のコンポーザー同士による熱意のBGM。効果的な画面演出はそのままに、家庭用ゲーム機ならではの難易度選択を追加して(イージーが適正難易度だと思う)幅広いユーザーが楽しめる仕様にするなど、単なるダウングレード移植ではないメガドライブ版としての『ダライアスII』は、『スペースインベーダー』の開発者である西角友宏氏(現ドリームス会長)がプロデューサーに名を連ねる、現在も脈々と受け継がれるタイトーのシューティング魂と、デベロッパーとしてのナツメの技術とセンスが宿った名作と言っていいだろう。



(C)TAITO CORPORATION 1990 ALL RIGHTS RESERVED.

2016/05/09

タイトルロゴ


 ブログのタイトルを筆ペンで書き殴った仮のまま放置していたのに1年半経ってようやく気付いたので(←おせえ)、だったらゴールデンウィーク中に描けばいいんじゃね?と思いつき、毎日1文字づつのペースで描いて10日で完成。Bloggerのタイトルイメージは幅が880pixcelまでと決まっているため、すんげえ縮小されるのは描く前から分かっていたんですが、貧乏性なので1文字ずつ見てもらえる様にしておきますネ!クリックでレッツ拡大!


【ゲ】
出典:『ワルキューレの伝説』(89年4月21日発売/ナムコ/アーケード)より、ワルキューレ&サンドラ。
【ー】
出典:『ロードランナー』(84年7月31日/ハドソン/ファミコン)より、ランナー。『ボンバーマン』(85年12月20日/ハドソン/ファミコン)より、ボンバーマン。
【ム】
出典:『北海道連鎖殺人オホーツクに消ゆ』(87年6月27日/アスキー/ファミコン)より、猿渡俊介&ニポポ人形。
【で】
出典:『出たなツインビーヤッホー! デラックスパック』(95年9月25日/コナミ/プレイステーション)より、パステル&ウインビー&ツインビー&グインビー。
【こ】
出典:『イシターの復活』(86年7月/ナムコ/アーケード)より、カイ&ギルガメス。









【ん】
出典:『ゼルダの伝説-神々のトライフォース-』(91年11月21日/任天堂/スーパーファミコン)より、リンク。『ゼルダの伝説 風のタクト』(02年12月13日/任天堂/ゲームキューブ)より、リンク。『スプラトゥーン』(15年5月28日/任天堂/Wii U)より、イカ。
【に】
出典:『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』(91年7月26日/セガ・エンタープライゼス/メガドライブ)より、ソニック・ザ・ヘッジホッグ。『ファンタジーゾーン』(86年3月/セガ・エンタープライゼス/アーケード)より、オパオパ。『アウトラン』(86年9月/セガ・エンタープライゼス/アーケード)より、フェラーリ・テスタロッサ風自車。






【ち】
出典:『マザー』(89年7月27日/任天堂/ファミコン)より、ぼく&アナ&ロイド&テディ。









【わ】
出典: 『パックマン』(80年7月/アーケード)より、パックマン。『マッピー』(83年5月/アーケード)より、マッピー。『スカイキッド』(85年12月/アーケード)より、レッドバロン&ブルーマックス。『コズモギャング・ザ・ビデオ』(92年3月/アーケード)より、コズモ。『ディグダグ』(82年3月/アーケード)より、プーカァ。『リブルラブル』(83年12月/アーケード)より、ボブリン(以上、ナムコ)。『ぷよぷよ』(92年12月18日/メガドライブ)より、ぷよ&カーバンクル。『バーチャファイター』(93年12月/アーケード)より、結城晶。『ナイツ』(96年7月5日/セガサターン)より、ナイツ(以上、セガ・エンタープライゼス)。『実況パワフルプロ野球'95』(94年12月22日/プレイステーション)より、パワプロ君。

 『がんばれゴエモン!からくり道中』(86年7月30日/ファミコン)より、ゴエモン。『グラディウス』(85年5月/アーケード)より、ビックバイパー(以上、コナミ)。『トロンにコブン』(92年7月22日/プレイステーション)より、コブン。『ロックマン』(87年12月17日/ファミコン)より、ロックマン。『魔界村』(86年6月13日/ファミコン)より、アーサー。『スーパーストリートファイターII ~The New Challengers~』(93年10月/アーケード)より、春麗(以上、カプコン)。『星のカービィ』(92年4月27日/ゲームボーイ)より、カービィ。『スーパーマリオ ヨッシーアイランド』(95年8月5日/スーパーファミコン)より、赤ちゃんマリオ&赤ちゃんルイージ&ヨッシー(以上、任天堂)。『ドラゴンクエストII~悪霊の神々~』(87年1月26日/エニックス/ファミコン)より、ローレシアの王子&サマルトリアの王子&ムーンブルクの王女。




(C)2016 TREASURE All Rights Reserved.

2016/02/20

探偵神宮寺三郎 未完のルポ



【発売】データイースト(普及版1,500円シリーズ:メディアリング)
【開発】データイースト
【発売日】1996年11月29日(普及版1,500円シリーズ:2000年10月19日)
【定価】5,800円(普及版1,500円シリーズ:1,500円)
【媒体】プレイステーション用CD-ROM
【ジャンル】アドベンチャー




社会悪とその連鎖を描いた6年ぶりのシリーズ


【ストーリー】
 ある日、神宮寺三郎の探偵事務所に一通のエアメールが届いた。差出人は飲み友達の池上で、中身はコインロッカーの物と思われる鍵だった。行方不明者の捜索、大麻の売買、殺人事件…その後の依頼を次々と追ううちに、池上に託された鍵の謎が解けていく。池上が書いたという未完のルポとは何か?事件の背後に立つ組織の存在は?捜査の行く手には、巧妙に仕掛けられた罠が数多く待ち構えている…。





【概要】
 データイーストのハードボイルドアドベンチャーゲーム『探偵神宮寺三郎』シリーズ第5作。ファミコンで発売された前作『探偵神宮寺三郎 時の過ぎゆくままに』から実に6年ぶりとなる本作は、ハードを一世代飛び越えてプレイステーションとセガサターンで同時発売された。主人公「神宮寺三郎」だけでなく、助手の「御苑洋子」、ベテラン刑事の「熊野参造」、本作のゲストキャラクターであるライター「与野恭介」の4人をザッピングして多角的にストーリーを追える他、アニメーションムービーや3Dシーンなど、当時のトレンド要素を取り込んでいる。本作はライターの斉藤竜也氏の持ち込みシナリオを原案としており、当時はもとより現在でもゲーム媒体としては珍しく「社会悪」に突っ込んだストーリーが特徴だ。


【ゲームシステム】
 新宿で探偵を営む神宮寺三郎を主人公にしたオーソドックスなコマンド選択式アドベンチャーゲーム。捜査に行き詰った際はシリーズ恒例「タバコ吸う」コマンドでヒントを得られる。ゲームオーバーはなく、捜査がある程度進むとセーブ画面になる。セーブファイルは8つ用意されており、セーブ画面終了後にザッピングのプレイヤーを選択できるため、例えば神宮寺で一通りクリアした後で、洋子や熊さんの視点で捜査を進める事もできる。特に与野の視点では、神宮寺に依頼が舞い込む前の状況から始まるため、ストーリーを深く知るためにも並行もしくは後からプレイする事をオススメする。本作では、難解な謎に挑むというよりも、じっくりとストーリーを楽しむスタンスが正しいと言えよう。


【総評】
 政府開発援助(ODA)の名の下に、新たな公害問題を第三国に輸出する日本。自然と共存する生活を失い、職を求めて来日する外国人労働者。国内の産業廃棄物処理施設を地方に押し付ける都会。土地と生活を失い、出稼ぎに出る地方労働者。都会への夢を法外な値段で売る闇ブローカー。大都会の閉鎖性と新しい階級システムに夢破れて生まれる失意、貧困、差別。そうした者を救う受け皿を持たない未完成な大都会に繁茂するドラッグ、暴力、人身売買、人体売買、少年犯罪、外国人犯罪、過激なナショナリズムの台頭。全てを犠牲にそそり立つ巨大なビル群…本作が取り扱うこれらのテーマとその連鎖は、発売から20年経った現在でも何一つ解決されていないばかりか、その悪循環が更に複雑化、表面化している事に改めて気付かされる。東南アジアにある「ムルソン共和国」を発端とした問題から、物語はやがて臓器不正移植へと連鎖する。臓器不正移植の問題に関しては、一時期の沈静化から一転、インターネットが発達した近年に多くの事例が表面化したのは記憶に新しい。

 ゲームシステムにおいては、久しぶりの続編であり、メディアもカートリッジからCD-ROMに変わった事で、新要素を盛り込もうという意欲は伝わってくるが、一部が消化不良を起こしている感は否めない。例えば、ザッピングでは、洋子視点の際に神宮時が登場する場面があるのだが、神宮寺視点の際にその場面は出て来ない。また、粗いポリゴンで描かれた3D視点の「尾行聞き込みシステム」は単なる鬼ごっこでしかなく、必要性が感じられない。幸い、このシステムは1キャラクターにつき1~2回しか出て来ないが、「コマンドを総当たりしていけばいずれクリアできてしまう」という、コマンド選択式アドベンチャーゲーム全般のシステムの行き詰まりから一時期休止していた本シリーズの苦悩が見え隠れする部分だ。

 そして、本作の最たる「違和感」は、当時の主流だったアニメ風のキャラクターデザインだろう。ムービーシーンもこのアニメ風のキャラクターで描かれている(個人的には今見るとこれはこれで味があっていいとも思うのだが…)。次世代機での発売という事で、シリーズのパッケージデザインやイメージイラストを描いているイラストレーターの寺田克也氏によるグラフィックを期待したファンも多かったはずであり、その見た目で敬遠した旧作のファンからは批判を浴びた。とにかく本作のレビューを見ると、やはりこのキャラクターデザインに対する違和感の声が大きく、秀逸なシナリオにまで言及されていないケースが多いのは残念である。

 だが、本作での消化不良部分は、シリーズ最高傑作であり、アドベンチャーゲーム史上珠玉の名作との評価も高い次作『探偵神宮寺三郎 夢の終わりに』で全てが徹底的に改善される事となった。ザッピングシステムは矛盾をなくし、オーソドックスになっても不必要なシステムは採り入れず、グラフィックは全て寺田タッチへと変わった。本作は6年ぶりのブランクを感じさせまいとして、当時の主流になびいた一部の要素がしっくりこなかっただけであり、データイーストもファンも「流行りがどうあれ神宮寺は神宮寺というスタンスが一番」と気付いたのだった。そういう意味では、本作の消化不良部分も意味があったと言える。キャラクターデザインにしても、それ単体で見る限り決して悪いものではない。単に作風と合っていなかっただけなのだ。

 一方で、本作から以降のシリーズに引き継がれた要素も数多くある。ハードボイルドタッチの本編とは真逆の、マウス一発で描かれた様なグラフィックが特徴の番外編「謎の事件簿」もそのひとつだ。洋子の壊れっぷりがナイス。また、本作が初登場となる「バーかすみ」の姉妹「天沼かすみ」と「天沼まなみ」、関東明治組の若頭「今泉直久」、淀橋署の鑑識官「三好志保」(モデルは本作のグラフィック担当者で本名も同じならお顔もそっくりである)、同じく淀橋署の刑事「小林勇介」の5人も、以降のシリーズではレギュラーとして登場する。

 ムービーシーンでは各キャラクターに声が当てられており、以後2~3作おきに担当声優が交代しているが、個人的に歴代神宮時の声は本作と次作を演じた岸野幸正氏がベストだと思っている。シブくていいんだ。

 『探偵神宮寺三郎 アーリーコレクション』同様、後にメディアリングから「普及版1,500円シリーズ」として廉価版が発売されている。また、中古市場でも200円前後と入手しやすい。プレイステーション版とセガサターン版どちらも内容は同じなので、手持ちのハードでじっくりとこの社会派ドラマと人間味豊かなセリフの数々を体験してみてほしい。取り扱っているテーマが古さを感じさせないのは複雑なところではあるが、終わった後できっと考えさせられる何かが残るはずだ。



Books
『ハイブリッド完璧攻略シリーズ4 探偵神宮寺三郎 未完のルポ 完全ガイドブック』
 












【著】ファイティングスタジオ編集
【発売】双葉社
【発売日】1996年12月20日
【定価】900円


 取り立てて特徴のないオーソドックスなガイドブック。中古でものすごーく安かったので買ってはみたものの、まなみのスペシャルグラフィックが小さく載っている以外にめぼしい情報はなかった。本作の様にゲームオーバーにならないアドベンチャーゲームのガイドブックならば、せめてイメージイラストやスタッフインタビューなどの要素を入れる良心があってもいいのではなかろーか。ファミコン時代の同社のガイドブックシリーズからほとんど進化していない装丁やレイアウトデザインで、内容も「ただゲームをプレイした道程をなぞっただけ」という96年当時からしても時代に逆行した作り。100円以下ならコレクターアイテムとして持っていてもいいかもしれないが、資料性はほとんどない。



(C)1996 DATA EAST CORP.