2015/09/29

スーパーマリオコレクション

【発売】任天堂
【開発】任天堂、SRD
【発売日】1993年7月14日
【定価】9,800円
【媒体】スーパーファミコン用バックアップカートリッジ
【容量】16M
【ジャンル】アクション/オムニバス




任天堂が作るとこうなる完全フルリメイク作


【概要】
 ファミコン発売10周年記念として、ファミコンで発売された『スーパーマリオブラザーズ』(以下『1』)、『スーパーマリオブラザーズ2』、『スーパーマリオブラザーズ3』、『スーパーマリオUSA』の4作品をスーパーファミコン仕様にフルリメイクしたオムニバスソフト。操作方法、グラフィック、サウンド、効果音などが90年に発売された『スーパーマリオワールド』準拠となっており、シンプルだった演出も大幅に追加されている。任天堂らしいソツのない作りの大ボリュームで、約212万本を売り上げた。




【ゲームシステム】
 操作方法は『マリオワールド』同様、ファミコンのAボタン(ジャンプなど)とBボタン(ダッシュなど)の振り分けを2タイプから選択する。また、作品ごとに4つのセーブファイルが設けられており、プレイ中にスタートボタンを押せばいつでもセーブができる。セーブの仕様は作品ごとに異なり、『1』、『3』、『USA』はセーブしたワールドのステージ1から再開、高難易度の『2』はステージを指定できる。全作品、クリアしたワールドならどこからでも再開できる様になったため、『USA』にあったコンティニュー制限は廃止されている。特に『3』は全ユーザー待望にして唯一の不満点だったセーブ機能が付いたのは嬉しいところだ。


 85年に発売され、社会現象にまでなった『スーパーマリオブラザーズ』は、ファミコンブームを決定付けた横スクロールアクションゲームで、日本国内だけで約681万本、全世界では実に4,024万本以上を販売。イギリスのギネス・ワールド・レコーズ社より「世界一売れたゲーム」としてギネス世界記録に認定されている。ディレクターは宮本茂氏、音楽は入社2年目の近藤浩治氏が担当。プレイヤーキャラの「マリオ」と「ルイージ」は任天堂のみならずビデオゲームを代表する世界的なキャラクターとなった。

 86年には待望の続編『スーパーマリオブラザーズ2』が発売。メディアがカートリッジからディスクカードへと変わり、発売されたばかりのディスクシステムの目玉ソフトとして約265万本(書き換えを含む)を売り上げた。本作では1人プレイ専用となり、前作では2プレイヤー用の色違いキャラクターだったルイージには、「マリオよりジャンプ力が高くて滑りやすい」という特徴付けがなされた。プレイヤーは最初にマリオかルイージを選択する。前作に比べて難易度がかなり高くなっており、パッケージには「FOR SUPER PLAYERS」との記載がある。海外では未発売。


 メディアを再びカートリッジに戻し、88年に発売された『スーパーマリオブラザーズ3』は、基本システムを踏襲しつつもマップシステムの導入、「しっぽマリオ」や「カエルマリオ」などの新パワーアップなど、新要素が大幅に加えられた。任天堂のファミコン用ソフトの集大成と言ってもいい完成度の高さは、ファミコンのアクションゲーム史上最高傑作との呼び声も高い。唯一の欠点はボリュームの大きさが故にセーブ機能を搭載する余裕がなかった点である。国内では『1』に次ぐ約384万本を販売、全世界でも約1,728万本を売り上げた。

 変り種として92年に発売された『スーパーマリオUSA』。元は任天堂が開発し、87年にフジテレビが発売したディスクカード『夢工場ドキドキパニック』。イベントのタイアップ用ゲームとしては秀でた完成度の高さから、翌88年にキャラクターを差し替え、『SUPER MARIO BROS.2』として海外で発売(前述した様に日本版の『2』は発売されていない)。これを逆輸入したのが本作である。プレイヤーはマリオとルイージに加え、「ピーチ姫」と「キノピオ」の4人から選択。ゲームシステムや雰囲気が他の3作とは大幅に異なる。


【総評】
 シリーズ最新作であり初のスーパーファミコン用ソフトでもある『マリオワールド』にユーザーの目が慣れたタイミングで、旧作4本を全てフルリメイクしてファミコンからスーパーファミコンへユーザーの基準値を引き上げた本作は、「任天堂が本気を出してリメイク&オムニバスソフトを作るとこうなる」というまさに好例で、リメイクソフトとしては最も売れた。海外未発売だった『2』も本作の海外版にて『SUPER MARIO BROS.The Lost Levels』というタイトルで初披露された。フルリメイクの恩恵は特に『1』と『2』に顕著に表れており、今遊んでみても古さを感じさせないリメイクになっている。

 一方でフルリメイクによる違和感が大きいのも確かだ。特に『1』と『2』は、操作感覚自体が微妙に違うのだ。『1』は8-3でポール越えをしたり、電源を入れたままカートリッジを引っこ抜いて『テニス』と差し替え256面を出現させる禁断の大技(詳細はググろう!)でカートリッジを駄目にして文字通り擦り切れるまで遊んだので、この微妙な違いは最後まで拭えなかった。まあ、バグによる裏技の廃止やバランスの調整など、本作の目的はオリジナル版の再現ではなく、あくまで「スーパーファミコン基準でのフルリメイク」なので、その違和感を含めて意図されたものなのだろう。

 現在の基準で考えると「どうせならオリジナル版も入れて欲しかった」などと思ってしまうところだが、『スペースインベーダー』(タイトー)の項でも述べた様に、この頃はまだ業界全体が過去を振り返る様な時期ではなかったし、ファミコンも現役だったため(93年発売のファミコン用ソフトは52タイトル)、その必要はなかったのだ。また、スーパーファミコン開発時にファミコンの上位互換機である「ファミコンアダプタ」という周辺機器も発表されていたが、途中で開発が中止されている事からも、当時は技術的にも思った以上に壁があったのかもしれない。

 本作は10年にWii用ソフト『スーパーマリオコレクション スペシャルパック』として移植されている他、01年には本作の『USA』がゲームボーイアドバンス用ソフト『スーパーマリオアドバンス』に、『3』が03年発売の同『スーパーマリオアドバンス4』に収録されいる。今年で生誕30周年を迎えた『スーパーマリオブラザーズ』。フルリメイクされたシリーズを一挙に楽しめる本作は、スーパーファミコンユーザーなら持っておいて決して損はない、老若男女に安心してオススメできる1本だ。



(C)1993 Nintendo

2015/09/17

ゼビウス


【発売】ナムコ
【開発】ナムコ
【発売日】1983年1月29日(ロケテスト日:1982年)
【媒体】アーケード
【容量】730Kbit(システム基板:Namco Galaga)
【ジャンル】シューティング




人生を狂わせたゲーム



【ストーリー】
 西暦2000年。地球は超知性体ガンプに率いられたゼビウス軍の攻撃を受ける。地球より遥かに進んだテクノロジーを有するゼビウス軍の前に、南アメリカは制圧されてしまう。打つ手を持たない人類に、惑星ゼビウスより数千年ぶりに地球に帰還したムー・クラトーとアンドロイドのイヴが救いの手を差し伸べた。彼らによれば、現在地球に侵攻しつつあるガンプは、かつて紀元前12,000年の地球上に存在した文明によって人類に奉仕するために創造されたバイオコンピューターであるガンプ、その6つのレプリカの1つに過ぎないという。

 ガンプは自身の超能力で逆に人類を支配しようと、6つのレプリカと自身に従う人類を6つの惑星に送り出していた。残された人類は、抜け殻同然のオリジナルガンプを破壊するが、レプリカの攻撃により殲滅寸前に陥る。ガンプを構成する脳細胞の提供者ラスコ・クラトーの超能力によって滅亡こそ免れたものの、14,000年後に6つの惑星が地球を中心に交錯(ファードラウト)する時、地球上には真のガンプが再生され、全人類はガンプの奴隷となる事が判明する。ムー達の助力により戦闘機ソル・バルウを建造した人類は、ファードラウトを阻止すべく、南アメリカのゼビウス軍拠点へと出撃する。


【概要】
 ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)第一次黄金期の83年にアーケードで発売された縦スクロールシューティングゲーム。それまでの黒一色の背景とは異なり、森林や海などの自然とメカニカルな敵キャラクターとの対比が美しいグラフィック、意思を感じる敵キャラクターの動き、対地対空の撃ち分け、隠しキャラクターの存在、壮大な裏ストーリーなど、全てにおいて斬新であり、『スペースインベーダー』(タイトー)に次ぐ大ヒットを記録。以降、不朽の名作として多くの機種に移植されており、中でも約127万本の大ヒットを記録したファミコン版は、ハードの売り上げにも大きく貢献。ファミコンブームの火付け役ともなった。

 システムプログラムは『ディグダグ』などの深谷正一氏が手がけ、遠藤雅伸氏(現ゲームスタジオ代表取締役)が完成させた。メカニックデザインはナムコの誇る職人「Mr.ドットマン」こと小野浩氏によるドット絵を元に、『マッピー』の生みの親である遠山茂樹氏が描き起こした。音楽は慶野由利子氏が担当。この楽曲を気に入ったYMOの細野晴臣氏は84年に『ビデオ・ゲーム・ミュージック』(アルファレコード)をプロデュース。これは日本で初めてのゲームミュージックのサウンドトラック作品となる。

 本項では『ナムコミュージアムVOL.2』収録作品として、収録されたオリジナル版(アーケード版)について記述するが、ハードとの互換性の問題により、プレイステーション2でプレイした場合はゲーム中のスピードが遅くなる処理落ちの不具合が生じるため、プレイステーションでのプレイを推奨する。プレイステーション2で『ゼビウス』を遊びたい方には、97年に発売されたプレイステーション用ソフト『ゼビウス3D/G+』に収録されたオリジナル版をオススメしたい。


【ゲームシステム】
 自機「ソルバルウ」で敵組織「ガンプ」の「ゼビウス軍」を掃討するトップビュー形式の縦スクロールシューティングゲーム。全16エリアで、以降はエリア7から16のループ。空中と地上の概念があり、空中の敵には対空戦用の「ザッパー」、地上の敵には対地戦用の「ブラスター」を2つのボタンで撃ち分ける。ブラスターを撃つ際はソルバルウの前方に照準が表示されるので、その照準内に入った敵機を攻撃する。地上の敵は出現位置が固定されているが、空中の敵はプレイヤーの操作次第でパターンが変わる不規則性。単に敵を倒すだけではなく、プレイヤーの様々な行動によって隠れキャラが出現するのも特徴のひとつだ。


【総評】
 『ゼビウス』の優れた点はいくつもあるが、そのひとつはストーリー性だ。シューティングゲームにおけるストーリーなぞ安いサラダに付いてくるパセリみたいなもんだが(この例え好きだなぁ)、本作ではそれが必然性としてゲームに直接結び付いている。「いくら敵だからといってただ突っ込んで来るのはおかしい。敵はどんな奴で、何の目的があって戦うのか。あらゆる設定に何らかの説明ができる様に根拠を作っておく必要がある」という遠藤氏のインタビュー記事を読んだ時、小学生ながらに膝をポンと打ったものだ←ジジイみたい。一部には特攻を仕掛けて来る敵もいるが、これは「無人機」という設定なのだ。

 また、本作は多くの隠れキャラや裏ストーリーなど、プレイヤーの想像力を刺激する要素も多かった。僕は隠れキャラにこそあまり執着しなかったけど、「破壊不可能な空中浮遊物「バキュラ」にザッパーを256発当てると壊せる」という噂はかなり長い間信じていたクチだ。なにせ遠藤氏が公の場ではっきり否定したのは発売から25年以上も経ってで、なんつーか、まあ冷静に考えればどうやったって不可能なんだけど、なーんか夢があったよね、こういうの。他にも「カウンターストップ」という単語を知ったのも本作だった。これは、スコアが9,999,990点に達するとそれ以上は表示されない事で、ファミコン版でソルバルウを無敵モードにして長時間放置したりしたものだ。

 なにより、今もゲームが好きでこんな箸にも棒にもかからないレトロゲームブログなんつーもんを作ってるのは間違いなく本作の影響だと断言できる。小学生の頃、部屋に『ゼビウス』の筐体がある同級生の兄貴がいて、そこで初めて画面を見た時に感じたグラフィックの美しさと、初めて「アンドアジェネシス」に出合った興奮は未だに色褪せない。そして、「僕もいつか部屋に『ゼビウス』の筐体が置けるくらいの人間になりたい」などとよく分からない事を思い、早くも人生の基準点を誤ったポイントに定めたままこうして生きているのだった。


【2021.10.17.追記】
 本作のメカニックデザインを担当された小野浩氏が10月16日、自己免疫性肝炎のため死去されました。謹んで哀悼の意を表します。




Goods
『MEMORIAL GAME COLLECTION SERIES ソルバルウ』











【発売】ウェーブ
【発売日】2013年4月
【定価】3,520円


 ウェーブから発売された、ソルバルウのプラスチックキット。接着剤不要のスナップフィットキットで、色分けもされている。アンドアジェネシスをイメージした台座も付属。サイズはノンスケール。買って結構経つんだけど、未だに積んだままなので、いつか完成したらまた写真追加します。


Produced by NAMCO LTD. (C)1982 1995 NAMCO LTD.,ALL RIGHTS RESERVED

2015/09/06

イメージファイト

【発売】アイレム
【開発】アイレム
【発売日】1990年3月16日
【定価】6,500円
【媒体】ファミコン用カートリッジ
【容量】2M+64KRAM
【ジャンル】シューティング




心が折れる高難易度シューティング


【ストーリー】 
 20XX年、東西陣営の軍拡競争が続く中、突如として月にある西側の月面基地が大爆発を起こす。月が4つの大きな破片と無数のアステロイドと化し、混乱する人類に正体不明の敵が突如として襲いかかる。軌道上にある施設が次々と破壊されていく中、偵察衛星がかつての月面基地のマザーコンピューターに植物の様な物が寄生している姿に気付く。事態を重く見た西側諸国は、最新鋭戦闘機「OF-1 ダイダロス」を用意。戦闘訓練をクリアした者達が次々に実戦へと出撃していくのであった…。



【概要】
 オリジナル版は88年にアイレム(現アイレムソフトウェアエンジニアリング)がアーケードで発売した縦スクロールシューティングゲーム。「訓練編」5ステージ+「実戦編」3ステージの全8ステージ。訓練編では各ステージクリアごとに成績(総合敵機撃破率)が表示され、ステージ5クリア時点で90%以上の成績を挙げなければ実戦編に進む事ができず、「補習ステージ」へと回される。『R-TYPE』の開発チームによる高い難易度と緻密なステージ構成にコアなファンも多い。オリジナル版やPCエンジン版に比べると難易度が低いとされる本作だが、それでも他のファミコン用シューティングゲームと比較すればかなり高い。


【ゲームシステム】
 縦スクロールシューティングゲームの中では珍しく地形障害物が多く、敵の耐久度も高い。自機は4段階のスピード切り替えが可能で、地形や敵の攻撃に合わせて切り替える。7種類あるパワーアップパーツは、どれかひとつを装備していると別のパーツが取れないため、状況に応じて意図的にパーツへ被弾し、別のパーツを取って自ら入れ替える必要がある。また、自機の操作と反対方向を向いて攻撃する「ポッド」を射出しての遠隔攻撃に頼る場面も多いため、プレイヤーには高度な操作が要求される。前述した様に、ステージ5までは「シミュレーター上での擬似戦闘訓練」という設定なので、敵機撃破率が低いとステージ6へは進めない。


【総評】
 本作を一言で語るとすれば、とにかくその難易度の高さに尽きる。ポッドの射出やスピード切り替え時のバックファイアによる後方攻撃など、高度な操作方法をマスターしつつ、地形障害物や敵機の攻撃&攻略パターンを死んで覚えていく「覚えゲー」だ。また、1ショット1発制なので、プレイヤーの連射力=体力&気力&集中力が求められる。特に「補習」とは名ばかりの補習ステージの難易度の高さは本編以上で、手っ取り早く心を折りたい人にはもってこいだ。本作は2周しないと真のエンディングは見られないが、一説によるとオリジナル版の2周目補習ステージをノーミスでクリアした人間は存在しないとかなんとか…。

 オリジナル版は80年代後半を代表するシューティングゲームのひとつだが、このファミコン版に関しては、グラフィックは全体的にのっぺりしており、BGMもペラペラで軽くなった残念仕様の見た目になってしまった。そもそもがこの時期のアーケードゲームをファミコンに移植するのが無茶だし…。4ヶ月後に発売されたPCエンジン版の移植度が高かっただけに、よりいっそう見劣りしてしまうが、中身はしっかり『イメージファイト』だ。ただ漠然とプレイしていても到底クリアはできないが、何度もプレイする事で少しづつ先へ進める正しい硬派なシューティングゲームになっている。とは言え、先へ進めるにも限度があるこの難易度、ヘッポコゲーマーな僕には到底クリアは不可能でした。先日も友達と3時間かけてなんとか最終ステージまで辿り着いたが、その最終ステージだけで2時間費やしてもクリアできず(ノーマル状態からの立て直しが絶望的なのだ)、2人の心はバキバキに折られて諦めた。簡単なシューティングゲームなんてやる気も起きないが、それにしたって難し過ぎるぜコノヤロー!

 個人的にはPCエンジン版を勧めたいが、ファミコンの方がプレイ環境が整っている人も多いだろうし、カセットのみなら200円前後で入手できるため、片手でサクっとヌルいゲームで遊ぶ昨今のスタイルに辟易してるゲーマーは、その難易度の高さ(しつこい様だがファミコン版はこれでも易しい)の一端を経験し、心を折られてみるのも悪くないと思う。



(C)1989 IREM CORP.

2015/09/04

ぷよぷよ


【発売】セガ・エンタープライゼス
【開発】コンパイル
【発売日】1992年12月18日
【定価】4,800円
【媒体】メガドライブ用カートリッジ
【容量】4M
【ジャンル】パズル





『ぷよぷよ』の光と影


【ストーリー】 
 魔導の書、時の章に記されているオワニモの呪文。時空の狭間へ魔物を消し去る究極の呪文のひとつである。だがこの呪文、この世に生まれてからただの一度も使われた事がない、とまで言われている。難しいからではない。使用価値がないからである。なぜなら、4匹の同じ色の魔物を揃えなければ、どこにも吹っ飛ばす事ができない難儀な魔法だからだ。うーん、こじつけ。しかし、封印にも似た長い眠りにあったこの究極呪文にも、ついに日の目を見る時がやってきた。アルルよ!このぷよぷよ地獄で思う存分この呪文を使いまくってくれ!頼むから!



【概要】
 オリジナル版はコンパイルが91年にMSX2とファミコン用ディスクカード書き換え専用で同時発売した落ち物パズルゲーム(ファミコン版の発売元は徳間インターメディア)。その後、システムやグラフィックを大幅に強化し、同社のMSX2用ソフト『魔導物語1-2-3(いっちょうめにばんちさんごう)』のキャラクターを起用したアーケード版が92年10月にセガ・エンタープライゼス(現セガ・インタラクティブ)より発売され、その僅か2ヶ月後にメガドライブへ移植されたのが本作である。ハードの性能差からキャラクターのボイスが大幅に割愛されている以外は、アーケード版と比べても遜色のない忠実な移植だ。


【ゲームシステム】
 画面上部から2匹セットで落ちて来るいろんな色の「ぷよぷよ(ぷよ)」を回転させつつ、同じ色のぷよを上下左右に4つ以上積んで揃えて消していくという例のアレである←ちゃんと説明せれ。ぷよが消える事で、その上に積んであったぷよが下に落ち、そこで再びくっついて消えるという連鎖がキモ。消したぷよの数や連鎖の回数によって相手のフィールドに「おじゃまぷよ」を降らせる事ができる。画面全てがぷよで埋まってしまうとゲームオーバー。対コンピュータ戦では16人の個性的なキャラクターと対戦できる。


【総評】
 世界的大ヒットとなった『テトリス』(エローグ社)登場後、柳の下のタケノコ亜流ゲームが爆発的に増殖した中で、本作は最も、そして唯一と言っていいほど成功したゲームであり、その人気は今でも高い。取扱説明書の中でスタッフ自ら「元々オリジナリティのないゲームです」と書いたりしているが、「同じ色のぷよを重ねて連鎖させる」という『テトリス』とはまた違った面白さは、シンプルなルールと見た目の分かりやすさに加え、対戦格闘ゲームブームの恩恵から対人戦が白熱した。緩いキャラクターと世界観も今見ると同人誌的な内輪ノリではあるが(取扱説明書の内容も一貫してそんな感じ)、その緩さとかわいらしさが受け入れられたのだ。

 当時のゲームセンターは対戦格闘ゲームのブーム真っ盛りであり、ユーザー層がよりマニアックに偏りつつあった。そこに女性客や高年齢層を呼び込んだ看板ソフトのひとつが、アーケード版の『ぷよぷよ』だ。客層の変化により、暗くて怖い「ゲームセンター」を明るく気軽なデートスポット「アミューズメントセンター」へと変えたタイトルのひとつと言ってもいいかもしんない。アーケード版発売直後の移植という事で、本作はメガドライブの看板ソフトでもあり、その存在は緩い見た目とは裏腹に案外大きいのだばよえーん。


 『ぷよぷよ』の大ヒットは、開発したコンパイルの運命を大きく変えた。それまで『ザナック』や『アレスタ』などの良作シューティングゲームから『魔導物語』まで硬軟幅広い作風の同社の事業は、完全に当シリーズのみに特化してしまったのだ。就職活動中だった当時、同社の会社説明会に行った友達が「ぷよまん」を手土産にやって来たので、会社資料を見せてもらったのだが、96年以降のあまりに『ぷよぷよ』頼み過ぎる事業内容に思わず苦笑いしたものだ。全国規模のゲーム大会やキャラクターグッズの販売、果てはレーシングチームの設立まで、全てが『ぷよぷよ』であり、逆に言えば『ぷよぷよ』以外何もなかった。素人の学生から見ても明らかに企業体力とは不釣合いな経営で、「ココはそう持たんよな」などと話したのを思い出す。

 ついこの間まで自社のゲーム開発と並行してセガの下請けなども行い、広島で地に足を付けていた同社の急激な変貌ぶりは、友達とそんな会話をして半年も経たないうちに予想通りの結末となる。98年3月、コンパイルは負債総額約75億円を抱えて和議を申請。これは、01年に負債総額約380億円という桁違いの大型倒産を引き起こしたSNKを除けば、当時のゲーム業界では最大級の経営破綻だった。和議成立後は『ぷよぷよ』の所有権をセガに譲渡。その後、02年まで『ぷよぷよ』の使用権が与えられ、再建のチャンスを得たと思われたが、新たな商品を生み出せないまま使用権切れを迎え、活動を停止。03年に破産宣告され、負債総額約54億円を残したまま翌04年に費用不足のために破産廃止となり、コンパイルは消滅した。広島にあった本社事務所はとうに撤退しており、最後は埼玉にあるマンションの地下室にまで規模を縮小していたという。

 現在『ぷよぷよ』の所有権はセガホールディングスが保有しており、今でも新作が多くのプラットフォームで発売されている。『ぷよぷよ』以外のコンパイル製品の所有権は、アイキというコンパイルの元社長が設立した会社が一時期保有していたが、07年にまたも破産(そりゃ経営者が同じじゃねぇ…)。現在はアイディアファクトリーの子会社であるコンパイルハートが所有権を保有している。「コンパイル」の名を冠したこの会社は、設立当初こそ元社長との繋がりがあったものの、現在は一切の関係を解消している模様。前述の様に、『ぷよぷよ』のキャラクター達は『魔導物語』が出典元なので、このへんの権利関係がちょっと複雑になっているみたいだが、何はともあれ、よくも悪くも非常に大きな影響を与えた90年代を代表する中毒性のあるゲーム、1本くらいは持っておいても損はないと思う。



(C)SEGA / COMPILE 1992