2015/09/04

ぷよぷよ


【発売】セガ・エンタープライゼス
【開発】コンパイル
【発売日】1992年12月18日
【定価】4,800円
【媒体】メガドライブ用カートリッジ
【容量】4M
【ジャンル】パズル





『ぷよぷよ』の光と影


【ストーリー】 
 魔導の書、時の章に記されているオワニモの呪文。時空の狭間へ魔物を消し去る究極の呪文のひとつである。だがこの呪文、この世に生まれてからただの一度も使われた事がない、とまで言われている。難しいからではない。使用価値がないからである。なぜなら、4匹の同じ色の魔物を揃えなければ、どこにも吹っ飛ばす事ができない難儀な魔法だからだ。うーん、こじつけ。しかし、封印にも似た長い眠りにあったこの究極呪文にも、ついに日の目を見る時がやってきた。アルルよ!このぷよぷよ地獄で思う存分この呪文を使いまくってくれ!頼むから!



【概要】
 オリジナル版はコンパイルが91年にMSX2とファミコン用ディスクカード書き換え専用で同時発売した落ち物パズルゲーム(ファミコン版の発売元は徳間インターメディア)。その後、システムやグラフィックを大幅に強化し、同社のMSX2用ソフト『魔導物語1-2-3(いっちょうめにばんちさんごう)』のキャラクターを起用したアーケード版が92年10月にセガ・エンタープライゼス(現セガ・インタラクティブ)より発売され、その僅か2ヶ月後にメガドライブへ移植されたのが本作である。ハードの性能差からキャラクターのボイスが大幅に割愛されている以外は、アーケード版と比べても遜色のない忠実な移植だ。


【ゲームシステム】
 画面上部から2匹セットで落ちて来るいろんな色の「ぷよぷよ(ぷよ)」を回転させつつ、同じ色のぷよを上下左右に4つ以上積んで揃えて消していくという例のアレである←ちゃんと説明せれ。ぷよが消える事で、その上に積んであったぷよが下に落ち、そこで再びくっついて消えるという連鎖がキモ。消したぷよの数や連鎖の回数によって相手のフィールドに「おじゃまぷよ」を降らせる事ができる。画面全てがぷよで埋まってしまうとゲームオーバー。対コンピュータ戦では16人の個性的なキャラクターと対戦できる。


【総評】
 世界的大ヒットとなった『テトリス』(エローグ社)登場後、柳の下のタケノコ亜流ゲームが爆発的に増殖した中で、本作は最も、そして唯一と言っていいほど成功したゲームであり、その人気は今でも高い。取扱説明書の中でスタッフ自ら「元々オリジナリティのないゲームです」と書いたりしているが、「同じ色のぷよを重ねて連鎖させる」という『テトリス』とはまた違った面白さは、シンプルなルールと見た目の分かりやすさに加え、対戦格闘ゲームブームの恩恵から対人戦が白熱した。緩いキャラクターと世界観も今見ると同人誌的な内輪ノリではあるが(取扱説明書の内容も一貫してそんな感じ)、その緩さとかわいらしさが受け入れられたのだ。

 当時のゲームセンターは対戦格闘ゲームのブーム真っ盛りであり、ユーザー層がよりマニアックに偏りつつあった。そこに女性客や高年齢層を呼び込んだ看板ソフトのひとつが、アーケード版の『ぷよぷよ』だ。客層の変化により、暗くて怖い「ゲームセンター」を明るく気軽なデートスポット「アミューズメントセンター」へと変えたタイトルのひとつと言ってもいいかもしんない。アーケード版発売直後の移植という事で、本作はメガドライブの看板ソフトでもあり、その存在は緩い見た目とは裏腹に案外大きいのだばよえーん。


 『ぷよぷよ』の大ヒットは、開発したコンパイルの運命を大きく変えた。それまで『ザナック』や『アレスタ』などの良作シューティングゲームから『魔導物語』まで硬軟幅広い作風の同社の事業は、完全に当シリーズのみに特化してしまったのだ。就職活動中だった当時、同社の会社説明会に行った友達が「ぷよまん」を手土産にやって来たので、会社資料を見せてもらったのだが、96年以降のあまりに『ぷよぷよ』頼み過ぎる事業内容に思わず苦笑いしたものだ。全国規模のゲーム大会やキャラクターグッズの販売、果てはレーシングチームの設立まで、全てが『ぷよぷよ』であり、逆に言えば『ぷよぷよ』以外何もなかった。素人の学生から見ても明らかに企業体力とは不釣合いな経営で、「ココはそう持たんよな」などと話したのを思い出す。

 ついこの間まで自社のゲーム開発と並行してセガの下請けなども行い、広島で地に足を付けていた同社の急激な変貌ぶりは、友達とそんな会話をして半年も経たないうちに予想通りの結末となる。98年3月、コンパイルは負債総額約75億円を抱えて和議を申請。これは、01年に負債総額約380億円という桁違いの大型倒産を引き起こしたSNKを除けば、当時のゲーム業界では最大級の経営破綻だった。和議成立後は『ぷよぷよ』の所有権をセガに譲渡。その後、02年まで『ぷよぷよ』の使用権が与えられ、再建のチャンスを得たと思われたが、新たな商品を生み出せないまま使用権切れを迎え、活動を停止。03年に破産宣告され、負債総額約54億円を残したまま翌04年に費用不足のために破産廃止となり、コンパイルは消滅した。広島にあった本社事務所はとうに撤退しており、最後は埼玉にあるマンションの地下室にまで規模を縮小していたという。

 現在『ぷよぷよ』の所有権はセガホールディングスが保有しており、今でも新作が多くのプラットフォームで発売されている。『ぷよぷよ』以外のコンパイル製品の所有権は、アイキというコンパイルの元社長が設立した会社が一時期保有していたが、07年にまたも破産(そりゃ経営者が同じじゃねぇ…)。現在はアイディアファクトリーの子会社であるコンパイルハートが所有権を保有している。「コンパイル」の名を冠したこの会社は、設立当初こそ元社長との繋がりがあったものの、現在は一切の関係を解消している模様。前述の様に、『ぷよぷよ』のキャラクター達は『魔導物語』が出典元なので、このへんの権利関係がちょっと複雑になっているみたいだが、何はともあれ、よくも悪くも非常に大きな影響を与えた90年代を代表する中毒性のあるゲーム、1本くらいは持っておいても損はないと思う。



(C)SEGA / COMPILE 1992

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