2015/06/15

プロ野球ファミリースタジアム'87年度版



【発売】ナムコ
【開発】ナムコ
【発売日】1987年12月22日
【定価】3,900円
【媒体】ファミコン用カートリッジ
【容量】768Kbit
【ジャンル】スポーツ




野球の知識は全て『ファミスタ』から


【ストーリー】
 全国6,000万のプロ野球ファンの皆さん、こんにちわ!いよいよ新設「ピッカリ球場」において、ペナントレースの幕が切って落とされようとしております。新しく編成され、日本中の注目を集めている「ジャパンリーグ」、その記念すべき開幕戦なのです!新登場の「ナムコスターズ」や、より強力になった連合チームなど、多くの活躍が期待されています。さあ、マウンド上の「ぴぴ」、振りかぶって第1球、投げました!



【概要】
 簡単操作と対戦の面白さから約205万本の大ヒットを記録した『プロ野球ファミリースタジアム』の続編。前作から2チーム増え、全12球団が選べる。「87年度版!」というシールを貼っただけのパッケージからも分かる様に、基本的には前作のマイナーチェンジ版だが、本作も130万本を売り上げ、以降長年に渡って野球ゲームのスタンダードとしての位置を確立した。前作流用のパッケージは、一部のサイトにおいて「裏面の球団数は変更されているので使いまわしではない」という記述もあるが、そもそも裏面には球団数の記述はない。取扱説明書は87年度版のデータになっているが、内容から察するに前作の改版と思われる。


【ゲームシステム】
 変化球の球種とコースの駆け引きが楽しめるバッターボックス視点での「でっかいモード」と、マニュアル(セミオート)操作ができる守備時の「ちっちゃいモード」の切り替え、各選手ごとのパラメーターなど、シミュレーター野球と野球盤の利点を合わせたシステムなどは前作で既に完成されており、操作性は極めて良好。選手はスタメン8人に投手4人と代打4人の1チーム計16人で、各選手は「打席」、「打率」、「本塁打」、「走力」(打撃時のみ)、「防御率」、「利き腕」、「投法」、「スタミナ」、「最高球速」、「変化球の曲がりやすさ」と細かくパラメーターが設定されている。

 チーム名は下記の様に実在セ・パ12球団をモチーフにした架空の球団名となっている。前作では「レールウェイズ」の連合下だった阪急ブレーブス(をモチーフにしたチーム)が独立した「ブラボーズ」、全選手のパラメーターが日本人選手を凌駕する大リーグの「メジャーリーガーズ」が新加入。シリーズで実名が使用されたのは『ファミスタ'93』からだが、これはこれで味わいのあるチーム名でいいですな。選手名もこの時代はまだ架空のものだ。

・ガイアンツ(読売ジャイアンツ)
・ドラサンズ(中日ドラゴンズ)
・カーズ(広島東洋カープ)
・スパローズ(ヤクルトスワローズ)
・ホイールズ(横浜大洋ホエールズ)
・タイタンズ(阪神タイガース)
・ライオネルズ(西武ライオンズ)
・ブラボーズ(阪急ブレーブス)
・レールウェイズ(南海ホークス&近鉄バファローズの鉄道会社連合チーム)
・フーズフーズ(日本ハムファイターズ&ロッテオリオンズの食品会社連合チーム)
・メジャーリーガーズ(アメリカ大リーグのオールスターチーム)
・ナムコスターズ(ナムコキャラのオールスターチーム)


【総評】
 野球が嫌いだ。いや、のっけからプロ野球ファンの方々には申し訳ないが、とにかく子供の頃から野球が嫌いなのだ。父親が阪神タイガースのファンだった事もあり、一時期は半ば強制的にではあるが阪神帽をかぶっていたし、日本一になった85年のフィーバーもなんとなく覚えてはいるが、あの頃は「野球も知らない男の人って…」みたいな風潮が今の数倍あり、野球に興味のない僕にとってはにっくき存在だったのだ。そんなだから未だに最初から最後までプロ野球中継を見た試しがない。あんなものを見るくらいなら椎茸の裏側でも見せられた方がマシである。今でも自分が住んでいる街では、ペナントレースが佳境に入ると個人商店のおっさんから百貨店の店員まで皆一様にレプリカユニフォームを着て接客するという、悪夢の様な光景をあちこちで目にする。なんというか、プロ野球のこういう「おしつけがましさ」が嫌なのだ。

 だが、野球ゲームはわりと好きだ。『実況パワフルプロ野球』(コナミ)や『甲子園』(魔法)も持っているし、サッカーゲームほど複雑な操作はいらないし、レースゲームほど常時画面に集中する必要もない。このゲームで遊んでいなければ、僕は未だに野球のルールさえ知らなかったかもしれないので、そういう意味でも『ファミスタ』は偉大だ。




Goods
『ナムコミュージアム カセットピンズコレクション』












【発売】バンダイ
【発売日】2018年12月
【定価】300円


バンダイからカプセル玩具用に発売された、ナムコ製ファミコン用カートリッジのピンズコレクション。パッケージの再現度は非常に高く、ピンズの手触りもよい。全10種。



(C)1986 1987 NAMCO LTD.,ALL RIGHTS RESERVED

2015/06/10

がんばれゴエモン!からくり道中

【発売】コナミ
【開発】コナミ
【発売日】1986年7月30日
【定価】5,300円
【媒体】ファミコン用カートリッジ
【容量】2M
【ジャンル】アクション




2メガビットの大容量!


【ストーリー】 
 その昔、大平の世をいい事に、全国各地の大名は庶民の暮らしを顧みず、したい放題私腹を肥やしておりました。そんな御時世、噂の義賊ゴエモンが、盗んだ小判を貧しい人に与えながら諸国大名をこらしめる旅に出たのでございます。しかし、御上の追手は厳しく、城への道中は容易な事ではございません。はてさて、この物語の結末はいかに相成ります事やら―?がんばれゴエモン!


【概要】
 ベースとなったのは86年5月にコナミ(現コナミデジタルエンタテインメント)がアーケードで発売したばかりの『Mr.五右衛門』で、これを大幅にアレンジしたのが本作だが、実質的には別のゲームであるため、多くの続編が発売された現在では本作が『ゴエモン』シリーズの第1作目とされている。ファミコン初の2メガビットROMを搭載し、音声合成や全104ステージのボリューム、派手な広告などで人気を博し、同社の看板タイトルのひとつとなった。


【ゲームシステム】
 サイドビュー形式のアクションゲームで、奥行きのある上下左右を移動できる。道にある壷や玉手箱をジャンプで飛び越えて小判を貯めたりパワーアップしながら、「通行手形」を3枚集めて関所へ辿り着けば1ステージクリアとなる。通行手形は店で売られている物もあれば、地下の隠し通路や3D視点の迷路に落ちている場合もある。また、店の中には賭博屋もあり、このゲームで丁半を覚えた少年少女も多いはず。グラフィックやサウンドは純和風でまとめられており、そのクオリティは高い。

 1つのステージは複数のエリアで構成されており、更にそのステージは、町→村→山→海→町→海→村→山→田→屋敷→町→石垣→城内の13ステージからなる。ゲームの目的は最終ステージにいる大名に頭を下げさせる事だが、これがとんでもなく長いのだ。この13ステージが1つの「国」とされており、西から江戸を目指す「ゴエモン」は、肥後国から始まって、出雲国→備前国→摂津国→近江国→尾張国→信濃国→江戸と8つの諸国を全てクリアしなければない。『魔界村』(カプコン)では真のエンディングを見るのに2周しなければならなかったが、本作は8周する必要があるのだ。


【総評】
 今でこそ「あーし写真が趣味でー」なんつってスマホでテキトーに撮ったくだらねえ昼飯の写真2枚か3枚でいっぱいになってしまう容量だが、当時の小学生がその意味を知るよしもなく、CMや広告で「ファミコン初!脅威の2Mビット大容量!」という煽りコピーを見る度に、言葉の意味はよく分からんがとにかくすごい自信だと思い、パッケージにまで「出たっ!2Mビット新製品」、「2Mビット使用」と2ヶ所も書かれているのを見るにつけ、これはもう今までに見た事のないすげえゲームに違いないと確信した。小学生男子の考える「大きい事はいい事だ」理論である。

 ファミコン発売から3年が経ち、市場が大きくなる中で、従来のカートリッジでは表現できないゲームが増え始めた86年。任天堂は2月に従来製カートリッジの4倍の容量を誇るディスクシステムを発売し、徐々にメディアをディスクカードへシフトチェンジする計画だったが、本作はそのディスクカードの2倍の容量を引っ下げ、ディスクシステムの優位性を早々に崩した作品でもある。「ゲームの容量」という言葉が使われ始めた時期、実際にはメガだのビットだのよく分かっていないのだが、とにかくこの『がんばれゴエモン!』はいつもの2倍のジャンプ力にいつもの3倍の回転を加えたウォーズマンのごとく強烈なインパクトがあったのだ。その証拠に今でも僕のコンピュータ容量の基準は2メガビットだ。

 そんなバッファローマンを上回るゴエモン、確かに「御用だ!」の音声合成が楽しい「御用役人」をはじめとした多くのキャラクター、オープニングやステージクリア時に挟まれるデモ、多種多様なアイテム、3D視点による「秘密の迷路」、そして膨大なエリア数はさすが脅威の2メガビットだぜ!と素直に思った。が、ほどなくしてそのあまりに詰め込まれたボリュームにクリアを断念したのだった。本作最大の欠点、それは皮肉にも2メガビットのなせる大容量にあった。これまでにない容量の中にとにかく詰め込めるだけの要素を詰め込んだ結果、全ての要素がインフレを起こしたのだ。完全に形骸化した隠れキャラ、無意味なスコア、セーブ機能はおろかパスワードさえない中での長大過ぎるステージ…。当時の小学生はどうだろう、大抵がファミコンで遊ぶ時間や曜日が親によって決められていたんじゃないだろうか。我が家では土日のみだったが、食事時や寝る時は当然ファミコン本体の電源を切らなければならなかった。最初の肥後国のステージ4(海)までで1~2時間はかかる僕にとって、8周どころか1周するのさえ非現実な仕様だったのだ。いくら腹が減っていようと、1皿1皿がメガ盛りの満感全席を定食として出されたら完食できないのと同じ感じ。

 本作は友達から借りて遊んでいた時に、母親が「音楽がいいねえ」と珍しくゲームに興味を持った事を言ったので、「じゃあ買って」とダメ元で言うと本当に買ってくれた。こんなパターンは後にも先にもこれだけで、先日もこの話を母にすると、「ゲームは覚えとらんけど、そう言ったのは覚えとうよ」と話していた(笑)。あ、そうそう、さっき知ったけど、04年にゲームボーイアドバンスへ移植された際にどうやらセーブ機能が追加されたらしいので、長大なステージに関しての欠点は解消されているかもしれない。そっちは未プレイなのでよく分かんないけど、今やるならゲームボーイアドバンス版の方がいいと思います。ゴエゴエ。



(C)Konami 1986

2015/06/08

キングスナイト

【発売】スクウェア
【開発】スクウェア、ワークス
【発売日】1986年9月17日
【定価】4,900円
【媒体】ファミコン用カートリッジ
【容量】512Kbit
【ジャンル】シューティング




ニュータイプRPG…だと?


【ストーリー】 
 古代マラルリに伝わる有名な伝説がありました。それは「勇者の伝説」とも呼ばれ、マラルリの人達はそれを何度となく聞いては楽しんでいたと言われていました。この伝説は、古代マラルリの隣国、オルセア王国とイザンデ王国に起こった物語です。オルセア王国の王女クレア姫が、ドラゴンの支配するイザンデに捕われてしまったのです。オルセア王国の陛下は姫を救い出すため、重臣達に命じて「4人の勇者」を集めさせました。こうして集められた4人の勇者-レイジャック(ナイト)、カリバ(ウィザード)、バルーサ(モンスター)、トビー(スィーフ)-は、ドラゴンを倒し、クレア姫を救い出す事ができるのか。そして、オルセア王国に再び平和は訪れるのだろうか…。これが「キングス・ナイト伝説」なのです。


【概要】
 『ファイナルファンタジー』発売のおよそ1年前にスクウェア(現スクウェア・エニックス)が「ニュータイプのロールプレイングゲーム」と称し、いかにも王道っぽいキャラクター達と、これまたいかにもよくあるストーリーを添えて発売した縦スクロールシューティングゲームである。音楽は後に『FF』シリーズ全般を手がける植松伸夫氏(現ドッグイヤー・レコーズ代表取締役)が作曲しており、フィールドの曲は当時のファミコン用ソフトとしては珍しく尺の長い聴き応えのある1曲になっている。最終ステージ突入前にかかるジングルもこれまた名曲。


【ゲームシステム】
 1ステージにつき1人、計4人のキャラクターが各々のステージで敵や障害物を撃ちまくり、最終ステージでは4人全員で打倒ドラゴンを目指す。ライフ制で、ライフが尽きるかスクロールで障害物に挟まれるとゲームオーバー…ではなく、何事もなかったかの様に次のステージが始まる。が、本作は1人でもクリアに失敗した時点で最終ステージクリアは不可能だ。初めてのプレイヤーは、4ステージ全てをプレイした後で自分が既に実質的なゲームオーバーになっている事を知るのだ。逆に1人でもステージをクリアすれば、最終ステージ後に任意のキャラクター(ステージ)を選択できる様になり、何度でもやり直す事ができるという仕組み。

 障害物の中には各種アイテムや最終ステージで必要な「勇者の魔法」が隠されているため、やり直しながらアイテムの場所を覚えて取りこぼしをなくし、その効力を上げる部分がRPGっぽいっちゃぽい。4ステージに関しては「頑張ればなんとかなる」という難易度だ。が、頑張ってなんとか全員で最終ステージに進むと、4人が常に十字に並んで歩くため、正面投影面積が4倍となり、敵の弾を避ける事すらままならない罠。また、せっかく苦労して集めた魔法も1人1回しか使えず、どのタイミングで誰の魔法を発動させればいいか分からない罠。最終ステージは「頑張ってもどうにもならないかも」と思わせる理不尽な難易度である。


【総評】
 『ドラゴンクエスト』(エニックス)発売前後はまだファミコンにおける「RPG」というジャンルがメーカーもユーザーもよく分かっていなかった頃で、本作のみならず、同じ縦スクロールシューティングゲームの『頭脳戦艦ガル』(デービーソフト)も「衝撃のスクロールロールプレイング!」などというよく分からないジャンルを掲げていたので、そこは「過去のやんちゃっぷり」として寛大な目で見る事にしましょう。今でもスクウェア・エニックスの公式サイトでは「フォーメーションRPG」という謎のジャンルで紹介されてるけど…。

 実質的にはシューティングゲームながら、なんとかRPGっぽさを肉付けし、所定の位置に隠されたアイテムの場所をトライエンドエラーで探しながら各キャラクターを育てる(強化する)というアイデア自体は悪くない。強化されたキャラクターはシューティングゲームのパワーアップと同じ類ながら、ライフ制が幸いしてその強さが徐々に実感できるのもいい。ただ、いかんせん理不尽なまでの高難易度がネックなのだ。特に最終ステージでは前述した以外にも、先頭のキャラクターを変えながら進まねばならず、それには道に落ちている「矢印」を拾うしかないのだが、陣形は描かれた矢印の方向にしか変えられないため、敵の弾を避けながら任意の陣形にするのは相当難しい。また、陣形変更中は操作を受け付けないため、敵の弾を避ける事もできない。アタイには無理だよこんなの!

 僕がこのゲームを初めて遊んだのは、発売から半年ほど経った頃に、弟が知り合いのおばさんから買ってもらった時だった。特に欲しかったわけでもなく、親からのプレゼントでもなかったため、当時はその難易度の高さもあってそこそこ遊んだに過ぎなかった。それから30年になろうとしている今、弟は真っ当な道を歩んで結婚し、子供2人を育てる立派な父親になった。一方、道を踏み誤った兄はつい先日、同じく道を踏み外した大学時代の友人が泊まりで遊びに来た時に1時間かけてキャラクター4人を育て、更に3時間かけて最終ステージに挑むも、あまりの難易度の高さにクリアを断念した立派なダメゲーマーになったのである。なんだこの終わり方。



(C)1986 SQUARE CO.,LTD. PROGRAMMED BY WORKSS.

2015/06/03

オセロ

【発売】河田
【開発】HAL研究所
【発売日】1986年11月13日
【定価】4,900円
【媒体】ファミコン用カートリッジ
【容量】256Kbit
【ジャンル】テーブル



高齢者も盤と同じ感覚で遊べる唯一のコンピュータオセロ


【概要】
 「ダイヤブロック」や知育玩具で有名な河田(現カワダ)がディスクカードとカートリッジの両方で発売したファミコン初にして唯一のオセロゲーム。版元であるツクダオリジナル(現メガハウス)からの正式ライセンス商品である。


【ゲームシステム】
 ゲームシステムも何も、誰もが知っているフツーのオセロである。白とか黒とか最初に言い出したのは誰なのかしら?対コンピュータ戦でのレベルと制限時間こそ選べるが、あとはごくごくオーソドックスなオセロゲームだ。タイトル画面やメニュー画面ではBGMが流れるが、対戦中は効果音のみ。コンピュータはデフォルト設定で4段階まで強さを選べ、レベル4に勝つと新たにレベル5が現れる…らしいが、ちょっとばかり顔がいい事以外に何の取り得もない僕はヘタクソなのでそこまで行けません(涙)。

 本作の特徴はゲーム内容ではなく、むしろその販売方法にあった。当時はカートリッジのゲームが後に500円の書き換え専用でディスク化される事はあったが、本作は先にパッケージ化されたディスクカード版が2,980円で発売され、その1ヶ月後にこのカートリッジ版が発売されるという珍しいパターンだった。発売前のチラシには最初から両方のメディアで発売する旨が明示されていたが、内容は全く同じなのにメディアが違うだけで定価に2,000円もの差を付けていたのは、ディスクシステムが最も期待されていた時期だったからだろう。


【総評】
 必要最低限の演出で、本当に「コンピュータ化した」という部分が最大の利点なのだが、これはこれで全然オッケーだと思う。余計なキャラクターや過剰な演出がないぶん、メーカーのストイックというか真面目な姿勢やヨシ!と子供心に思っていたくらいだ。

 オセロは長谷川五郎氏(現日本オセロ連盟会長)が戦後間もなく「リバーシ」を基に考案し、73年にツクダが商品化したボードゲームだ。「A minute to learn,a lifetime to master.(覚えるのに1分、極めるのに一生)」というキャッチフレーズ通り、単純なルールと奥深いゲーム性で、76年から毎年世界選手権大会が、13年からは「オセロワールドカップ」も開催されており、愛好家は世界中の老若男女に広がっている。また、その特性から社会復帰を目指す人達のリハビリに利用している医療機関もある他、近年は老人ホームなどにも常備されており、国内では高齢者にも愛好家が多い。

 僕の祖母も時々オセロをやっていた。祖母は戦後、祖父と共に大分県の山奥で椎茸栽培と牧場を営みながら一男三女を育て、趣味を持つ時間なんてほとんどなかったんじゃないかと思っていたが、いつぞや遊びに行った際にニコニコしながらオセロをやっていた事があった。そんな祖父母が我が家に10日ほど滞在した時、僕はここぞとばかりに「ばあちゃん、ファミコンしようや!」と半ば強引に本作で対戦したのだ。当時80間近の祖母がファミコンを触った事などあるはずもなかったが、このゲームは石を置くだけなので、祖母でもすんなりプレイする事ができた。本作のストイックな作りを僕が肯定する理由はここにあったりするわけだ。

 余計な物を何も足さず、しかし必要な要素は何も引いていない、高齢者でも盤と同じ感覚で遊べる唯一のコンピュータオセロ、それが本作である。あれから10年、祖父は6年前、祖母も昨年90歳で他界した。極めて地味ではあるが、この真面目な作りのおかげで祖母にビデオゲームを体験してもらった事、一緒に対戦できた事が今ではなんとはなしに嬉しい思い出のソフトなのだ。ちなみに、10日間対戦して祖母には結局一度も勝てずじまいだった。ばあちゃん、えれー強かったなぁ…。



PRODUCT OF KAWADA. LICENSED FROM TSUKUDA ORIGINAL. COPYRIGHT 1986 ALL RIGHTS RESERVED.
※「オセロ」及び「Othello」は株式会社メガハウスの登録商標です。