2026/05/12

探偵神宮寺三郎 夢の終わりに


   






【発売】データイースト(普及版1,500円シリーズ:メディアリング)
【開発】データイースト
【発売日】1998年4月23日(普及版1,500円シリーズ:2001年10月19日)
【定価】5,800円(普及版1,500円シリーズ:1,500円)
【媒体】プレイステーション用CD-ROM
【ジャンル】アドベンチャー




コマンド選択式アドベンチャーゲームが頂点に昇華した珠玉の名作


【ストーリー】
 「またあの夢か…」

 吐き捨てる様にそう言いながら、最後の記憶を辿る。机上で乱雑に積み上げられたファイルの山が目にとまる。昨晩の成果だった。立て込んでいた仕事もこれで一段落する。しばしの安堵感...。ソファーで眠り込んでしまった事を少し後悔しながら、愛用の煙草に手を伸ばす。寝起きの一服…遠くの喧騒に耳を傾けながら、一度だけさっきの夢を回想してみる。だが、その疑問は、隣室から聞こえた電話のコール音によってすぐかき消されていた。

 「なぜ、今頃また…」


【概要】
 データイーストのハードボイルドアドベンチャーゲーム『探偵神宮寺三郎』シリーズの第6作目。前作『探偵神宮寺三郎 未完のルポ』を踏襲しながら、メインキャラクターデザインやムービーシーンの作画を第1作目からパッケージデザインを担当している寺田克也氏、サブキャラクターを寺田氏の作風に近いデータイーストの高橋光氏が担当。オープニングムービーは映画監督の佐藤嗣麻子氏が手掛けた。グラフィック全体の色調もシックなものに統一されている。また、サウンドは打ち込みではなく、全て同社のバンド「ゲーマデリック」によるジャズの生演奏と、細部までこだわりが溢れている。

 本作は当初、セガサターン版との同時発売を予定していたが、ゲーム中の麻薬描写がセガ・エンタープライゼス(現セガ)の倫理規定に抵触したため、セガサターン版は「18歳以上推奨」区分にされ、特に注意喚起の表示義務もないプレイステーション版との同時発売はユーザーの混乱を招きかねないとして、内容は全く同じだが発売日が異なる(セガサターン版は同年7月9日発売)。国内のゲームソフトで「暴力」や「性表現」以外、麻薬問題では初の「18歳以上推奨」ソフトとなった。

 データイーストの本作への力の入れ具合は強く、ブランクはあるが「シリーズ10周年記念」として、1作目から本作までのゲーマデリックによるアレンジメドレー、「神宮寺三郎」、「御苑洋子」、「熊野参造」各3人のラジオドラマが収録された『探偵神宮寺三郎シリーズ10周年記念CD』の8cmCDも付属している。




【ゲームシステム】
 新宿で探偵を営む神宮寺三郎を主人公にしたオーソドックスなコマンド選択式アドベンチャーゲーム。捜査に行き詰った際はシリーズ恒例「タバコ吸う」コマンドでヒントを得られる。ゲームオーバーはなく、セーブ画面終了後にザッピングのプレイヤーを選択できる。ストーリーを深く知るためにもまずは神宮寺でクリアし、後から他の3人の視点からもプレイする事をオススメする。本作もまた、難解な謎に挑むというよりも、じっくりとストーリーを楽しむスタンスが正しいと言えよう。



【総評】
 前作のユーザーからの不満点や反省点を徹底的に分析してフィードバックさせ、キャラクター造形から独特の雰囲気なども一から見直し、結果的にシリーズ随一の非常に高い完成度の作品となった。次作『探偵神宮寺三郎 灯火が消えぬ間に』発売後、03年にデータイーストが倒産し、ワークジャム(こちらも12年に倒産)、現在の発売元となっているアークシステムワークスが引き継いだ現在も、本作を踏襲しており、シリーズの大きな転換点ともなった。


 主人公の神宮寺三郎だけでなく、助手の御苑洋子、ベテラン刑事の熊野参造、本作のゲストキャラクターである洋子の友人の妹「永田三貴」の4人をザッピングして多角的にストーリーを追えるのは前作同様だが、そのフローチャートもかなり分かりやすくなっている。基本的には1度神宮寺に絞ってクリアした後、他の3人の「その日」をプレイすると全体像がディテールまで把握できる。そして、アニメーションムービーや3Dシーンなどもかなりブラッシュアップされ、全てが高品質な、コマンド選択式アドベンチャーゲームの1種の頂点にまで昇華させた。



 神宮寺だけのモードだが、コマンド選択だけではなく、今までの調査結果をまとめてみたり分析して頭を整理する「推理モード(D-MODE)」や、特定の場所(主に部屋)ではポリゴンで描かれた360度の場所をくまなく調べていく「探索モード(S-MODE)」も、調査にメリハリと緊張感、臨場感を出すのに一役買っている。ゲームに詰まったら(あまり詰まるところはないが)、いつも通りタバコを吸えば何かしら閃くが、98年当時から徐々にタバコへの印象が悪くなって喫煙場所が少なくなってきているのが分かる。うんうん、喫煙者にとっては肩身狭いよなー。


 本作のメインシナリオは、前作『未完のルポ』で企画サポート担当だった稲葉洋敬氏が執筆。架空の麻薬「PCD」を通して、「何かに凝りなければ自分を変えられない現代人の甘さ」を痛烈に描いている。エンディングは今回の事件の各人の「心象」を語っており、神宮寺でクリアすれば、4人のエンディングを選択して見る事ができる。




 とにかく、現在の目で見ても本作の出来は極めて高いクオリティで、細部の細部に至るまで隙なく製作陣のこだわりが見える、アドベンチャーゲーム好きにはぜひともプレイしてほしい傑作だ。



Books
『『探偵神宮寺三郎 夢の終わりに』全記録 Jinguji Saburo Chironicle '87-'98』

 












【著】murmur's GROUP
【発売】メディアファクトリー
【発売日】1998年5月15日
【定価】1,200円


 本作のクリアフローチャートを章立てして丁寧に描いている他、メインキャラクターのラフ画、寺田氏を始め開発陣へのインタビューはもちろん、数多にあるハードボイルド小説の中から、主人公が神宮寺と同じ特徴を持つ個性的な私立探偵が登場する書籍の紹介。そして、1作目『探偵神宮寺三郎 新宿中央公園殺人事件』から前作『未完のルポ』までの攻略、イラストなどまで、まさに「全記録」の名著である。現在は残念ながら10倍以上のプレミアムが付いており、簡単に手に取る事が出来ないのが残念だ。滅べ、プレミア価格!







Goods
「『探偵神宮寺三郎 夢の終わりに』マグカップ」




【発売】データイースト
【発売日】1998年

 前に神宮寺グッズのほとんどを手放した事は書きましたが、マグカップだけは手元に残していたのでした。いえい。たぶん1,000円前後だった気がする。グッズ日常使い派なので、画材のマーカー立てに今でも我が家の第一線で活躍(?)しとります。


(C)1998 DATA EAST CORP.

2026/05/02

へべれけのぽぷーん




【発売】サンソフト
【開発】サンソフト、東海エンジニアリング
【発売日】1993年12月22日
【定価】8,500円
【媒体】スーパーファミコン用カートリッジ
【容量】8M
【ジャンル】パズル




またもオリジナリティの薄さをキャラクターでカバー


【概要】
 サンソフトの看板キャラクター「へべ」、「おーちゃん」、「すけざえもん」、「ぢぇにふぁー」達が登場する落ち物パズルゲーム。翌94年6月にはアーケード用(開発はサンソフトとサクセス、発売はアトラス)に逆移植された。アクション、格闘アクション、レース、ピクロスやタイピングソフトなど、幅広いジャンルで展開されている『へべれけ』シリーズだが、落ち物パズルゲームとしては本作後、95年に『ポポイっとへべれけ』も発売された。


【ゲームシステム】
 『ポポイっとへべれけ』が『ドクターマリオ』(任天堂)的なアレであるならば、本作は『ぷよぷよ』(セガ・エンタープライゼス)的なアレっつーか、いやもう、「アレ」ではごまかせきれない感じだ。画面上部から2匹セットで落ちて来る4色の「ぽぷーん」を回転させつつ、同じ色のぷよじゃねえぽぷーんを上下左右に3つ以上積んで揃えて消していくという例のアレである。ぽぷーんが消える事で、その上に積んであったぽぷーんが下に落ち、そこで再びくっついて消えるという連鎖がキモなとこまでアレだ。
 消したぽぷーんの数や連鎖の回数によって相手のフィールドにこちらのぽぷーん(「ぽろぽろ」)を降らせる事ができる。また、相手から送られて来るぽろぽろは、同色のぽぷーん1つで消える。他にも各キャラクターに用意されている「すぺしゃるあたーく」などで追い込み、画面全てがぽぷーんとぽろぽろで埋まってしまうとゲームオーバー。対コンピュータ戦では難易度が5段階選べる。用意されているモードは、1人用の「ストーリーモード」、最大8人によるトーナメント対戦の「勝ち抜き」、任意の対コンピュータ戦「戦う」、「サウンドモード」の計4モード。


【総評】
 『ポポイっとへべれけ』と異なり、ぽろぽろが降って来るため、対人戦ではある程度ぽぷーんを配置する戦略性が求められる。


 これまたオリジナリティはほぼないが、『へべれけ』シリーズは、その強烈なキャラクターと世界観で「なんとなくいっか」と思わせるこれまたミョーな魅力がある事も以前書いた通りだ。また、毎度の事ながらサウンド面には異様に力が入っており、へべに林原めぐみ、おーちゃんにかないみか、すけざえもんに若本規夫、ぢぇにふぁーには千葉繁各氏を無駄遣いじゃねえあまり喋らないスーパーファミコンで器用している(シリーズ通して各氏が担当)。そして、サウンドも毎回様々なジャンルを試みているが、本作ではジュリアナ系テクノポップ調(声優の使い方も上手い)が主体であり、他社のサウンド担当者からも「サウンドはプロの仕事」と一目置かれている。

 『ポポイっとへべれけ』が発売されたのも、本作の作り込みが単なる「模倣ゲーム」ではないほどしっかりしている点と、やはりキャラクターの魅力から、ユーザーを惹き付ける何かがあるにょー。



(C)1993 SUNSOFT

2026/04/29

スターフォックス

 


 



【発売】任天堂
【開発】任天堂(情報開発本部)、SRD、アルゴノーツ・ソフトウェア社、エー・エヌ・ソフトウェア社
【発売日】1993年2月21日
【定価】9,800円
【媒体】スーパーファミコン用カートリッジ
【容量】8M+スーパーFXチップ
【ジャンル】シューティング
【受賞】2012年:アメリカ国立スミソニアン博物館アート・オブ・ビデオゲーム展選出




スーパーファミコンの意地を見せた「スーパーFXチップ」


【ストーリー】
 ライラット系…広大な銀河のほぼ中央に位置する惑星集団である。ここに住む全ての生き物は、周りの星々が羨むほど恵まれた環境の中で、ゆったりとした時の流れを楽しんでいた。あの男が現れるまでは…。「アンドルフ皇帝」、かつての天才科学者Dr.アンドルフの事である。ライラット系第IV惑星「コーネリア」で生まれ育った彼は、子供の頃から異彩を放ち、若くして超次元空間における動力機関開発の第一人者となった。しかし、その優れた頭脳を私欲のためだけに使う様になってからは危険な実験を繰り返し、遂にコーネリア星から追放されたのだった。

 時が経ち、人々がDr.アンドルフの名を忘れ始めていたある日、コーネリア防衛隊は第I惑星「ベノム」の異常に気付いた。ベノムより発進される様々な未確認物体。思えばこれがコーネリアに怨みを抱くアンドルフからの宣戦布告だったのである。完全にアンドルフ皇帝の軍事基地と化したベノム。そして、瞬く間にライアット系の他の惑星にもアンドルフ軍の魔の手は伸びていた。コーネリア防衛隊長のジェネラル・ペパーは、開発中だった超高性能戦闘機「アーウィン」を乗りこなすパイロットを養成するには、事態はあまりに緊急を要していたのだ。

 「そうだ!スターフォックスだ!」

 ペパーはそう叫んだ。宇宙狭しと名を馳せる雇われ遊撃隊「スターフォックス」。彼ら4人に下された任務は、惑星ベノムの奪回とアンドルフ軍制圧である。上手くアーウィンを操り、ライアット系の平和を回復できるかどうか。チームリーダーであるあなたの腕にかかる期待は計り知れない。


【概要】
 93年、業務用ゲームも家庭用ゲーム機もポリゴン描写が主流になり始めた頃、ポリゴン描写の機能がないスーパーファミコンに「三次元描画方面強化回路」を搭載し、ポリゴン描写を可能にした「スーパーFXチップ」搭載第1弾ソフト。任天堂とイギリスのアルゴノーツ・ソフトウェア社(現アルゴノートゲームス)が共同開発した3D視点のシューティングゲーム。また、スーパーファミコン用ソフトとしては初の3Dゲームである。


【ゲームシステム】
 後方視点の3Dシューティングゲーム。プレイヤーは狐の「フォックス」となってアーウィンに乗り込む。他に鳥と兎と蛙が仲間で、編隊を組んで攻め込むが、仲間が敵の攻撃を受けるとダメージを受けてしまうので、3匹のケモノをフォローしながら進んで行く。アーウィンはLRボタンで左右クイックターン&ローリング、Xボタンは一時的な加速のブースト、Aボタンはスマートボムの発射&起爆、Bボタンは逆噴射(ブレーキ)、Yボタンは通常攻撃とボタンはフルに使用する。コーネリアからベノムまでのルートは難易度によって3ルートあり、2つが全6ステージ、最も難易度が高いルートは全7ステージで、ダメージ制。


【総評】
 シューティングゲームとして見れば特段目新しい部分はない。自機のアーウィンは滑らかに動くが、極論を言えば、『エクセリオン』(ジャレコ)の様な疑似3Dをスーパーファミコン用にブラッシュアップすればよかったのではないかと個人的には思える。静止画像では面白さが全く伝わらないであろーシンプル過ぎるライラット系の星々。サウンドは任天堂が誇る近藤浩治氏によるものだが、これもほぼ似た様な控え目で単調な曲であり、新技術の「実験ソフト」以上でも以下でもない印象を受ける。


 スーパーファミコンにはポリゴンにテクスチャーマッピングを貼る術がなかった事もあり、セガサターンやプレイステーションのソフトと比べるのは酷とも言えるだろうし、ゲーム中に味方のケモノから通信が入る演出もあるにはあるが、それでも、あまりにシンプル過ぎる。シューティングゲーム特有の高揚感も薄く、全体的に淡々としている。



 ネームバリューに比べてゲームの内容はそうでもないが(←ファンの人すまんす)、ここで培った続編のニンテンドウ64用ソフト『スターフォックス64』は、全世界で約400万本を売り上げ、11年にイギリスのギネス・ワールド・レコーズ社より「最も世界で売れたシューティングゲーム」としてギネス世界記録に認定。また、これとは別にスーパーファミコンで続編『スターフォックス2』が開発中だったが、ニンテンドウ64本体の発売が迫っていたため、発売はいったん中止されたものの、17年に任天堂から発売された「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」に収録される事になった。また、ニンテンドーSwitchでも遊べる様になった。

 業務用ゲームでは『バーチャファイター』(セガ・エンタープライゼス)や『リッジレーサー』(ナムコ)など、3D表現のゲームが主流になっており、家庭用ゲーム機では94年に発売されたセガサターンとプレイステーションが凌ぎを削っていた。一方、3D表現にこだわった任天堂はニンテンドウ64(当初の発表名は「ウルトラ64)」)の開発に紆余曲折していた。その間2年、スーパーファミコンは両社の「次世代機」と戦わなくてはならなかった。その短い期間にポリゴン能力を備え戦力として投入されたのが「スーパーFXチップ」である。開発はニンテンドー・オブ・アメリカ社とアルゴノーツ・ソフトウェア社が共同出資してアメリカに作られたエー・エヌソフトウェア社が行った。しかし、国内では本作以外では『ワイルドトラックス』や『スーパーマリオ ヨッシーアイランド』など僅か6本に止まり、出遅れたニンテンドウ64は国内でのコンシューマ市場では初めてトップを取れないまま終わった。また、需要がなくなったスーパーFXチップは、04年にアルゴノーツ・ソフトウェア社とエー・エヌソフトウェア社を連鎖倒産に追い込むバッドエンドとなったが、もしかしたら関係者はあくまでスーパーFXチップは「2年持てばいい」という考えの元、2社の倒産も予期していたのかもしれない。尚、アルゴノーツ・ソフトウェア社はアルゴノートゲームス社として24年に再建している。

 『スターフォックス』の意義、それは、コンシューマ業界での各社熾烈な争いと、各メーカーの技術開発競争が激しかった中、世界中で約5,000万台の売り上げを誇ったスーパーファミコンの限界値を超えて最後まで戦い抜いた意地のソフトである。


(C)1993 Nintendo