2015/12/15

クリスマスナイツ-冬季限定版-



【発売】セガ・エンタープライゼス
【開発】セガ・エンタープライゼス(ソニックチーム)
【発売日】1996年11月22日
【定価】1,500円
【媒体】セガサターン用CD-ROM
【ジャンル】アクション
【周辺機器】セガマルチコントローラー対応
【レーティング】全年齢




採算度外視、充実の販促用ソフト


【ストーリー】 
 エリオットとクラリスがナイツと出会ってから半年、2人の住んでいるツインシーズの街も雪の降る季節になり、とても賑わっています。けれども、2人は何か物足りない気分でとぼとぼと歩いていました。2人は街の中央にそびえ立つシーズタワーに向かっていました。クリスマスの飾りつけが施されているタワーは、まるで大きなクリスマスツリーのようです。素敵なツリーにエリオットとクラリスはすっかり心を奪われてしまいました。ところが、ふと、このツリーに何かが欠けている事に気付きました。そう、それはツリーのてっぺんを飾るはずの輝く星です。エリオットとクラリスは、タワーのてっぺんを何も言わずに見つめていました。

 その夜。2人は夢の中で、いつか来た懐かしい場所を訪れていました。少し違っているのは、春の草原だった場所に今は雪が降り積もり、ナイトピアン達が楽しそうにクリスマスの飾りつけを行っている事です。クリスマスの風景に見とれているのも束の間、再びナイトメアンにイデアを奪われてしまいます。ナイトメアンは、まだ飾りつけの終わっていないツリーにイデアを閉じ込めました。空中には飾りつけ用のカラーチップがふわふわと浮き、ツリーはくるくると回っています。すると…「オレの力が必要みたいだな!」そう!ナイツが大きなクリスマスケーキの上で微笑みかけています。ケーキに歩み寄ると、ナイツと同化し、大空高く舞い上がりました。「さてと!さっさとイデアを取り返して星を奪い返すか!」「星?」「そうさ。あのでっかいツリーに飾るはずのお前達の星さ!」


【概要】
 96年7月に発売された『ナイツ』の続編。とは言っても、本作では「スプリング・バレー」の1ステージのみしかプレイできず、正確には体験版+ファンディスクと言った方がいいかもしれない。サターン本体やマルチコントローラーとの同梱、各種イベントでの配布の他、96年11月22日から97年1月31日までの期間限定で通信販売もされており、前作の3倍以上の約130万本がリリースされた。サターン本体の内蔵タイマーと連動し、起動した日時によってグラフィックやサウンドが異なる仕掛けが組み込まれている。通信販売での定価は1,500円だが、これは送料手数料の値段であり、セガ・エンタープライゼス(現セガゲームス)の採算を度外視した粋なクリスマスプレゼントが話題となった。


【ゲームシステム】
 3Dビュー形式のアクションゲーム。プレイヤーは「エリオット」と「クラリス」のどちらかを選び、夢の世界で「ナイツ」と同化して、4つのコースに分かれたスプリング・バレーを縦横無尽に飛び回る。各コースで20個以上集めた「カラーチップ」をクリスマスツリーに飾り、奪われた「イデア」を全て取り戻すとボス戦となる。エリオットとクラリスそれぞれでクリアするとエンディング。ナイツの基本動作はAボタン(A、B、C各ボタンは共通)と十字キーのみで、実質的には2Dビューのゲームと同じであるため、操作方法は簡単だ。ボスを倒してクリアする度に、神経衰弱の様な絵合わせ画面となり、合わせ当てた絵に応じて「クリスマスプレゼンツ」内の項目が増える。

 その内容は、およそ100枚のキャラクターやイメージCG集、関連グッズ、メインテーマのカラオケモード、メインテーマを任意でアレンジできる「メロディボックス」、トライアルゲームの「リンクアタック」と「タイムアタック」、本作及び前作の「A-LIFE」(人工生命「ナイトピアン」の感情)の状況を閲覧できる「ナイトピアンコレクション」、96年TOKYO TOY SHOWとサマーキャンペーンでのデモ映像が収録された「ムービー」など、かなりのボリュームだ。中でも目玉は、プレイヤーキャラを『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の主人公「ソニック」に変更できるモードで、これを選ぶとボスキャラクターも「ドクター・エッグマン」に変わる。

 また、前述した様に、サターン本体との内蔵タイマーと連動し、起動した日付によって仕様が異なるのも特徴だ。以下がその日付と仕様。
11月25日~12月25日:グラフィックやサウンドがクリスマス仕様の「クリスマスナイツ」。
11月1日~24日、12月26日~31日、1月16日~2月28日:タイトル画面が冬季仕様の「ウィンターナイツ」。
1月1日~15日:タイトル画面がニューイヤー仕様の「ハッピーニューイヤーナイツ」。
3月1日~10月31日:通常仕様のスプリング・バレー「ナイツ・ショートバージョン」(体験版)。


【総評】
 『ナイツ』はセガが想定していたほどの売り上げではなかったが、その奥深く新鮮なゲーム性とシンプルな操作方法は高い評価を受けた。そのため、3月にリニューアルしたサターン本体のクリスマス商戦投入へ向け、キャラクターの認知度拡大と併せて本作が制作された。セガはそれまでにもデモムービーや体験版を収録した量販店向けソフト『フラッシュ・セガサターン』を定期的に作ってはいたが、家庭用ゲーム機における「体験版」というソフト形態が目新しかった頃だ。プレイステーションよりもサターンを先に買っていた僕は、確かファミ通の応募記事から通販したんだけど、こういうステキなキャンペーンをやってくれるサターンを買ってよかったなーと心底思ったのだった…(遠い目)。

 1ステージだけとは言え、簡単な操作で空中を縦横無尽に飛び回る爽快感は十分に体験できる。慣れてくれば10分もかからずクリアできるため、クリスマスプレゼンツのコンプリートもそれほど難しくはないはず。また、『ナイツ』のエンディングテーマソング「DREAMS DREAMS」のアカペラバージョンが本作のエンディングテーマソングとなっており、名曲のオリジナル版同様、こちらもクリスマスらしい必聴の1曲となっている。更に本作のCD-ROMをCDプレーヤーにかけると、前作と本作のBGMが18曲聴けるオマケ付き。ただし、1~2トラックはコンピュータデータのため、プレーヤーが壊れる恐れがあるのでかけちゃダメだヨ!

 ニンテンドウ64が苦戦し、プレイステーションもまだこれといった目玉ソフトがない時期だったため、販促用の範疇を超えた充実度には、当時のセガの余裕を感じさせる。本作は相当数が市場に出たため、サターンユーザーならほとんどの人が持っているんじゃないだろうか。まとめてソフトを買ったりもらったりで僕も一時期手許に5枚ほどあった。中古市場でも数十円で売っているが、当時のセガの勢いを感じる事ができるクリスマスアイテムだ。



(C)SEGA ENTERPRISES,LTD. 1996

2015/12/01

迷宮組曲 ミロンの大冒険

【発売】ハドソン
【開発】ハドソン
【発売日】1986年11月13日
【定価】4,900円
【媒体】ファミコン用カートリッジ
【容量】512Kbit
【ジャンル】アクション




音楽面の演出が光るハドソンらしい良作


【ストーリー】 
 ミロンの住むエプシロン星の住人は、 互いに触れるだけで相手の気持ちを理解する事ができたため、文字や言葉は発達しなかった。離れた人に自分の気持ちを伝えるには、音楽が使われた。人々は楽器を使って自由に会話を交わした。しかし、ミロンにはその能力がなかった。「どうしてボクだけ人の気持ちが分からないんだろう?どうしてボクだけ楽器をうまく使えないんだろう?もしかしたら、ボクはこの星の人間ではないのかもしれない。もしかしたら、ボクみたいな人間がまだこの星にいるかもしれない…」そう思ったミロンは、仲間を探す旅に出る事にした。

 その頃、ミロンの住む村に危険が迫っていた。村の長老はその危険を周りの7つの谷に伝えるために伝令を送ったが、誰一人として応える者はなかった。ミロンは旅のはじめにこの謎を解くため、7つの谷を治める王女エルシラに会う事にした。しかし、街に着いたミロンが見たものは、楽器を魔人に奪われて困っている人々の姿だった。北の果てに住む魔人が王女の住むガーランド城を占領して、王女を城の奥深くに閉じ込め、街中の楽器を隠してしまったのだ。 魔人退治を買って出たミロンに街の司祭は言った。「城にはこんな時のために様々な道具が隠されています。このシャボンがあなたに隠し場所を教えてくれるはずです。どうか王女を助け出して下さい」ミロンはガーランド城の謎を解き、奪われた楽器を取り戻して、王女を助け出す事ができるだろうか…。


【概要】
 ハドソン(現コナミデジタルエンタテインメント)の少数スタッフが開発したアクションゲーム。メルヘンチックな世界観の中、「音楽」を題材にしている。特にボーナスステージの演出は秀逸で、最初はドラムのみだったのが、ステージを重ねるごとにシンバル、チューバ、オカリナ、ハープ、トランペット、バイオリンと楽器が増え、全てが揃ったボーナスステージでは、7つの楽器によるアンサンブルが聴けるのだ。また、当時のゲームっ子達の間では高橋利幸氏っていうか高橋名人(現ドキドキグルーヴワークス代表取締役)の「16連射」が話題となっていた時期なので、タイトル画面には本編とは関係がない「連射測定機能」が付いている。


【ゲームシステム】
 サイドビュー形式のアクションゲーム。全14ステージ。主人公「ミロン」を操り、4階層の「ガーランド城」を探索しながら王女を助け出すのが目的。ガーランド城の外壁にはいくつもの扉があり、敵がうごめくステージやショップ、魔獣の部屋などに通じている。ステージ内では隠されているカギとドアを見つけないと脱出できないが、1度カギを取ったステージは何度でも往来できる。武器はシャボンで、斜め方向の上下に撃ち分けができ、アイテムを取れば最高3連射まで可能となる。隠されたコインを集めてアイテムを揃えつつミロンを徐々に強化し、各階層にいる魔獣を倒しながら、王女が捕らわれている4階を目指す。


【総評】
 『ボンバーマン』、『スターソルジャー』、『高橋名人の冒険島』と、ハドソンがノリにノってる時期に発売されただけあって、本作もまた活き活きとした作品に仕上がっている。マニア向けではなくファミコンのユーザー層に向き合いながらも、まとまった世界観と媚びない難易度が非常にハドソンらしい。また、アクションRPGとパズルゲームの要素を採り入れつつもうまくまとめている、現在でもファンが多い名作のひとつだ。

 ガーランド城の外壁から城内のステージを行き来する本作は、プレイヤーに城の全体像を見せる事でゴールへの意識を明確にさせる効果と共に、箱庭感覚の楽しさも味わえる。また、ガーランド城のグラフィックだけ見ても、ゲーム本編では描かれないミロンとそれを取り巻く世界観の一端を想像させてくれる効果的なグラフィックだ。ハドソン退社後も童話的な世界観を大切にしている本作を手がけた笹川敏幸氏(現ムーンライトミュージック代表)らしさが表れている。

 そして、タイトルの「組曲」たるボーナスステージの心憎い演出。同時発音数が3音しかないファミコンのPSG音源だけで7つの楽器によるアンサンブルを見事に表現した、サウンドプログラムの技術とセンスが光りまくる演出だ。本作はコンセプト、シナリオ、キャラクターデザイン、プログラム、サウンドプログラム、効果音の全てを笹川氏が1人で手がけている。なので、てっきり本作のサウンドも笹川氏の手によるものかと思っていたが、こちらは『チャレンジャー』や『スターソルジャー』などを手がけた国本剛章氏がメインBGMを、ボーナスステージのBGMは『桃太郎伝説』などの井上大介氏という笹川氏が抜擢した2人が作曲したそうだ。

 一方、その見た目や世界観とは裏腹に、難易度は高い。と言っても、決して理不尽な難しさではない。確かに魔獣のランダムな攻撃方法には手こずるが、それよりも本作最大のネックはコンティニュー方法にある。アイテムやパワーメーター(ライフ)の最大値など、徐々にミロンを強くしていくが、1階の魔獣を倒すまではコンティニューができない。倒した後はアイテム「クリスタル」が手に入り、ゲームオーバー時に十字キーの左+スタートでコンティニューが可能となるが、そもそもゲーム中にこの説明は一切なく、知らないプレイヤーはまずここで断念する。

 再開しても毎回パワーメーターが半分以下の状態からリスタートとなる。敵を倒せばランダムでパワーメーターを1メモリ回復するハートが出現するが、いかんせんライフを満タンにするこの「戻し作業」に時間がかかるのだ。高めの難易度と手間のかかるコンティニュー方法に当時投げ出した人も多いはず。

 それでも、良作なのは間違いない。もしくは良い意味で「ファミコンらしいゲーム」と言った方がしっくりくるかもしれない。現在でも中古市場では300円前後と入手しやすく、Wiiとニンテンドー3DSのバーチャルコンソールでもダウンロード販売されている。また、05年にゲームボーイアドバンスで発売された『ハドソンベストコレクションVol.3 アクションコレクション』にも収録されている。個人的には93年にゲームボーイへ移植された『ミロンの迷宮組曲』も気になっているので、いつか手に入れてプレイしてみたい。


(C)1986 HUDSON SOFT