2015/12/15

クリスマスナイツ-冬季限定版-



【発売】セガ・エンタープライゼス
【開発】セガ・エンタープライゼス(ソニックチーム)
【発売日】1996年11月22日
【定価】1,500円
【媒体】セガサターン用CD-ROM
【ジャンル】アクション
【周辺機器】セガマルチコントローラー対応
【レーティング】全年齢




採算度外視、充実の販促用ソフト


【ストーリー】 
 エリオットとクラリスがナイツと出会ってから半年、2人の住んでいるツインシーズの街も雪の降る季節になり、とても賑わっています。けれども、2人は何か物足りない気分でとぼとぼと歩いていました。2人は街の中央にそびえ立つシーズタワーに向かっていました。クリスマスの飾りつけが施されているタワーは、まるで大きなクリスマスツリーのようです。素敵なツリーにエリオットとクラリスはすっかり心を奪われてしまいました。ところが、ふと、このツリーに何かが欠けている事に気付きました。そう、それはツリーのてっぺんを飾るはずの輝く星です。エリオットとクラリスは、タワーのてっぺんを何も言わずに見つめていました。

 その夜。2人は夢の中で、いつか来た懐かしい場所を訪れていました。少し違っているのは、春の草原だった場所に今は雪が降り積もり、ナイトピアン達が楽しそうにクリスマスの飾りつけを行っている事です。クリスマスの風景に見とれているのも束の間、再びナイトメアンにイデアを奪われてしまいます。ナイトメアンは、まだ飾りつけの終わっていないツリーにイデアを閉じ込めました。空中には飾りつけ用のカラーチップがふわふわと浮き、ツリーはくるくると回っています。すると…「オレの力が必要みたいだな!」そう!ナイツが大きなクリスマスケーキの上で微笑みかけています。ケーキに歩み寄ると、ナイツと同化し、大空高く舞い上がりました。「さてと!さっさとイデアを取り返して星を奪い返すか!」「星?」「そうさ。あのでっかいツリーに飾るはずのお前達の星さ!」


【概要】
 96年7月に発売された『ナイツ』の続編。とは言っても、本作では「スプリング・バレー」の1ステージのみしかプレイできず、正確には体験版+ファンディスクと言った方がいいかもしれない。サターン本体やマルチコントローラーとの同梱、各種イベントでの配布の他、96年11月22日から97年1月31日までの期間限定で通信販売もされており、前作の3倍以上の約130万本がリリースされた。サターン本体の内蔵タイマーと連動し、起動した日時によってグラフィックやサウンドが異なる仕掛けが組み込まれている。通信販売での定価は1,500円だが、これは送料手数料の値段であり、セガ・エンタープライゼス(現セガゲームス)の採算を度外視した粋なクリスマスプレゼントが話題となった。


【ゲームシステム】
 3Dビュー形式のアクションゲーム。プレイヤーは「エリオット」と「クラリス」のどちらかを選び、夢の世界で「ナイツ」と同化して、4つのコースに分かれたスプリング・バレーを縦横無尽に飛び回る。各コースで20個以上集めた「カラーチップ」をクリスマスツリーに飾り、奪われた「イデア」を全て取り戻すとボス戦となる。エリオットとクラリスそれぞれでクリアするとエンディング。ナイツの基本動作はAボタン(A、B、C各ボタンは共通)と十字キーのみで、実質的には2Dビューのゲームと同じであるため、操作方法は簡単だ。ボスを倒してクリアする度に、神経衰弱の様な絵合わせ画面となり、合わせ当てた絵に応じて「クリスマスプレゼンツ」内の項目が増える。

 その内容は、およそ100枚のキャラクターやイメージCG集、関連グッズ、メインテーマのカラオケモード、メインテーマを任意でアレンジできる「メロディボックス」、トライアルゲームの「リンクアタック」と「タイムアタック」、本作及び前作の「A-LIFE」(人工生命「ナイトピアン」の感情)の状況を閲覧できる「ナイトピアンコレクション」、96年TOKYO TOY SHOWとサマーキャンペーンでのデモ映像が収録された「ムービー」など、かなりのボリュームだ。中でも目玉は、プレイヤーキャラを『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の主人公「ソニック」に変更できるモードで、これを選ぶとボスキャラクターも「ドクター・エッグマン」に変わる。

 また、前述した様に、サターン本体との内蔵タイマーと連動し、起動した日付によって仕様が異なるのも特徴だ。以下がその日付と仕様。
11月25日~12月25日:グラフィックやサウンドがクリスマス仕様の「クリスマスナイツ」。
11月1日~24日、12月26日~31日、1月16日~2月28日:タイトル画面が冬季仕様の「ウィンターナイツ」。
1月1日~15日:タイトル画面がニューイヤー仕様の「ハッピーニューイヤーナイツ」。
3月1日~10月31日:通常仕様のスプリング・バレー「ナイツ・ショートバージョン」(体験版)。


【総評】
 『ナイツ』はセガが想定していたほどの売り上げではなかったが、その奥深く新鮮なゲーム性とシンプルな操作方法は高い評価を受けた。そのため、3月にリニューアルしたサターン本体のクリスマス商戦投入へ向け、キャラクターの認知度拡大と併せて本作が制作された。セガはそれまでにもデモムービーや体験版を収録した量販店向けソフト『フラッシュ・セガサターン』を定期的に作ってはいたが、家庭用ゲーム機における「体験版」というソフト形態が目新しかった頃だ。プレイステーションよりもサターンを先に買っていた僕は、確かファミ通の応募記事から通販したんだけど、こういうステキなキャンペーンをやってくれるサターンを買ってよかったなーと心底思ったのだった…(遠い目)。

 1ステージだけとは言え、簡単な操作で空中を縦横無尽に飛び回る爽快感は十分に体験できる。慣れてくれば10分もかからずクリアできるため、クリスマスプレゼンツのコンプリートもそれほど難しくはないはず。また、『ナイツ』のエンディングテーマソング「DREAMS DREAMS」のアカペラバージョンが本作のエンディングテーマソングとなっており、名曲のオリジナル版同様、こちらもクリスマスらしい必聴の1曲となっている。更に本作のCD-ROMをCDプレーヤーにかけると、前作と本作のBGMが18曲聴けるオマケ付き。ただし、1~2トラックはコンピュータデータのため、プレーヤーが壊れる恐れがあるのでかけちゃダメだヨ!

 ニンテンドウ64が苦戦し、プレイステーションもまだこれといった目玉ソフトがない時期だったため、販促用の範疇を超えた充実度には、当時のセガの余裕を感じさせる。本作は相当数が市場に出たため、サターンユーザーならほとんどの人が持っているんじゃないだろうか。まとめてソフトを買ったりもらったりで僕も一時期手許に5枚ほどあった。中古市場でも数十円で売っているが、当時のセガの勢いを感じる事ができるクリスマスアイテムだ。



(C)SEGA ENTERPRISES,LTD. 1996

2015/12/01

迷宮組曲 ミロンの大冒険

【発売】ハドソン
【開発】ハドソン
【発売日】1986年11月13日
【定価】4,900円
【媒体】ファミコン用カートリッジ
【容量】512Kbit
【ジャンル】アクション




音楽面の演出が光るハドソンらしい良作


【ストーリー】 
 ミロンの住むエプシロン星の住人は、 互いに触れるだけで相手の気持ちを理解する事ができたため、文字や言葉は発達しなかった。離れた人に自分の気持ちを伝えるには、音楽が使われた。人々は楽器を使って自由に会話を交わした。しかし、ミロンにはその能力がなかった。「どうしてボクだけ人の気持ちが分からないんだろう?どうしてボクだけ楽器をうまく使えないんだろう?もしかしたら、ボクはこの星の人間ではないのかもしれない。もしかしたら、ボクみたいな人間がまだこの星にいるかもしれない…」そう思ったミロンは、仲間を探す旅に出る事にした。

 その頃、ミロンの住む村に危険が迫っていた。村の長老はその危険を周りの7つの谷に伝えるために伝令を送ったが、誰一人として応える者はなかった。ミロンは旅のはじめにこの謎を解くため、7つの谷を治める王女エルシラに会う事にした。しかし、街に着いたミロンが見たものは、楽器を魔人に奪われて困っている人々の姿だった。北の果てに住む魔人が王女の住むガーランド城を占領して、王女を城の奥深くに閉じ込め、街中の楽器を隠してしまったのだ。 魔人退治を買って出たミロンに街の司祭は言った。「城にはこんな時のために様々な道具が隠されています。このシャボンがあなたに隠し場所を教えてくれるはずです。どうか王女を助け出して下さい」ミロンはガーランド城の謎を解き、奪われた楽器を取り戻して、王女を助け出す事ができるだろうか…。


【概要】
 ハドソン(現コナミデジタルエンタテインメント)の少数スタッフが開発したアクションゲーム。メルヘンチックな世界観の中、「音楽」を題材にしている。特にボーナスステージの演出は秀逸で、最初はドラムのみだったのが、ステージを重ねるごとにシンバル、チューバ、オカリナ、ハープ、トランペット、バイオリンと楽器が増え、全てが揃ったボーナスステージでは、7つの楽器によるアンサンブルが聴けるのだ。また、当時のゲームっ子達の間では高橋利幸氏っていうか高橋名人(現ドキドキグルーヴワークス代表取締役)の「16連射」が話題となっていた時期なので、タイトル画面には本編とは関係がない「連射測定機能」が付いている。


【ゲームシステム】
 サイドビュー形式のアクションゲーム。全14ステージ。主人公「ミロン」を操り、4階層の「ガーランド城」を探索しながら王女を助け出すのが目的。ガーランド城の外壁にはいくつもの扉があり、敵がうごめくステージやショップ、魔獣の部屋などに通じている。ステージ内では隠されているカギとドアを見つけないと脱出できないが、1度カギを取ったステージは何度でも往来できる。武器はシャボンで、斜め方向の上下に撃ち分けができ、アイテムを取れば最高3連射まで可能となる。隠されたコインを集めてアイテムを揃えつつミロンを徐々に強化し、各階層にいる魔獣を倒しながら、王女が捕らわれている4階を目指す。


【総評】
 『ボンバーマン』、『スターソルジャー』、『高橋名人の冒険島』と、ハドソンがノリにノってる時期に発売されただけあって、本作もまた活き活きとした作品に仕上がっている。マニア向けではなくファミコンのユーザー層に向き合いながらも、まとまった世界観と媚びない難易度が非常にハドソンらしい。また、アクションRPGとパズルゲームの要素を採り入れつつもうまくまとめている、現在でもファンが多い名作のひとつだ。

 ガーランド城の外壁から城内のステージを行き来する本作は、プレイヤーに城の全体像を見せる事でゴールへの意識を明確にさせる効果と共に、箱庭感覚の楽しさも味わえる。また、ガーランド城のグラフィックだけ見ても、ゲーム本編では描かれないミロンとそれを取り巻く世界観の一端を想像させてくれる効果的なグラフィックだ。ハドソン退社後も童話的な世界観を大切にしている本作を手がけた笹川敏幸氏(現ムーンライトミュージック代表)らしさが表れている。

 そして、タイトルの「組曲」たるボーナスステージの心憎い演出。同時発音数が3音しかないファミコンのPSG音源だけで7つの楽器によるアンサンブルを見事に表現した、サウンドプログラムの技術とセンスが光りまくる演出だ。本作はコンセプト、シナリオ、キャラクターデザイン、プログラム、サウンドプログラム、効果音の全てを笹川氏が1人で手がけている。なので、てっきり本作のサウンドも笹川氏の手によるものかと思っていたが、こちらは『チャレンジャー』や『スターソルジャー』などを手がけた国本剛章氏がメインBGMを、ボーナスステージのBGMは『桃太郎伝説』などの井上大介氏という笹川氏が抜擢した2人が作曲したそうだ。

 一方、その見た目や世界観とは裏腹に、難易度は高い。と言っても、決して理不尽な難しさではない。確かに魔獣のランダムな攻撃方法には手こずるが、それよりも本作最大のネックはコンティニュー方法にある。アイテムやパワーメーター(ライフ)の最大値など、徐々にミロンを強くしていくが、1階の魔獣を倒すまではコンティニューができない。倒した後はアイテム「クリスタル」が手に入り、ゲームオーバー時に十字キーの左+スタートでコンティニューが可能となるが、そもそもゲーム中にこの説明は一切なく、知らないプレイヤーはまずここで断念する。

 再開しても毎回パワーメーターが半分以下の状態からリスタートとなる。敵を倒せばランダムでパワーメーターを1メモリ回復するハートが出現するが、いかんせんライフを満タンにするこの「戻し作業」に時間がかかるのだ。高めの難易度と手間のかかるコンティニュー方法に当時投げ出した人も多いはず。

 それでも、良作なのは間違いない。もしくは良い意味で「ファミコンらしいゲーム」と言った方がしっくりくるかもしれない。現在でも中古市場では300円前後と入手しやすく、Wiiとニンテンドー3DSのバーチャルコンソールでもダウンロード販売されている。また、05年にゲームボーイアドバンスで発売された『ハドソンベストコレクションVol.3 アクションコレクション』にも収録されている。個人的には93年にゲームボーイへ移植された『ミロンの迷宮組曲』も気になっているので、いつか手に入れてプレイしてみたい。


(C)1986 HUDSON SOFT 

2015/11/26

R4-リッジレーサータイプ4-



【発売】ナムコ
【開発】ナムコ
【発売日】1998年12月3日(PS one Books版:2002年2月14日)
【定価】5,800円(ジョグコン同梱版:7,980円)(PS one Books版:2,200円)
【媒体】プレイステーション用CD-ROM
【ジャンル】レース
【周辺機器】アナログコントローラ(振動のみ)、ネジコン、ジョグコン、ポケットステーション対応
【受賞】1999年:第3回CESA大賞優秀賞
【受賞】1999年:第3回CESA大賞グラフィック部門賞
【受賞】1999年:PlayStation Awards ゴールドプライズ賞




プレステ史上最高峰のレースゲーム


【概要】
 ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)の人気レースゲーム『リッジレーサー』シリーズの第4弾。『リッジレーサー』は93年にアーケードで発売後、94年にプレイステーションの目玉として移植され、本体と同時発売された。シリーズは以降アーケードとプレイステーションでそれぞれに枝分かれし、本作はプレイステーション版の第4弾として登場。独自のプログラムでハードの能力を限界まで引き出した美しいグラフィック、黄色を基調にしたクールなインターフェイスデザイン、高品質なサウンド、4つのストーリーなど、全てにおいて高いクオリティを誇るナムコのプレイステーション用ソフト総決算的な作品だ。

 また、本作のために開発されたジョグダイヤル付きのコントローラ「ジョグコン」も発売された。

 パッケージ内には「DISC2」として「ボーナスDISC RIDGE RACERハイスペックVer.&ナムコカタログ'98」が同梱されている。これは94年に発売された『リッジレーサー』の画像解像度を、オリジナルの秒間30フレームから秒間60フレームに倍増した実験作。他にも『リベログランデ』、『風のクロノア』、『テイルズ オブ デスティニー』、『鉄拳3』の体験版、『エースコンバット3 エレクトロスフィア』の紹介ムービー、本作までにナムコがプレイステーションで発売した36本のソフト、周辺機器、公式ガイドブックを納めたカタログが収録されている。



【ゲームシステム】
 3Dビューのレースゲーム。レース中はドライバー視点の「ドライバーズビュー」と車体後方からの「ビハインドビュー」の切り替えが可能。メインのモードは、雇われドライバーとして99年5月から大晦日の間に開催される全8戦のグランプリ「REAL RACING ROOTS '99」を戦い抜く「グランプリモード」。それぞれに課題を抱えた4チームのうちのひとつと契約し、1次予選2戦、2次予選2戦、決勝GP4戦を勝ち抜いていく。3回まではリトライできるが、それ以上失敗するとゲームオーバーとなる。マシンはそれぞれに特徴のある4つのメーカーのうち1社と契約し、成績次第で新車投入または現行車へのチューンナップが施される。

 「タイムアタック」ではプレイヤー単独で最速ラップタイムを目指す。予め用意されたマシンだけでなく、グランプリモードで獲得したマシンも使用できる。車種は全部で320台だが、4チームの色違いも含まれるため、実質的には80台だ。ただし、オマケ要素ではあるが、隠しマシンを入手するためには320台全てを集めなければならない。周辺機器のポケットステーションに対応しており、コピーしたマシンを赤外線通信で他のユーザーと交換できるらしいが、やった事ないので詳細は割愛。つーか、こういうのは発売当時ならではの遊び方なので、レトロゲームとなった今ではそんな遊び方もなかなかできませんなー。

 他にも、2人対戦の「バーサスバトル」やタイムアタックなどの記録を収めた「レコード」、そして獲得したマシンを登録する「ガレージ」などがある。このガレージモードではマシンに貼るオリジナルのステッカーを作ってドレスアップする「ステッカーエディット」という簡易版ペイントソフト的なツールまで用意されているのだ。


【総評】
 技術的なハナシを書くと専門用語だらけになるし何より面倒臭いので割愛するが、まず目に付くのがグラフィックの美しさだ。グランプリのコースは横浜、福岡、ニューヨーク、ロサンゼルスの4都市の湾岸や山間部、空港などが舞台となっていて、時間帯も早朝、昼下がり、夕暮れ、夜間など様々だが、どのコースも光と影が織り成す独特のコントラストが非常に美しく、印象的だ。3DCGはその性質上、写実的な描写を追及する傾向にある。本シリーズと人気を二分する『グランツーリスモ』(ソニー・コンピュータエンタテインメント)などはそれが最も顕著に表れたレースゲームだろう。だが、本作はあえて絵画的な描写をする事で「ゲーム屋」としてのナムコのひとつの答えを見た気がするのだ。

 また、レースゲームの主流が細かいセッティングや操作方法を良しとするシミュレーター寄りになっていた時代、本シリーズはあくまで「ゲーム」という部分に比重を置き、レースゲーム特有の高揚感と爽快感を体現しているが、本作ではその傾向がより強くなっている。レースの難易度は所属するチームで、マシン操作の難易度は契約メーカーでそれぞれ異なるため、その組み合わせで初心者からひとかどのゲーム野郎まで楽しめる。多少ぶつかろうがはみ出ようが大勢には影響しない、それでいて大味にはならない絶妙なバランス。さすがナムコと唸るしかない。レースゲームには珍しいストーリーもドライ過ぎずウェット過ぎないちょうどいい塩梅がプレイヤーを盛り上げる。

 サウンドについても触れておきたい。ソウル、ファンク、テクノなどのジャンルを網羅しつつ全体的には落ち着いた雰囲気の、それでいて色気を醸し出すハウスやドラムンベースで締めている数少ないナイトドライブのデートで流せるゲームミュージックだ。大久保博氏、中西哲一氏、中川浩二氏、高橋弘太氏、境亜寿香氏のナムコサウンドチームの精鋭5名が作曲した本作のイカしたサウンドを納めたサントラは、ゲームミュージックとしてだけではなく、テクノミュージックのアルバムとしても高い評価を受け、その異常なまでの完成度の高さから一時期はプレミアが付いており、06年には異例の再販がかかったほどだ。もちろん、本作もシリーズ恒例の「ミュージックプレーヤー」でこれらのサウンドを聴く事ができる。各コースごとにその雰囲気に合わせたプリセットBGMが設定されているが、これまたシリーズ恒例の選曲も可能なので、僕はどのコースもお気に入りの「MOVE ME」をかけている。

 このナムコ渾身の一作は、99年の第3回CESA大賞(現日本ゲーム大賞)にて優秀賞とグラフィック部門賞を受賞。また、同年には販売本数50万本を突破し、PlayStation Awards ゴールドプライズ賞も受賞。「作品」としても「商品」としても評価された。販売本数の多さから現在では中古市場で100円前後で簡単に入手できるため、ゲーマーはもちろん、レースゲームが苦手な人や女性にも一度プレイしてほしい1本だ。



Books
『ナムコ公式ガイドブック R4』

【発売】ナムコ
【発売日】1998年12月3日
【定価】1,000円


 書店ではなくゲームショップで販売されたナムコ発行の公式ガイドブック。「RRR'99」を実際に開催されるグランプリレースに見立て、東京ゲームショウ'98のナムコブースで行われた本作発表会の模様から各チームの詳細な紹介、メーカーごとのマシンカタログ、全コースの解説、メーカー広告など、攻略本の体裁を取りつつ、中身はレースガイドブックのパロディとなっている。開発者インタビューもムービー、サウンド、企画、車グラフィック、背景グラフィック、プログラマー各チームごとに収録。A4判の充実した内容だ。



Books
『R4-リッジレーサータイプ4- オフィシャルガイドブック』










【著】ファミ通編集部責任編集
【発売】アスペクト
【発売日】1999年1月7日
【定価】1,100円


 こちらは書店で発売されたオフィシャルガイドブック。マシンスペックなどのデータ量としては前述の『公式ガイドブック』(どっちも意味は同じですな)と大差ないが、こちらはA5判と小さいため、誌面に余裕がない印象。レイアウトによる努力の後は見られるが、『公式ガイドブック』を持っていれば必要ないかもしれない。ただし、ジョグコンの開発録に6ページを割いており、開発者インタビューやラフスケッチ、試作品のモックアップなどが掲載されているので、この部分の資料性は高い。



(C)Produced by NAMCO LTD. (C)1998 NAMCO LTD.,ALL RIGHTS RESERVED

2015/11/20

マイティボンジャック

【発売】テクモ
【開発】テクモ
【発売日】1986年4月24日
【定価】4,980円
【媒体】ファミコン用カートリッジ
【ジャンル】アクション




高難易度を誇るテクモの人気作


【ストーリー】 
 7つの海と6つの大陸の平和を守るパメラ王。誰もその姿を見た者がいない伝説的な王である。ある日、地上界を破滅に導こうとする魔王ベルゼブルによって、このパメラ王とその王妃、王女が連れ去られてしまった。そこは魔の大ピラミッド。この中のどこかにパメラ王が幽閉されている。しかし、王の救出に向かったマイティ一族の兄弟達はことごとく魔王の前に敗れ、あとには末っ子ジャックが残るのみ。ジャックは遂に勇気を振り絞って、最後の闘いを挑んだ。負けるな、我らのジャック!世界の平和を呼び戻せ!


【概要】
 84年にテーカンがアーケードで発売したアクションゲーム『ボンジャック』の続編で、同社のファミコン参入第1弾ソフト。同時に社名をテクモ(現コーエーテクモゲームス)へと変更した。全256画面にも及ぶ広大なピラミッドの中には多くのトラップが仕掛けられており、難易度は相当に高い。ゲームオーバー時には、それまでのクリアしたラウンド数やスコア、倒した敵キャラクターなどの条件によってプレイヤーの腕を評価する「ゲーム偏差値GDV(Game Deviation Value)」が表示される。


【ゲームシステム】
 サイドビュー形式のアクションゲーム。全16ラウンド。主人公「ジャック」は基本的にジャンプしかできず、十字キーとの組み合わせによってジャンプの高さと降下中のスピードを調節する。降下中のスピードを落として十字キーの左右を押せば空中浮遊もできる。画面内の爆弾を集めてのスコアアップや、宝箱に隠されているアイテムなどを見つけつつ、敵や障害物を避けながらピラミッド内を探索し、囚われの身となっている兄弟と王家一族を救い出すのが目的。GDVは7段階評価で、最低は48~54、最高は75~100。


【総評】
 前作『ボンジャック』を元に僅か3ヶ月で開発された本作は、耳に残る軽快なBGMが楽しいファミコン初期を代表するアクションゲームのひとつで、その見た目とは裏腹に恐ろしく高い難易度に投げ出した人もきっと多いはずだ。256画面にも及ぶ広大なピラミッド内は、倒しても倒しても湧き出てくる敵キャラクター、ノーヒントの隠しアイテムや隠し部屋、欲を出したプレイヤーに課せられる時に死を以ってでしか出る術がない「拷問部屋」などなど。更にはマルチエンディング制を採用しており、苦労してクリアしても報われない可能性まである徹底っぷりだ。当時、友達の家で数人がかりでプレイして投げ出したが、オトナになって久しぶりにプレイした今回も途中で投げ出した。だって難しいし!

 とは言え、高い難易度に対する救済措置も用意されている。至る所にある爆弾を20個集めると出現する「パワーボール」。これを取ると画面内の敵が金貨に変わり、更にこの金貨を40枚集めると1UPアイテムの「エクストラコイン」が出現する。無視して出口に飛び込んでもクリアできるが、地道に進めればいつかは(ある程度)道が開くはずだ。また、宝箱の中に入っている「マイティコイン」を集めると、「マイティパワー」が使え、ノーマル状態では不可能だった宝箱を開けたり、敵を金貨に変える事ができる。一見して無尽蔵に湧き出る敵も、一画面内での表示数が決まっているため、スクロールアウトさせれば消せるのだ。

 難易度の話ばかりになったが、ゲームの完成度自体も3ヶ月で作ったとは到底思えないほど高い事を忘れてはならない。上下左右はもちろん、斜めへの入力もストレスなく反応する操作性は極めて良好だ。基本アクションがジャンプしかないだけに、この操作性のよさは本作のキモと言ってもいい。操作性のよさとそれに裏打ちされたテクニックが高い難易度に対するフォローとしてしっかり機能しているからこそ、本作は今でもファンが多い名作のひとつに挙げられているのだ。

 現在ではWii Uやニンテンドー3DSなどのバーチャルコンソールでダウンロード販売されている。また、フジテレビ公式サイト内では、本作をパロディ化したブラウザゲーム『お台場ボンジャック』で遊ぶ事ができる。同局の番組『ゲームセンターCX 有野の挑戦』では、第6シーズンに都合3回本作が採り上げられた繋がりからか、14年には『ゲームセンターCX THE MOVIE 1986 マイティボンジャック』という本作がタイトルとなった映画まで公開され、ストーリー中でも重要な役割を果たしている。びっくりするほど面白くなかったけど。



(C)TECMO LTD. 1986

2015/11/12

探偵神宮寺三郎 アーリーコレクション



【発売】データイースト(普及版1,500円シリーズ:メディアリング)
【開発】データイースト、光遊社
【発売日】1999年8月5日(普及版1,500円シリーズ:2001年2月1日)
【定価】4,200円(普及版1,500円シリーズ:1,500円)
【媒体】プレイステーション用CD-ROM
【ジャンル】アドベンチャー/オムニバス



ハードボイルドアドベンチャーの初期名作集


【収録作品】 
01.探偵神宮寺三郎 新宿中央公園殺人事件(87年4月24日)
02.探偵神宮寺三郎 横浜港連続殺人事件(88年2月26日)
03.探偵神宮寺三郎 危険な二人(前編)(88年12月9日)
04.探偵神宮寺三郎 危険な二人(後編)(89年2月10日)
05.探偵神宮寺三郎 時の過ぎゆくままに(90年9月28日)


【概要】
 データイーストが誇るハードボイルドアドベンチャーゲーム『探偵神宮寺三郎』シリーズのファミコン用ソフト全5本を収録したオムニバスソフト。シリーズの話題やミニゲームが楽しめる「神宮寺TOPICS」、各作品のパッケージや説明書などで使用された寺田克也氏のイラスト、オリジナル音源はもちろんのこと、同社サウンドチームのゲーマデリックによるアレンジ曲まで聴ける「ART & SOUND GALLERY」、90年代に再開した新シリーズ3作の紹介、各ゲームを進めるうちに埋まっていく登場人物名鑑など、データライブラリーとしての価値も高いデコファンのみならずアドベンチャーゲームファン必携の1本だ。買おう!


【ゲームシステム】
 新宿で探偵を営む「神宮寺三郎」を主人公にしたオーソドックスなコマンド選択式アドベンチャーゲーム。システム回りは最新作の『探偵神宮寺三郎 夢の終わりに』準拠となっている。『新宿中央公園殺人事件』と『危険な二人』はディスクカード、『横浜港連続殺人事件』と『時の過ぎゆくままに』はカートリッジでの発売だったが、当然パスワード制からメモリーカードへのセーブ制に変更されている。捜査の進行度合いによって内容が常時追加されていく「捜査ノート」、各所で集めた「煙草」を使って見る事ができるヒント集「HELP!」など、古い作品をストレスなく楽しむための気遣いが各所に見られるのが嬉しい。


【総評】
 シリーズ第1作『新宿中央公園殺人事件』から毎年続編が発売されていたが、90年の『時の過ぎゆくままに』を最後に、シリーズはいったん終了する。その大きな理由は、「コマンドを総当たりしていけばいずれクリアできてしまう」という、コマンド選択式アドベンチャーゲーム全般のシステムの行き詰まりによるものだった。スーパーファミコンでは『弟切草』(チュンソフト)や『夜光虫』(アテナ)などのサウンドノベルとして、既にCD-ROMを導入していたPCエンジンでは『うる星やつら STAY WITH YOU』(ハドソン)や『機動警察パトレイバー グリフォン篇』(リバーヒルソフト)などのデジタルコミックとして袂分けするが、91年から95年の間は、コマンド選択式アドベンチャーゲーム不遇の時代だった。この時期にヒットしたほぼ唯一と言ってもいい92年発売のPCエンジン版『スナッチャー』(コナミ)でさえ、オリジナル版は88年発売の作品だった。

 神宮寺が再び姿を見せたのは、メディアが完全にCD-ROMへと変わり、シリーズ特有のハードボイルド感を表現するに十分な環境が揃った96年末だった。6年ぶりの新作『探偵神宮寺三郎 未完のルポ』は、グラフィックやサウンドの表現能力が格段に向上。単にコマンドを総当りするだけはないシステム上の工夫ももちろんだが、「大人の社会派ドラマ」という側面を色濃くし、その表現は続く98年発売の『夢の終わりに』で昇華した。シリーズ第7作『探偵神宮寺三郎 灯火が消えぬ間』を最後に発売元のデータイーストが倒産してしまうが、本シリーズの権利はワークジャムが取得し、現在も多くのプラットフォームで続編が発売されている。

 シリーズに一貫しているハードボイルドタッチの作風は、比較的低学年層をターゲットにしたファミコン市場の中ではかなり異例だった。ダシール・ハメットによる『マルタの鷹』の「サム・スペード」、『大いなる眠り』や『長いお別れ』などレイモンド・チャンドラーの「フィリップ・マーロウ」といったハードボイルド探偵小説の匂いを醸し出す異例の作風は、シリーズを重ねるごとに深みを増し、特に再開後のシリーズでは、寺田氏の原画そのままのグラフィックとジャズ+サスペンス調の音楽が確固たる様式美を築いた。シリーズ累計約222万本を売り上げながら現在も家庭用アドベンチャーゲームでは最長シリーズ記録を更新中だ。

 脇を固める登場人物達も本シリーズの大きな魅力だ。助手を務める才女の「御苑洋子」、警視庁淀橋署のベテラン警部「熊野参造」、関東明治組の大親分「風林豪造」ら、28年続く長期シリーズだからこそ、その人物描写にもまた深みが増している。探偵という自由な身を活かし、時に警察やヤクザと手を組み、また時に対立しつつも、大きな組織犯罪から小さな遺失物捜査まで、あくまで人情味溢れるハードボイルドタッチを貫きながら幅広いストーリーを楽しむ事ができる。この『アーリーコレクション』内に収録されている中でも、特に『時の過ぎゆくままに』はアドベンチャーゲーム史上に残る傑作と言ってもいいだろう。

 01年にはメディアリングの「普及版1,500円シリーズ」より廉価版が発売されている。オープニングに「普及版」のテロップが表示される以外は全く同じ内容で、中古市場でも500円前後と入手しやすい。04年からはワークジャムが携帯アプリ及びニンテンドーDSiウェアでの短編シリーズも展開。本作収録の4本もフルリメイクされて配信された後、07年に発売された『探偵神宮寺三郎DS いにしえの記憶』(アークシステムワークス)にもそのアプリ版が収録されているが、これはハッキリ言ってリメイクの出来があまりに酷かったのでなかった事にしよう。

 『夢の終わりに』発売の98年からデータイーストが倒産するのまでの2年間は、シリーズが途絶えた6年の間を埋める様に続々とグッズが発売され、ファンクラブまで発足した。もちろん僕もファンクラブに加入し、懐中時計やジッポーライター、灰皿、サントラCDなんかを買い漁ったけど、これらのグッズは人生で3番目くらいに貧乏な時期にほとんど売り払ってしまった。サントラはめちゃめちゃ高額で売れたなぁ(遠い目)。まあ、神宮寺も一度貧乏になって事務所を引っ越しているので(たぶん)、長い人生、生きてりゃそういう事もあるさね←よく分からない締め方。




Goods
『探偵神宮寺三郎 Early Collection』販促用チラシ


 発売前に配布されたA4二つ折りのチラシ。神宮寺、洋子、熊野の紹介と、収録作の概要(結構細かい)がビッシリと書かれているなかなか濃い内容。裏面は3ヵ月後に発売される『灯火が消えぬ間に』のキービジュアルが「NEXT COMING SOON」の文字と共に掲載されている。



(C)1999 DATA EAST CORP. 

2015/11/10

影の伝説


【発売】タイトー
【開発】トーセ
【発売日】1986年4月18日
【定価】4,900円
【媒体】ファミコン用カートリッジ
【ジャンル】アクション




タイトーの苦悩が表れた大味な作風


【ストーリー】
 江戸時代末期、魔界の国より甦りし魔性の者が軍団を形成し、日本の世を脅かす様になっていた。ある日、城主の姫「霧姫」が軍団にさらわれてしまった。城主の指名を受けた数々の武芸者達が軍団の屋敷を目指したが、誰一人として帰城した者はいなかった。その時、ある若者が姫を救出すべく魔城へと走った!その若者とは…伊賀の里の忍者「影」である。


【概要】
 オリジナル版は85年にタイトー(現スクウェア・エニックス)がアーケードで発売した和風アクションゲームで、沖電気の音源チップ「MSM5232」を使用したバージョンと、日本楽器製造(現ヤマハ)の「YM2203」を使用したFM音源バージョンの2種類が存在した。忍者の「影」を操り、さらわれた「霧姫」を助けるのが目的。ヤマキとタイアップした特別パッケージバージョンも作られ、「ヤマキのめんつゆ」を買うと抽選で1万名にプレゼントされた。


【ゲームシステム】
 サイドビュー形式のアクションゲーム。「青葉の章」、「紅葉の章」、「雪の章」の全3章からなり、ひとつの章はそれぞれクリア条件が異なる「森」、「ぬけ穴」、「城壁」、「魔城内」、「対決」の5シーンで構成されている。雪の章の対決シーンをクリアするとエンディングとなるが、真のエンディング(というほどのものでもないが…)は2周しないと見る事ができない。影の武器は2連射の手裏剣と、敵の手裏剣を弾く刀の2種類。一発即死系だが、アイテムの水晶玉を取ると敵の攻撃に1度だけ耐える事ができる。他にも空中をヘコヘコ歩く謎の生き物「術丸」や、画面に現れる全ての敵を一定時間倒し続ける巻物などもある。


【総評】
 大きめに描かれたリアル等身のキャラクターやシブいBGM、そしてベラボーに高いジャンプ力が特徴の本作は、『フロントライン』、『スカイデストロイヤー』、『ジャイロダイン』といったタイトーの一連のラインナップ同様、比較的高学年層をターゲットにしている。同じく忍者を題材にした『忍者くん 魔城の冒険』(ジャレコ)とゲームシステム的に近いが、完成度は『忍者くん』に軍配を上げたい。

 ジャンプ力を活かしたスピード感こそあるものの、木や柱に引っかかってしまうと途端にのろのろと登り出し、その隙にやられてしまうケースがままある。また、影と敵の手裏剣のグラフィックが小さくてヒジョーに見難い。水晶玉でパワーアップした時のみ大きくなるが、なんだかよく分からないうちに敵をやっつけ、なんだかよく分からないうちに敵にやられている事がヒジョーに多いのだ。このゲームをプレイして一番発する言葉は「えー」だと思う。スクロールアウトすると消えてしまうアイテムや敵のアルゴリズムなど、若干クセのある操作性も手伝って雑な部分が目立ち、どうしても大味な展開になってしまうのだ。

 さらわれる霧姫もオリジナル版では籠で運ばれるのに、ファミコン版では飛んできた「青忍」に鷲掴みにされてかっさらわれる大味な豪快さ。巻物を取ると発動される「雅の術」もこれまた大味だが、効果時間が結構長く、一切のコントロールを受け付けないため、その間にフレームインして来る敵が問答無用でバッタバッタと落下して死んでいく様をただじっと見ているとなかなか無常な気持ちになれるヨ!こういう本筋と関係ない部分の大味さは笑えば済むのだが、ゲーム自体まで大味だと、残念ながら笑えないのだ。

 結果的に、初見でのプレイだと場合によってはよく分からないうちに瞬殺されてしまうが、ものの5分もすればよく分からないうちに進めてしまう、難しいんだか簡単なんだかさえ分からないゲームになってしまっている。

 グラフィックやBGM(特にオリジナルのFM音源版)、コンセプトなど、ひとつひとつは悪くないのに、それらを合わせるとなぜかイマイチになってしまうという、パッケージイラストの垢抜けなさも含め、悪い意味でタイトーらしさが出てしまった作品と言えよー。まあ、そのわりにネームバリューはそこそこあるのがまたタイトーらしいとも言えるんですけどね。『スペースインベーダー』の項でも述べた様に、本作もまたファミコン市場で実力を発揮できないタイトーの苦悩が見え隠れしている。

 本作の正確な販売本数は公表されていないが、前述のヤマキバージョンでさえ1万本も製作されているので、全体では相当数が販売されているはずだ。僕が本作を初めてプレイしたのは、同級生が当てたそのヤマキバージョンだったのだが(パッケージにシールが貼ってあるだけで内容は全く同じ)、やはり当時から「大味なゲームだなぁ」と思っていたのだった。



(C)TAITO CORP. 1986

2015/11/04

エクセリオン

【発売】ジャレコ
【開発】トーセ
【発売日】1985年2月11日
【定価】4,500円
【媒体】ファミコン用カートリッジ
【容量】192Kbit
【ジャンル】シューティング




独特のシステムで他社との差別化を図った意欲作


【ストーリー】 
 宇宙世紀2991年。青銀河CP17ゼニスの第6惑星「エクセリオン」は、かつて友好関係にあった第7惑星「ゾルニ」の奇襲を受けた。ゾルニ軍撲滅のため、エクセリオン軍の最新鋭迎撃機「ファイターEX」は次々と発進して行った…。


【概要】
 オリジナル版は83年にジャレコがアーケードで発売した縦スクロールシューティングゲーム。擬似3Dによる背景描写や、自機にかかる独特の慣性、敵を連続して撃ち落とす事でスコアが増加する「コンボボーナス」など、特徴的な要素を盛り込んで『スペースインベーダー』(タイトー)や『ギャラクシアン』(ナムコ)との差別化を図った意欲作。本作がジャレコのファミコン参入第1弾ソフトとなる。


【ゲームシステム】
 擬似3Dによる縦スクロールシューティングゲーム。山岳地帯、草原、未来都市、遺跡の4ステージ+ボーナスステージによるループ。自機の「ファイターEX」には慣性がかかっており、逆方向のボタンを押してバランスを取る必要がある。攻撃方法は2種類。連射ができるものの弾数に限りがある「シングルビーム」と、連射はできないが弾数制限がなく2発同時に発射できる「デュアルビーム」を使い分ける。シングルビームは敵を倒す事でチャージされるため、コンボボーナスを狙って1発も撃ち漏らさなければ弾数は相殺されて減らない仕組みだ。また、ボーナスステージでは、弾数制限が解除されるので、弾数を減らさずにチャージできる。

【総評】
 本作は特に昨今のインターネット上で低評価を受けているが、実際にプレイしてみれば、その評価の多くが表面的なものである事が分かるだろう。確かに独特の操作感覚に慣れるまでは戸惑うが、トップビュー形式の固定画面の体裁を取りながら、自機も敵機も縦横無尽に動き回る全方位スクロールの要素を組み合わせ、緊張感あるドッグファイトの表現に成功している。また、画面の左右両端は繋がっているのだが、この「空間」は敵機のみしか移動できない事も、プレイヤーに戦闘空間の広さを感じさせる。画面下部の擬似3Dも当時としては珍しく、『スペースハリアー』(セガ・エンタープライゼス)を彷彿とさせるが、登場は本作オリジナル版の方が2年も早い。

 緊張感を生み出す要素は他にもある。慣性がかかるため、敵機の動きを先読みしながら出現パターンを覚え、シングルビームで一掃。一方のデュアルビームは、自機から発射した弾は敵機に当たるか画面外に消えるまで次弾を撃てない。どちらを使うにせよ、無駄弾を撃たずに連続して敵機を撃墜し、コンボボーナスを狙うのだ。そして、その攻撃のパターン化による緊張感の薄れを回避しつつ、他社との差別化を図るために慣性が加えられた。いや、全部僕の想像ですけどね。『忍者じゃじゃ丸くん』の項でジャレコの体たらくっぷりを嘆いたが、本作開発時のジャレコにはその独特のセンスを活かす技術と意欲があったため、そこまで考えて作っていたとしても不思議ではない気がするのだ。

 何の世界であっても、他とは違う新しい試みを実践する際に失敗は付き物だ。本作の試みがゲームとして「失敗」とは思っていないが、人を選ぶ作品なのは確か。比較的低学年層の多かったファミコン用ソフトの中では、必ずしも「成功」とは言えないのかもしれないが、後年になって「クソゲーとして笑ってやろう」という安易なレビューが掃いて捨てるほど生まれた時に、なぜか本作はよく取り上げられるフビンな作品のひとつである。僕はヒットを狙った大作主義の安牌ゲームよりも、少々イビツになっても新しい試みをする開発者の志が見え隠れしたゲームの方に惹かれる。この『エクセリオン』もそんなゲームのひとつなのだ。



(C)1986 JALECO LTD.

2015/10/24

海腹川背・旬




【発売】エクシング・エンタテイメント
【開発】ジャックポット、日本クラリービジネス、スタジオ最前線
【発売日】1997年2月28日
【定価】5,800円
【媒体】プレイステーション用CD-ROM
【ジャンル】アクション




ゲーマー心をくすぐる硬派なラバーリングアクション


【海腹川背とは】 
 「海腹川背」というのは、このゲームに登場する女の子の名前(姓が海腹、名が川背)で、あなたが操作するキャラクターの事です。海腹川背さんは、なぜかサカナ達にジャマされながら、道なき道を進んで行きます。頼りになるのは、先にルアーが付いたゴムの様に伸び縮みする特殊なロープだけです。でも、このロープはとっても便利なアイテムです。サカナ達に投げ付けて捕まえるのはもちろん、壁を登り、裂け目を飛び越したりするのにとても役立ちます。海腹川背さんが険しいフィールドを安全に進む事ができるよう、あなたもこのロープを自由自在に使いこなせる様になって下さい。

 「海腹川背」本来の意味は、「海の魚は腹に、川の魚は背に脂が乗っている」という板前用語です。このゲームには、タイトル通りに海や川の脂の乗ったサカナ達が、敵キャラクターとしてたくさん登場します。プレイに余裕が出てきたら、日本の風土に馴染み深い魚介類達の事も観賞してやって下さい。


【概要】
 94年にスーパーファミコンで発売された『海腹川背』(TNN)のシリーズ第2弾。8方向に伸縮するルアー付きロープを駆使してフィールドを進むワイヤーアクションゲームで、かわいらしいキャラクターとは裏腹に、テクニック重視の硬派な内容。オープニングムービーはなく、エンディングムービーもあえて低解像度のものを小さく表示するに止められている。一方、特定のフィールドをクリアすると、なぜか玉露園の「こんぶ茶」やフランスの釣具メーカーMITCHELLなどのCMがムービーで紹介される。全体的にシュールな雰囲気だが、内容は古きよき時代のアクションゲームを正統進化させた作品。初回特典には川背さんのピクチャースタンドが付属(スタンド部分だけどっか行っちゃった…)。


【ゲームシステム】
 サイドビュー形式のアクションゲーム。障害物や敵を避けつつ、ステージ内にあるドアに入れば1フィールドクリア。全50フィールド。ドアが複数ある場合は、以降のルートが分岐する。川背さんのアクションは移動、ジャンプ、ロープを投げる。そのロープの先端にはルアーが付いており、壁や天井、敵などに引っ掛ける事ができる。そこでロープを手繰り寄せるか引き伸ばすかで、天井や壁に張り付いたり、敵を捕獲する事ができる。更にそのアクションの応用次第では、垂直の壁を登ったり、助走を付けて大きくジャンプしたり、フィールドを数秒で突破したりと、プレイヤーの力量次第で多彩で奥深いアクションが楽しめる。


【総評】
 ワイヤーアクションゲームは、その独特の操作方法のため、手慣れたゲーマーも初心者も横一列からのスタートになる事が多い。慣れるまでは難しいが、「振り子」の原理を理解すれば基本的な操作はマスターできる。そこから一歩踏み込んで応用技を編み出せる様になると、プレイするのが更に楽しくなるっつー寸法で、技量が高まればいわゆる「魅せるプレイ」を考え始めるのだ。別に実際に誰かに見せるかどうかではなく、「美しくプレイする」というのは昔からのゲーマーの美学みたいなもんである。一度クリアしたフィールドであれば、プレイデータをセーブして「REPLAY」モードで観賞でき、クリアはせずとも到達したフィールドなら「PRACTICE」モードで練習が可能だ。

 このゲームを初めて知ったのは、大学生時分に友達の家で仲間数人が集まっていた時だった。その友達が毎号買っていたTECH PlayStation付録の体験版CD-ROMに本作が3フィールドほど収録されており、初見で全員が夢中になった。当時はポリゴン(3DCGの表現方法の一種)バリバリのRPGや対戦格闘ゲームや美少女ゲームばかりが山ほど発売されていた時期で、そのテのゲームにいささか食傷気味だった。そんな時に登場したどこか懐かしいストイックなアクションゲーム。安易なムービーに頼らない姿勢もまたよし!その場にいた連中のほとんどが発売されるやすぐに購入し、僕もこのゲームがやりたいがためだけにプレイステーション本体を買ったのだった。

 発売当時はマイナーな作品だったが、インターネットの普及後は口コミで評判が広がり、発売からだいぶ間が空いて新作がいくつも発売された。個人的にもハードを買わせるだけあって、ゲームバランスやロープの挙動は非常に丁寧に調整されており、ロープの動きに理不尽な部分は一切ない。ミスは全て己の技量不足のせいだ。一方で、そのミスをフォローする術だっていくつもある。見せかけの派手さはないが、シンプルなルールと自然なアクションでプレイヤーが腕を磨いて遊ぶという、アクションゲームの本質が詰まったこの『海腹川背・旬』は、ワイヤーアクションゲームというジャンルの決定版と言ってもいいだろう。

 00年には3フィールドを追加&企業CMを排除したマイナーチェンジ廉価版『海腹川背・旬~セカンドエディション~』が発売。内容はほぼ同じなので僕はすぐ手放したけど、今考えるとちょっともったいなかったかも。また、09年にはスーパーファミコン版の初代と『セカンドエディション』の両作を収録した『海腹川背・旬~セカンドエディション~完全版』がジェンタープライズよりニンテンドーDSに移植されている。初代は中古市場でも5,000円前後とあまり値が下がらないだけに、入手しやすいハードでの発売は嬉しい反面、ニンテンドーDS本体を握り締めて垂直登りなどの細かなアクションはちと厳しい部分もある。何より、画面の小ささが初老の身には堪えるんじゃよー。よぼよぼ。現在では更にゲームアーカイブスでダウンロード販売もされているので、シニア層はテレビ画面で、若人達は携帯機で遊ぶと吉。とにもかくにもアクションゲーム好きはプレイ必須と言えよー。




Books
『ゲーメストムックEXシリーズVol.17 海腹川背・旬 PERFECT GUIDE BOOK』









【著】ゲーメスト編集部
【発売】新声社
【発売日】1997年3月27日
【定価】1,280円



 テクニック集を「基本テクニック」、「応用編」、「スーパーテクニック編」、「ちょいテク集」に分け、いずれも詳細な写真と文章で解説。1フィールドにつき2ページを割き、1ページが全体マップ、もう1ページが初級者向けと中上級者向けに分けて全50フィールドの攻略法を徹底解説しているゲーメスト編集部らしい実用的なガイドブックだ。フィールドの分岐マップや未使用の敵キャラクターイラスト、川背さんのラフイラストも掲載。テクニック集以外は全てモノクロページなのは痛いが、それを差し引いても内容は濃く、整理された誌面も使い勝手がよい1冊。




Books
『海腹川背・旬 攻略ガイドブック』










【発売】ティーツー出版
【発売日】1997年3月31日
【定価】950円



 レイアウトや書体など、新声社版に比べると低学年向けなデザインで、ページによってはマップの写真がページをまたがっているために見辛い部分もあるにはあるが、全ページカラーなのは大きな利点だ。また、未使用キャラクターの点数自体は新声社版より少ないが、キャラクターデザイナーの近藤敏信氏よる描き下ろしイラストもファンには嬉しいポイント。本作の開発者である酒井潔氏も協力クレジットに名を連ねており、ゲームの取扱説明書にも本書の広告が入っているので、「公式ガイドブック」と言ってもいいだろう。

 新声社版とティーツー出版版、どちらも一長一短だが、全体マップのレイアウトやフィールド分岐の把握は新声社版、実際にプレイしながら見るのはティーツー出版版と使い分けられる。また、当時のエクシング・エンタテイメントの年賀状イラストが新声社版ではラフ、ティーツー版では彩色されたものが載っていたりと、相互に補完し合える内容なので、ファンは2冊どちらも買おう。

 本シリーズは詳細な設定などが公にはされていないが、発売後しばらくして酒井氏による裏設定がインターネット上で公開された事がある(現在は削除済み)。川背さんはわりかし幸薄い身の上だとか、その心象風景がゲームの背景グラフィックだとか、結構驚きの内容だったので、ここらへんをまとめたファンブックなんかが今からでも発売されないもんかなー。



(C)XING 1997 / JAPAN CLARY BUSINESS / JACKPOT