2015/11/12

探偵神宮寺三郎 アーリーコレクション



【発売】データイースト(普及版1,500円シリーズ:メディアリング)
【開発】データイースト、光遊社
【発売日】1999年8月5日(普及版1,500円シリーズ:2001年2月1日)
【定価】4,200円(普及版1,500円シリーズ:1,500円)
【媒体】プレイステーション用CD-ROM
【ジャンル】アドベンチャー/オムニバス



ハードボイルドアドベンチャーの初期名作集


【収録作品】 
01.探偵神宮寺三郎 新宿中央公園殺人事件(87年4月24日)
02.探偵神宮寺三郎 横浜港連続殺人事件(88年2月26日)
03.探偵神宮寺三郎 危険な二人(前編)(88年12月9日)
04.探偵神宮寺三郎 危険な二人(後編)(89年2月10日)
05.探偵神宮寺三郎 時の過ぎゆくままに(90年9月28日)


【概要】
 データイーストが誇るハードボイルドアドベンチャーゲーム『探偵神宮寺三郎』シリーズのファミコン用ソフト全5本を収録したオムニバスソフト。シリーズの話題やミニゲームが楽しめる「神宮寺TOPICS」、各作品のパッケージや説明書などで使用された寺田克也氏のイラスト、オリジナル音源はもちろんのこと、同社サウンドチームのゲーマデリックによるアレンジ曲まで聴ける「ART & SOUND GALLERY」、90年代に再開した新シリーズ3作の紹介、各ゲームを進めるうちに埋まっていく登場人物名鑑など、データライブラリーとしての価値も高いデコファンのみならずアドベンチャーゲームファン必携の1本だ。買おう!


【ゲームシステム】
 新宿で探偵を営む「神宮寺三郎」を主人公にしたオーソドックスなコマンド選択式アドベンチャーゲーム。システム回りは最新作の『探偵神宮寺三郎 夢の終わりに』準拠となっている。『新宿中央公園殺人事件』と『危険な二人』はディスクカード、『横浜港連続殺人事件』と『時の過ぎゆくままに』はカートリッジでの発売だったが、当然パスワード制からメモリーカードへのセーブ制に変更されている。捜査の進行度合いによって内容が常時追加されていく「捜査ノート」、各所で集めた「煙草」を使って見る事ができるヒント集「HELP!」など、古い作品をストレスなく楽しむための気遣いが各所に見られるのが嬉しい。


【総評】
 シリーズ第1作『新宿中央公園殺人事件』から毎年続編が発売されていたが、90年の『時の過ぎゆくままに』を最後に、シリーズはいったん終了する。その大きな理由は、「コマンドを総当たりしていけばいずれクリアできてしまう」という、コマンド選択式アドベンチャーゲーム全般のシステムの行き詰まりによるものだった。スーパーファミコンでは『弟切草』(チュンソフト)や『夜光虫』(アテナ)などのサウンドノベルとして、既にCD-ROMを導入していたPCエンジンでは『うる星やつら STAY WITH YOU』(ハドソン)や『機動警察パトレイバー グリフォン篇』(リバーヒルソフト)などのデジタルコミックとして袂分けするが、91年から95年の間は、コマンド選択式アドベンチャーゲーム不遇の時代だった。この時期にヒットしたほぼ唯一と言ってもいい92年発売のPCエンジン版『スナッチャー』(コナミ)でさえ、オリジナル版は88年発売の作品だった。

 神宮寺が再び姿を見せたのは、メディアが完全にCD-ROMへと変わり、シリーズ特有のハードボイルド感を表現するに十分な環境が揃った96年末だった。6年ぶりの新作『探偵神宮寺三郎 未完のルポ』は、グラフィックやサウンドの表現能力が格段に向上。単にコマンドを総当りするだけはないシステム上の工夫ももちろんだが、「大人の社会派ドラマ」という側面を色濃くし、その表現は続く98年発売の『夢の終わりに』で昇華した。シリーズ第7作『探偵神宮寺三郎 灯火が消えぬ間』を最後に発売元のデータイーストが倒産してしまうが、本シリーズの権利はワークジャムが取得し、現在も多くのプラットフォームで続編が発売されている。

 シリーズに一貫しているハードボイルドタッチの作風は、比較的低学年層をターゲットにしたファミコン市場の中ではかなり異例だった。ダシール・ハメットによる『マルタの鷹』の「サム・スペード」、『大いなる眠り』や『長いお別れ』などレイモンド・チャンドラーの「フィリップ・マーロウ」といったハードボイルド探偵小説の匂いを醸し出す異例の作風は、シリーズを重ねるごとに深みを増し、特に再開後のシリーズでは、寺田氏の原画そのままのグラフィックとジャズ+サスペンス調の音楽が確固たる様式美を築いた。シリーズ累計約222万本を売り上げながら現在も家庭用アドベンチャーゲームでは最長シリーズ記録を更新中だ。

 脇を固める登場人物達も本シリーズの大きな魅力だ。助手を務める才女の「御苑洋子」、警視庁淀橋署のベテラン警部「熊野参造」、関東明治組の大親分「風林豪造」ら、28年続く長期シリーズだからこそ、その人物描写にもまた深みが増している。探偵という自由な身を活かし、時に警察やヤクザと手を組み、また時に対立しつつも、大きな組織犯罪から小さな遺失物捜査まで、あくまで人情味溢れるハードボイルドタッチを貫きながら幅広いストーリーを楽しむ事ができる。この『アーリーコレクション』内に収録されている中でも、特に『時の過ぎゆくままに』はアドベンチャーゲーム史上に残る傑作と言ってもいいだろう。

 01年にはメディアリングの「普及版1,500円シリーズ」より廉価版が発売されている。オープニングに「普及版」のテロップが表示される以外は全く同じ内容で、中古市場でも500円前後と入手しやすい。04年からはワークジャムが携帯アプリ及びニンテンドーDSiウェアでの短編シリーズも展開。本作収録の4本もフルリメイクされて配信された後、07年に発売された『探偵神宮寺三郎DS いにしえの記憶』(アークシステムワークス)にもそのアプリ版が収録されているが、これはハッキリ言ってリメイクの出来があまりに酷かったのでなかった事にしよう。

 『夢の終わりに』発売の98年からデータイーストが倒産するのまでの2年間は、シリーズが途絶えた6年の間を埋める様に続々とグッズが発売され、ファンクラブまで発足した。もちろん僕もファンクラブに加入し、懐中時計やジッポーライター、灰皿、サントラCDなんかを買い漁ったけど、これらのグッズは人生で3番目くらいに貧乏な時期にほとんど売り払ってしまった。サントラはめちゃめちゃ高額で売れたなぁ(遠い目)。まあ、神宮寺も一度貧乏になって事務所を引っ越しているので(たぶん)、長い人生、生きてりゃそういう事もあるさね←よく分からない締め方。




Goods
『探偵神宮寺三郎 Early Collection』販促用チラシ


 発売前に配布されたA4二つ折りのチラシ。神宮寺、洋子、熊野の紹介と、収録作の概要(結構細かい)がビッシリと書かれているなかなか濃い内容。裏面は3ヵ月後に発売される『灯火が消えぬ間に』のキービジュアルが「NEXT COMING SOON」の文字と共に掲載されている。



(C)1999 DATA EAST CORP. 

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