2016/11/11

つっぱり大相撲


【発売】テクモ
【開発】テクモ
【発売日】1987年9月18日
【定価】4,900円
【媒体】ファミコン用カートリッジ
【容量】512Kbit
【ジャンル】スポーツ




技術とセンスが光る家庭用機初の相撲ゲーム


【ストーリー】
 どすこーい、どすこい!君も相撲をやってみないか?最初は前頭十三枚目だけど、戦いながら経験を積んで、強くなっていく。どんどん勝って、うでっぷしを上げて、横綱を目指せ。勝者となって相撲界の星となるか、敗者となって負け犬人生を送るかは、君の努力にかかっている。親方気分を味わいたい君は、対戦モードで勝ち抜き戦。キミも親方、友達も親方、みんなでワイワイガヤガヤ、はっけよーい、のこった!


【概要】
 テクモ(現コーエーテクモゲームス)による家庭用ゲーム機初の相撲ゲーム。簡単な操作でありながら、ボタンの組み合わせによって多彩な技が繰り出せる奥深さを兼ね備え、なおかつ勝ち星を重ねるごとにプレイヤーの力士が成長する育成要素まで盛り込んだ意欲作。相撲ゲームの基本システムを確立し、同ジャンルにおける以降のスタンダードとなっただけあって、1作目にして完成度は非常に高い。また、後の対戦型格闘ゲームの原型となった作品のひとつでもある。


【ゲームシステム】
 固定画面のサイドビュー形式による対戦型相撲ゲーム。プレイヤーは新入幕の前頭十三枚目となって一場所15日の取り組みを勝ち抜いていく。「立ち合い」から「寄り」、「押し」、「投げ」、「つっぱり」、「はたき」といった基本動作、「もろだし」、「すうぷれっくす」、「ぶれえんばすたあ」などの特殊技まで、全て十字キーとA、Bボタンの組み合わせで行う。これらの技は、画面下に表示されている「体力メーター」が点滅するタイミングに合わせてボタンを押す事で発動する。体力メーターは相手の技を受けると減り、相手を攻撃すると回復。相手の強さや受けた技によってメーターの減り方は異なる。

 また、プレイヤーは勝ち星を重ねる事で「うでっぷし(レベル)」が上がり、攻撃力と防御力が上昇する。前頭十三枚目から順に前頭一枚目、小結、関脇、大関と番付を上げ、二場所連続優勝を果たして横綱に昇進した後に優勝するとエンディング。番付は負けが込んでも下がる事はなく、パスワード制によるコンティニューも導入されている。2プレイによる対戦モードでは、4つの相撲部屋の中から各1部屋を選択し、その部屋に所属する5人の力士による勝ち抜き戦ができる。


【総評】
 『テニス』や『ゴルフ』、『F1レース』など、任天堂からファミコン初期に発売された一連のスポーツゲームは、各競技「初」にして既に基本システムを確立させた作品が多い。以降、野球ゲームのスタンダードとなった『プロ野球ファミリースタジアム』(ナムコ)や、当時はあまり馴染みのないアメリカンフットボールが題材の『10ヤードファイト』(アイレム)など、様々な競技がゲームの題材となった。が、こと大相撲に関しては、千代の富士関の「ウルフフィーバー」とファミコンブームの時期が重なるにも関わらず、家庭用ゲーム機はおろかアーケードでもほとんど見かける事がなかった。本作以前に相撲を題材にしたゲームは、84年にテクノスジャパンが開発した『出世大相撲』(新日本企画)とデコカセットシステム用カセットテープ『大相撲』(データイースト)のたぶん2作程度で、どちらもアーケード用だった。

 他競技に比べ、なぜ相撲ゲームの登場がここまで遅れたのか。それは、相撲のルールそのものにあったのではなかろーか。1対1による対戦形式ながら、まず「組む」事から始めなければならない。その状態で多彩な決まり手を繰り出すデバイスは、ボタン数の少ないファミコンやアーケード筐体のコントローラだ。単なる押し相撲では「相撲ゲーム」として成立しない。「シンプルながら奥深い」という表現は何にでもわりと安易に使われがちだが、実際に両立させるのは簡単ではなく、当時の各ゲームメーカーが敬遠するのも分からなくはない気がするのだった。

 本作では、立ち合いから寄り、つり、投げ、はたきといった基本動作のほとんどをBボタンに割り振り、相手の体力メーターが減った際に十字キーとAボタンによるコマンド入力を行う事で、決まり手となる技が出しやすくなり、勝敗が決まるというシステムを築いた。まだ「対戦型格闘ゲーム」という概念さえ曖昧だった時代だ。これにレベル上げの要素を重ねる事で、プレイヤーに成長の手応えを感じさせ、ゲームに奥深さを与えた。この体力メーターこそが本作のキモなのだ。元々テクモは前身のテーカン時代からサッカー、アメリカンフットボール、野球、プロレスなど、現在までに幅広い競技のゲーム化を手がけているだけあって、このシステム周りの完成度はさすがと言えよう。

 本作にはもうひとつキモがある。それは、質実剛健な大相撲の世界を、比較的低学年層の多いファミコンユーザーへ取っ付き易く表現したローカライズのセンスだ。ゲームを始めると、当時では珍しい漢字表示でまずは四股名を決める。55文字という制限はあるが、当て字で自由に四股名を決めるだけでもチビッ子達にとっては楽しめる。力士のグラフィックはプレイヤーも相手も肌と廻しの色違いのみだが、そのぶん表情が非常に豊かに描かれている。取り組み前の四股や塩撒き、ポーズボタンを押した際にほうきを持って土俵を清める呼出の登場など、さりげない演出にもセンスが光る。特に(≧▽≦)←こんな顔したうさぎの行司がかわいい!

 派手なプロレス技も用意されているが、『つっぱり大相撲』の技と言えば「もろだし」だろう。要は廻しが取れて局部っていうかちんこっていうか、あ、ちんこって書いちゃったけど、これ、bloggerの規定に引っかかったりしないですかね?なんか心配になってきたんで、今のうちにちんこって書いた事を謝っておきます。ごめんなさい。…えーと、何の話だっけ…ああ、ちんこじゃねえ「もろだし」の話だ。本来は「不浄負け」という非技の名前で、100年に1度あるかないからしいが、「廻しが取れる=もろだし」と信じている元ちびっ子達は自分を含めきっと多いはずだ。ともだちんこ!へけけ!←マイナス5億点。

 練り込まれたシステム、軽やかな演出とBGMに親しみのあるグラフィック。大きな欠点もなく、現在も名作のひとつに挙げられる本作は、僅か2ヶ月で開発されている。先にスタートした『キャプテン翼』の開発が遅れに遅れまくっていたため、そっちを一時中断して本作が開発されたのだ。当時のゲーム開発は今とは比較にならない少人数&短期間で行われていたとは言え、『マイティボンジャック』の3ヶ月といい、テクモわりかしめちゃくちゃである。そして、何よりそんな短期間で異常な完成度のゲームを生み出す当時のテクモ開発陣のスキルの高さ&センスのよさ。実際、80年代から90年代初期にかけてのテクモ製ゲームには、上記以外にも『スターフォース』や『アルゴスの戦士』、『ソロモンの鍵』、『忍者龍剣伝』、『キャッ党忍伝てやんでえ』などの良作が多い。

 ちなみに、本作の開発に携わった鶴田道孝氏のサイトでは、超ハードスケジュールに追い詰められながらも考え出されたプログラムの一部が後に『キャプテン翼』の開発に転用できた話や、鉛筆画によるキャラクタースケッチといったテクモファン必読な内容が掲載されているので、ぜひ読もう!

 その完成度の高さからPCエンジンやスーパーファミコンなどで続編も発売。本作自体も相当数が売れたため、現在の中古市場では200円前後と安く入手できる他、Wii、Wii U、ニンテンドー3DSの各種ダウンロード販売や、発売されたばかりのニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータにも収録されているため、今でもわりと気軽に楽しむ事ができるので、君も相撲をやってみないか!


【2016.11.21.追記】
 本作の開発に携わられた鶴田道孝様より、本エントリーをTwitterで紹介して頂きました。ありがとうございます。鶴田様の最新情報や現在の作品はWELCOME turu3netからご覧頂けます。




1987 (C)TECMO LTD.

2016/11/04

ナムコミュージアムVOL.4


【発売】ナムコ
【開発】ナムコ
【発売日】1996年11月8日(PlayStation the Best版:1999年10月28日)
【定価】5,800円(PlayStation the Best版:オープン価格)
【媒体】プレイステーション用CD-ROM
【ジャンル】オムニバス
【周辺機器】ネジコン、アナログジョイスティック対応
【受賞】1996年:CESA大賞'96ゲームジャンル別賞バラエティ賞




昔のナムコが好きだ!その4


【ストーリー】
 お陰様をもちまして、当ミュージアムも第4弾を迎えました。これもひとえに皆様方のご支援の賜物と、スタッフ一同心より感謝しております。そこで今回は、そういった感謝の意味も込めまして、比較的記憶に新しい1984~1988年にかけての作品を集めました。もちろん、当時好評を博した作品が中心となっております。オールドファンのみならず、若いファンの方々にも馴染みのあるものが多いのではないでしょうか?それでは本日も「ナムコミュージアム」をごゆっくりお楽しみ下さい。




【収録作品】
01.パックランド(84年8月)
02.イシターの復活(86年7月)
03.源平討魔伝(86年10月)
04.アサルト(88年4月)
05.アサルトプラス(88年)
06.オーダイン(88年9月)






【概要】
 ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)が地球一輝いていた頃に発売されたアーケードゲームの数々を完全移植で複数収録したオムニバスソフト。ゲームのみならず、多くの関連資料や同社の会社資料までも収録したプレイステーション用ソフトとして、全6本が順次発売された。本作はその第4弾。『アサルト』、『アサルトプラス』は家庭用ゲーム機では初の移植で、別売りの周辺機器「アナログジョイスティック」(ソニー・コンピュータエンタテインメント)に対応。

 また、『イシターの復活』は特別付録「PERSONAL PASSWORD NOTE,ROOM NAME NOTE,おまけ」シートが同梱されている他、本作独自仕様の「裏イシターの復活」が追加されている。オリジナルグラフィックやサウンドが楽しめる「劇場」では、ロボットバンド「ピクパク(PIC-PAC)」の歌が聴けたり、資料類が閲覧できる「図書室/展示室」には、広報誌「namco COMMUNITY MAGAZINE NG」に冨士宏氏が連載していた『迷廊館のチャナ』も全23話中13話までが収録されていたりと、今作もナムコファンなら死んでも買おう!



【ゲームシステム】
 ミュージアム内の基本構成は前作『ナムコミュージアム VOL.3』と同じだが、演出やグラフィックは大幅にパワーアップし、隠し要素や裏技も充実している。

 『アサルトプラス』は隠しゲームとして収録されている。出し方は、ミュージアム受付の階段を上って一番左側にある真っ暗な部屋に入り、上+△+L1+R1ボタンを同時に押す。入力が成功すれば効果音と共に女性司令官が現れるので、正面で○ボタンを押す。すると、リアル等身だった女性司令官が三頭身のディフォルメモデルに変化し、部屋の中央にある台座の前で再び○ボタンを押せば、『アサルトプラス』専用の「ゲームルーム」に入る事ができるのだ。

 また、「パックマン」を主人公に収録作品のキャラクター達が織り成す従来通りのオープニングムービーとは別に、今作では隠しムービーとして『源平討魔伝』のプロモーションビデオ映像をオープニングで見る事ができる。方法は、プレイステーション本体の電源を入れてすぐにL1+R1ボタンを押し続けていればオッケー。10分弱あるオリジナル版を3分ほどに編集したものではあるが、『ゼイラム』や『牙狼-GARO-』シリーズの雨宮慶太氏が監督を務め、実写と特撮とアニメを組み合わせたPVは、往年の特撮ドラマ『怪奇大作戦』っぽい雰囲気もあったりなんかして、なかなかの見応えだ。


【総評】
 シリーズ4作目という事で円熟味を増した今作。ミュージアムから各ゲームモードへの移行はよりスムーズになり、ロード時間は更に短縮。前述した隠し要素や裏技、ちょっとした演出に至るまで、もはや貫禄さえ漂わせる作りとなっている。また、既にファミコンやPCエンジンへ移植されている比較的メジャーどころと共に、家庭用ゲーム機初移植となった『アサルト』と『アサルトプラス』を加えた収録作品群のバランス&コストパフォーマンス。いや、もうね、まだ買ってない人がいたらとにかくこれだけでも買おうよと。

 グラフィックの回転、拡大、縮小を得意としたアーケード基板「SYSTEM II」による開発第1弾ゲームだった『アサルト』は、「SYSTEM II」の特徴と類似した機能を持つスーパーファミコンでの発売を期待していたものの、その特殊な操作性故に、家庭用ゲーム機への移植は本作まで待つ事になった。一方、既に高い再現性でPCエンジンに移植されている『パックランド』、『イシターの復活』、『源平討魔伝』、『オーダイン』も硬軟バランスよく収録。この隙のなさ。完璧じゃないすか?

 前述した『源平討魔伝』PVも含め、前3作よりも更に資料性が高くなったのもナムコファンには嬉しい。『アサルト』では『機動戦士ガンダム』や『タイムボカン』シリーズのメカニックデザイナーである大河原邦男氏による初期デザイン画や企画書まで収録。そして、なんと言っても「図書室/展示室」で読む事のできる『迷廊館のチャナ』!冨士宏氏特有の温かで柔らかなタッチで描かれる少女「チャナ」と、「扉」の向こうに住む「オルオル」の小さな大冒険。未だ単行本化されておらず、現在でも読めるのは当時のNGか本作のみという薄幸の作品ではあるが、『午後の国』同様に良作なので、どこか単行本化して下さい!(血の涙)

 「劇場」でライブを行っているロボットバンド・ピクパクについても触れておきたい。ビデオゲームと並び、ナムコでは60年代から「仕事ロボット」、「単機能型ロボット」、「エンターテインメントロボット」、「自立型知能ロボット」など、80体以上のロボット開発を行っていた。その実績から、85年に開催された国際科学技術博覧会(つくば科学万博'85)にて、マスコットキャラクター「コスモ星丸」のロボットを開発。ナムコ単独でも84年11月17日にリリースしたロボットバンドが演奏を行った。これがピクパクだ。

 ドラムスの「ストロボ・ゴンザレス」、ヴォーカルとキーボード担当の「マリア・ソケット」、ギターの「デジタル・トメIII」のメイン3体に、司会兼マネージャーの「まじめんたろう」と5体のバックコーラス「ザ・カスタネッツ」による5種9体のロボットで構成されたグループ全体をセンターコントロールシステムで制御し、更に各機の歌や演奏、セリフ、挙動などはレーザーディスクによる信号で制御していた。また、拍手や歓声など、観客の反応を音情報によって判断し、それによってショーの構成を変更して観客とのコミュニケーションを図ったという。総制作費は1億5,000万円。貸し出しも行っており、そのレンタル料は諸経費を除いて1週間で350万円だったそうだが、現在は全て所在不明との事。

 本作では3Dキャラとして蘇ったピクパクが劇場でのBGMとして「ピクパクのテーマ」と「ロボットマーチ」の2曲を奏でている。最近知ったんですけど、これ、「ピクパクのテーマ」の作詞がEPOで作曲が清水信之、「ロボットマーチ」の作詞作曲が大貫妙子って!2曲ともどこからどう聴いても80年代テクノポップ全開な曲なので、忘れた頃や疲れた時に聴くと泣けます。ちなみに、歌は前述した様にLDから流れているため、実際にロボットが楽器を演奏しているわけではないが、そこはロボットに「かわいげ」や「情緒」を求めるナムコらしさの表れ。ナムコのこういうところが好きなんだよー!ソフトバンクに爪の垢を煎じて飲ませてやりたい!←いらん事書くな。また、本作のロード画面ではピクパクの他にも「マッピー」や「キュージくん」ら、往年のナムコ製ロボット達のCGが表示されるので、これまたナムコファンは嫁を質に入れてでも買うべし!マジで!


【2018.10.25.追記】
 マッグガーデンのWebコミックスサイト「MAGCOMI」にて、『迷廊館のチャナ』が25年ぶりに完全新規復活で連載開始。




Books
『迷廊館のチャナ』1巻










【著】冨士宏
【発売】マッグガーデン
【発売日】2019年8月26日
【定価】600円


 18年10月より上記「MAGCOMI」で連載が開始された『迷廊館のチャナ』、待望の単行本化!第1話「開かずの扉」から第8話「三人の迷走」までを収録。NG掲載時との相違点やラフスケッチなども掲載されており、往年のナムコファンは全員読むべし!



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