2026/05/28

源平討魔伝


 




【発売】ナムコ
【開発】ナムコ(源平プロジェクト)
【発売日】1986年10月1日
【媒体】アーケード
【容量】Namco SYSTEM 86
【ジャンル】アクション




浄瑠璃原案の和風アクション


【ストーリー】
 一一九二年、闇は来たれり。闇の源を「頼朝」といふ。頼朝、数多の魔族を率いて地を征す。対せし平家の者ことごとく討たれ、壇ノ浦に沈みたり。天帝、世の乱れを大いに憂い、三途の川の渡守「安駄婆」に命じて、平家の亡者よりひとりの豪の者を選ぶ。その名を「景清」といふ。景清、「ぷれいや」なる異世界の者の布施により、地獄より蘇りたり。


【概要】
 86年にナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)から発売された和風アクションゲーム。鎌倉時代の源平合戦を題材にした浄瑠璃『出世景清』(後に歌舞伎にもなった近松門左衛門作の人形浄瑠璃の演目)をモチーフにしている。主人公の「平景清」が、「ぷれいや」なる異次元の者っつーかプレイヤーからのお布施により復活して、「三種の神器」を集め、平家の仇敵「源頼朝」を討ち取るため、鎌倉へと東上する。エンディングでは、急逝した『ディグダグ』などの開発者である深谷正一氏を悔やむ辞世の句が流れる。

 本項では『ナムコミュージアムVOL.4』収録作品として、収録されたオリジナル版(アーケード版)について記述する。


【ゲームシステム】
 サイドビュー形式の和風アクションゲーム。主人公は地獄から蘇った平景清で、怨敵・源頼朝を倒すため、鎌倉を目指す。ゲームでは状況に応じて「横スクロールモード」、落とし穴に落ちると「黄泉の国」に飛ばされてしまう「平面モード」、そして、ボス戦までの道中「BIGモード」の3通りがある。頼朝を倒すには「三種の神器」を揃える必要がある。ライフ制で、虫の息になると安駄婆(あんだあばあ)に「風前の灯火」と言われる。ナムコ製のゲームはよく「喋る」が、本作が同社の音声合成初作品でもある。全46ステージだが、目的の鎌倉へ行くルートはいくつかあり、1回のプレイだとだいたい12~15ステージほどだ。


【総評】
 難易度はわりかし高く、力押しで進むしかない場面もあるが、BIGモードで出現する頼朝や、「ひょっひょっひょ」、と笑いながら何度も現れ、名言「殺してしんぜよう」と発する「源義経」、「弁慶」などはそのビジュアルの大きさに圧倒されるが、攻撃自体は単調だったりもする。他にも「南無阿弥陀仏」と唱えながら『鳥獣戯画』の兎と蛙を投げて来る「琵琶法師」など、キャラクター、グラフィック、サウンド、フォントに至るまで徹底的に「和」で統一されているのがいとをかし。


 横スクロールモードで落とし穴に落ちると黄泉の国に飛ばされるが、このモードが1番難しい気がする。「閻魔大王」の元へ行き、複数の「つづら」のうち「生」を引き当てれば横スクロール画面に戻れるが、「死」を選ぶと即死してしまう。また、このモードではステージ分岐点となる鳥居が置かれており、ルートによっては難易度がそこそこ下がる。とは言え、京都以降のコンティニューと黄泉からの生還は京都からの再出発となり、加えて剣のパワーアップも元に戻り(シューティングゲームでよくありますな)、難易度が急激に上がる。更に、レトロゲームにはよくある事だけど、三種の神器の在り所はノーヒントである。えー。


 ババアはよく喋り、コンティニューをすると「ありがたや」、永久パターン防止の敵が現れる直前には「気を付けなされ」、黄泉の国に落ちると「愚か者」、コンティニューを選択しないと「諸行無常」などと言われる。うるせえババア!義経もうるせえ!主人公が「復讐」のためのダークヒーローというのも当時のユーザーは惹かれた。僕が初めてプレイしたのはX68000版だったが、自分もその1人だ。

 本作は当初、ナムコ内部で非公式に開発されていたが、社内コンペで中村雅哉会長の眼鏡に叶い、タイトルロゴのフォントは中村会長自らが書いた。また、映画『ゼイラム』や『手甲機ミカヅキ』などの映画監督である雨宮慶太氏による特撮プロモーションビデオも作られた。これは『ナムコミュージアムVOL.4』を起動する時にコントローラのL1+R1を押し続けると、本来のムービーではなく、このプロモーションビデオが流れる。

 88年にファミコン用ソフトに移植されると聞いてかーなーりー楽しみにしていたのに、いざ蓋を開けると容量の都合でボードゲームになっており、殺してしんぜようと思った。PCエンジンでは92年に『源平討魔伝 巻ノ弐』というオリジナルの続編が発売されている。尚、雰囲気が似ているためによく混同されがちなコナミ(現コナミデジタルエンタテインメント)のファミコン用ソフト『月風魔伝』の開発スタッフは、本作を参考にしたと後年打ち明けている。移植は多くのハードにされており、今でも気軽にプレイできる環境にあるため、一度は元祖「和の世界」を味わってみるのもいい。ありがたや。

 最後にネタバレにはなるが、エンディング後の辞世の句を下記に掲載しよう。

神様は死んだ
悪魔は去った
太古より巣喰いし
狂える地虫の嬌声も
今は、はるか
郷愁の彼向へ消去り
盛衰の於母影を
ただ君の
切々たる胸中深くに
残すのみ

神も悪魔も
降立たぬ荒野に
我々はいる

故深谷正一氏に
ささぐ。

 当時のナムコには「天上界」と呼ばれるほどのプログラマが2人おり、1人は後輩から「神」と崇められ、幾多のプログラマーを育てた深谷氏。もう1人は後輩から「悪魔」と恐れられ、『リブルラブル』など不可能と思えるプログラムを次々と手掛けた黒須一雄氏(現ゲームスタジオ相談役)の退社を指している。ナムコを支えてきた天才級プログラマーが立て続けに同社を去った事を偲び、「神も悪魔も降立たぬ荒野に我々はいる(=もう、2人に頼る事はできない)」と、ナムコの未来を憂う事もこの弔辞の意味のひとつである。結果的にそれは杞憂に終わるのだが、当時の社員のショックと不安が如実に表れていて諸行無常である。05年発売のプレイステーション2用ソフト『ナムコクロスカプコン』のでは、上記の一説「神も悪魔も降りぬ荒野に」がゲーム内のサブタイトルにもなった。色即是空。


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