2015/08/31

ディグダグ

【発売】ナムコ
【開発】ナムコ
【発売日】1982年3月
【媒体】アーケード
【容量】456Kbit(システム基板:Namco Galaga)
【ジャンル】アクション




「神」が作ったナムコらしさの結晶


【概要】
 82年にナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)から発売されたアクションゲーム。地中で敵にモリを撃ち込んでパンクさせるというユニークな発想、愛らしいデザインのキャラクター、軽快なBGMなど、ナムコらしい要素が詰まった良作として大ヒットした。主人公の「ディグダグ」が歩く度に鳴るキャッチーなBGMは「歩行音」で、作曲は後に『ゼビウス』や『パックランド』などのBGMを手がけた慶野由利子氏のデビュー作。

 尚、99年に発売された『ミスタードリラー』が当初『ディグダグIII』として開発されていた事もあってか、本作は後に「『ミスタードリラー』の前記譚」という後付け設定が加わり、主人公も「ディグダグ」から「ホリ・タイゾウ」へと名前が変更されている。これは『ミスタードリラー』の主人公「ホリ・ススム」の父親という設定だそうだ。これに伴い、本作は同社の「UGSF」シリーズに統合された。UGSFの概要は『ギャラガ』の項を参照あれ。本項では『ナムコミュージアムVOL.3』収録作品として、収録されたオリジナル版(アーケード版)について記述する。


【ゲームシステム】
 サイドビュー縦スクロール形式のアクションゲーム。風船の様な赤い体に黄色のゴーグルがかわいい「プーカァ」と、一定のタイミングで火を吐く怪獣の「ファイガ」を全て倒せば1ラウンドクリア。モリを撃ち込んでパンクさせるか、岩を落として潰す事で倒せる。最後の1匹になると地上へ逃げて行くが、取り逃がしても特にペナルティはなく、そのままクリアとなる。また、共に時折「目変化(めへんげ)」して地中をすり抜け移動して来る。初心者にもとっつきやすく、それでいてモリの撃ち方や岩の下への誘導など、プレイヤーのテクニックがモノを言う場面も多い奥深いゲームだ。全255ラウンド。


【総評】
 まずは82年に発売されたという事に改めて驚き、その完成度の高さに唸る。85年にファミコン、04年にはゲームボーイアドバンスに移植された他、多くのプラットフォームで遊ぶ事ができるが、実質的な続編は85年発売の『ディグダグII』のみであるにも関わらず、現在でも高いネームバリューと根強いファンが多い事からも、本作がどれだけ練り込まれて作られたのかが分かる。

 古くからのゲームファンは誰しも「ナムコらしさ」という事を一度や二度考えた事があると思うが、『パックマン』の開発者である岩谷徹氏(現東京工芸大学教授)は、「どこか人の温もりがある新しいチャレンジ」と答えており、納得するまで没頭できる物作りの環境があったからだとしている。同じ様に『ギャラガ』を開発した横山茂氏(現バンダイナムコスタジオ常務取締役)は、それに加えて「開発者に共通していたのは手を抜かない事」とも語っている。この『ディグダグ』もプレイしてみれば、そんなナムコらしさに溢れているのが分かるはずだ。ちなみに僕が最も好きなナムコキャラは本作のプーカァだ。かわいいよね!

 本作を開発した深谷正一氏は、『ボムビー』や『キューティQ』、『キング&バルーン』、『スーパーパックマン』などを手がけ、岩谷氏や横山氏らと共に初期のナムコを支えた人物だ。『マッピー』、『ドルアーガの塔』、『ワープマン』(オリジナル版は『ワープ&ワープ』)などのファミコンへの移植も手がける一方、『ゼビウス』を開発した遠藤雅伸氏(現ゲームスタジオ代表取締役)ら、ゲームプログラマーの育成にも力を注いだ。温厚で人望も厚く、当時の社員からは「天才」や「神」とまで呼ばれていたそうだ。全ての要素が異様なまでの完成度の高さで融合した非常にナムコらしい本作は、ファミコン版で熱中した人もきっと多いはず。

 そんな「神」と呼ばれた深谷氏の経歴は、残念ながら『ワープマン』で止まってしまう。いよいよ本格的にビデオゲームの時代が到来しようとしていた85年、業務中に腹痛を訴え早退した深谷氏は、10日後に肝臓破裂で急死した。享年31歳というあまりにも早過ぎる突然の死は、ナムコファンはもとより社内の開発者達にも衝撃を与えた。深谷氏の死後にリリースされた『モトス』(生前に開発中だったという)、『イシターの復活』、『源平討魔伝』、『ドラゴンスピリット』のエンディングでは、深谷氏を偲んだ追悼のメッセージがエンドロールで流れる。これを見てもどれだけ崇敬されていたかが分かるだろう。

 ナムコ第一次黄金期のエッセンスが濃縮された本作。現在でも各ダウンロード販売をはじめ、オムニバスソフトにも必ずと言っていいほど収録されている。また、アーケード版よりも難易度がやや低く初心者には遊びやすいファミコン版も500円前後と比較的安価で入手しやすいため、未プレイの人はぜひ遊んでほしい1本だ。



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