【発売】テクモ
【開発】テクモ
【発売日】1987年9月18日
【定価】4,900円
【媒体】ファミコン用カートリッジ
【容量】512Kbit
【容量】512Kbit
【ジャンル】スポーツ
技術とセンスが光る家庭用機初の相撲ゲーム
【ストーリー】
どすこーい、どすこい!君も相撲をやってみないか?最初は前頭十三枚目だけど、戦いながら経験を積んで、強くなっていく。どんどん勝って、うでっぷしを上げて、横綱を目指せ。勝者となって相撲界の星となるか、敗者となって負け犬人生を送るかは、君の努力にかかっている。親方気分を味わいたい君は、対戦モードで勝ち抜き戦。キミも親方、友達も親方、みんなでワイワイガヤガヤ、はっけよーい、のこった!
【概要】
テクモ(現コーエーテクモゲームス)による家庭用ゲーム機初の相撲ゲーム。簡単な操作でありながら、ボタンの組み合わせによって多彩な技が繰り出せる奥深さを兼ね備え、なおかつ勝ち星を重ねるごとにプレイヤーの力士が成長する育成要素まで盛り込んだ意欲作。相撲ゲームの基本システムを確立し、同ジャンルにおける以降のスタンダードとなっただけあって、1作目にして完成度は非常に高い。また、後の対戦型格闘ゲームの原型となった作品のひとつでもある。
【ゲームシステム】
固定画面のサイドビュー形式による対戦型相撲ゲーム。プレイヤーは新入幕の前頭十三枚目となって一場所15日の取り組みを勝ち抜いていく。「立ち合い」から「寄り」、「押し」、「投げ」、「つっぱり」、「はたき」といった基本動作、「もろだし」、「すうぷれっくす」、「ぶれえんばすたあ」などの特殊技まで、全て十字キーとA、Bボタンの組み合わせで行う。これらの技は、画面下に表示されている「体力メーター」が点滅するタイミングに合わせてボタンを押す事で発動する。体力メーターは相手の技を受けると減り、相手を攻撃すると回復。相手の強さや受けた技によってメーターの減り方は異なる。
また、プレイヤーは勝ち星を重ねる事で「うでっぷし(レベル)」が上がり、攻撃力と防御力が上昇する。前頭十三枚目から順に前頭一枚目、小結、関脇、大関と番付を上げ、二場所連続優勝を果たして横綱に昇進した後に優勝するとエンディング。番付は負けが込んでも下がる事はなく、パスワード制によるコンティニューも導入されている。2プレイによる対戦モードでは、4つの相撲部屋の中から各1部屋を選択し、その部屋に所属する5人の力士による勝ち抜き戦ができる。
【総評】
『テニス』や『ゴルフ』、『F1レース』など、任天堂からファミコン初期に発売された一連のスポーツゲームは、各競技「初」にして既に基本システムを確立させた作品が多い。以降、野球ゲームのスタンダードとなった『プロ野球ファミリースタジアム』(ナムコ)や、当時はあまり馴染みのないアメリカンフットボールが題材の『10ヤードファイト』(アイレム)など、様々な競技がゲームの題材となった。が、こと大相撲に関しては、千代の富士関の「ウルフフィーバー」とファミコンブームの時期が重なるにも関わらず、家庭用ゲーム機はおろかアーケードでもほとんど見かける事がなかった。本作以前に相撲を題材にしたゲームは、84年にテクノスジャパンが開発した『出世大相撲』(新日本企画)とデコカセットシステム用カセットテープ『大相撲』(データイースト)のたぶん2作程度で、どちらもアーケード用だった。
他競技に比べ、なぜ相撲ゲームの登場がここまで遅れたのか。それは、相撲のルールそのものにあったのではなかろーか。1対1による対戦形式ながら、まず「組む」事から始めなければならない。その状態で多彩な決まり手を繰り出すデバイスは、ボタン数の少ないファミコンやアーケード筐体のコントローラだ。単なる押し相撲では「相撲ゲーム」として成立しない。「シンプルながら奥深い」という表現は何にでもわりと安易に使われがちだが、実際に両立させるのは簡単ではなく、当時の各ゲームメーカーが敬遠するのも分からなくはない気がするのだった。
本作では、立ち合いから寄り、つり、投げ、はたきといった基本動作のほとんどをBボタンに割り振り、相手の体力メーターが減った際に十字キーとAボタンによるコマンド入力を行う事で、決まり手となる技が出しやすくなり、勝敗が決まるというシステムを築いた。まだ「対戦型格闘ゲーム」という概念さえ曖昧だった時代だ。これにレベル上げの要素を重ねる事で、プレイヤーに成長の手応えを感じさせ、ゲームに奥深さを与えた。この体力メーターこそが本作のキモなのだ。元々テクモは前身のテーカン時代からサッカー、アメリカンフットボール、野球、プロレスなど、現在までに幅広い競技のゲーム化を手がけているだけあって、このシステム周りの完成度はさすがと言えよう。
本作にはもうひとつキモがある。それは、質実剛健な大相撲の世界を、比較的低学年層の多いファミコンユーザーへ取っ付き易く表現したローカライズのセンスだ。ゲームを始めると、当時では珍しい漢字表示でまずは四股名を決める。55文字という制限はあるが、当て字で自由に四股名を決めるだけでもチビッ子達にとっては楽しめる。力士のグラフィックはプレイヤーも相手も肌と廻しの色違いのみだが、そのぶん表情が非常に豊かに描かれている。取り組み前の四股や塩撒き、ポーズボタンを押した際にほうきを持って土俵を清める呼出の登場など、さりげない演出にもセンスが光る。特に(≧▽≦)←こんな顔したうさぎの行司がかわいい!
派手なプロレス技も用意されているが、『つっぱり大相撲』の技と言えば「もろだし」だろう。要は廻しが取れて局部っていうかちんこっていうか、あ、ちんこって書いちゃったけど、これ、bloggerの規定に引っかかったりしないですかね?なんか心配になってきたんで、今のうちにちんこって書いた事を謝っておきます。ごめんなさい。…えーと、何の話だっけ…ああ、ちんこじゃねえ「もろだし」の話だ。本来は「不浄負け」という非技の名前で、100年に1度あるかないからしいが、「廻しが取れる=もろだし」と信じている元ちびっ子達は自分を含めきっと多いはずだ。ともだちんこ!へけけ!←マイナス5億点。
練り込まれたシステム、軽やかな演出とBGMに親しみのあるグラフィック。大きな欠点もなく、現在も名作のひとつに挙げられる本作は、僅か2ヶ月で開発されている。先にスタートした『キャプテン翼』の開発が遅れに遅れまくっていたため、そっちを一時中断して本作が開発されたのだ。当時のゲーム開発は今とは比較にならない少人数&短期間で行われていたとは言え、『マイティボンジャック』の3ヶ月といい、テクモわりかしめちゃくちゃである。そして、何よりそんな短期間で異常な完成度のゲームを生み出す当時のテクモ開発陣のスキルの高さ&センスのよさ。実際、80年代から90年代初期にかけてのテクモ製ゲームには、上記以外にも『スターフォース』や『アルゴスの戦士』、『ソロモンの鍵』、『忍者龍剣伝』、『キャッ党忍伝てやんでえ』などの良作が多い。
ちなみに、本作の開発に携わった鶴田道孝氏のサイトでは、超ハードスケジュールに追い詰められながらも考え出されたプログラムの一部が後に『キャプテン翼』の開発に転用できた話や、鉛筆画によるキャラクタースケッチといったテクモファン必読な内容が掲載されているので、ぜひ読もう!
その完成度の高さからPCエンジンやスーパーファミコンなどで続編も発売。本作自体も相当数が売れたため、現在の中古市場では200円前後と安く入手できる他、Wii、Wii U、ニンテンドー3DSの各種ダウンロード販売や、発売されたばかりのニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータにも収録されているため、今でもわりと気軽に楽しむ事ができるので、君も相撲をやってみないか!
【2016.11.21.追記】
本作の開発に携わられた鶴田道孝様より、本エントリーをTwitterで紹介して頂きました。ありがとうございます。鶴田様の最新情報や現在の作品は「WELCOME turu3net」からご覧頂けます。
1987 (C)TECMO LTD.
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