【発売】ベック
【開発】ベック
【発売日】1994年4月22日
【定価】9,800円
【媒体】スーパーファミコン用バックアップカートリッジ
【容量】12M
【容量】12M
【ジャンル】シミュレーション
粗製乱造されるゲーム化の悪習を断ち切った佳作
【ストーリー】
ハイパーテクノロジーの発展と共に、あらゆる産業に進出した汎用人間型作業機械「レイバー」。20世紀終盤から始まったレイバーの開発競争は激化の一途を辿り、今やとどまるところを知らなかった。そんな中、レイバー産業の大手である篠原重工は、資本力にモノを言わせた強引な買収で中規模の産業ロボットメーカーを次々と吸収合併し、その技術力を高めていった。レイバーの初期開発で重要な役割を果たした沢弥工業も、こうした企業のひとつである。
篠原重工の買収によって全てを失い、失望に暮れる沢弥工業の研究員達。その中には、社長の一人娘である沢弥すみかの姿もあった。篠原重工は、彼女が苦心の末に完成させたレイバー用の汎用OSを、いとも簡単に奪い去っていったのだ。そして、沢弥工業の買収劇から数年が流れ、人々がその記憶を忘れかけようとしていた頃、首都・東京の片隅で、篠原重工、いや、レイバーの存在そのものに復讐するため、ある計画を企てる者達がいた...。
【概要】
ゆうきまさみ、出渕裕、高田明美、伊藤和典、押井守の5人からなる「ヘッドギア」原作による『機動警察パトレイバー』は、88年に発売されたオリジナルビデオアニメからスタートし、コミックス、劇場用アニメ、テレビアニメ、小説、実写映画、短編アニメとあらゆるメディアで展開された近未来ポリスアクションストーリーで、今でこそ珍しくないメディアミックス作品の先駆けとなった。18年には30周年を迎え、今後も新作が予定されている。
『パトレイバー』は主に3つのパラレルワールドがあり、メディアによってコメディやサスペンス、企業犯罪など様々なテーマを扱っているが、90年代末、「レイバー」と呼ばれる産業用ロボットによる犯罪に対抗するため、警視庁警備部内に新設された「特車二課・パトロールレイバー中隊」の隊員達による群像劇が根幹を成す。本作は他のロボットアニメとは一線を画すレイバー戦と、シリーズの根底に流れる人間ドラマに焦点を当てている。
『パトレイバー』は主に3つのパラレルワールドがあり、メディアによってコメディやサスペンス、企業犯罪など様々なテーマを扱っているが、90年代末、「レイバー」と呼ばれる産業用ロボットによる犯罪に対抗するため、警視庁警備部内に新設された「特車二課・パトロールレイバー中隊」の隊員達による群像劇が根幹を成す。本作は他のロボットアニメとは一線を画すレイバー戦と、シリーズの根底に流れる人間ドラマに焦点を当てている。
【ゲームシステム】
トップビュー形式のシミュレーションゲーム。とは言え、戦略性はほとんどなく、アドベンチャーゲームに近い。全21ステージ。サイドビュー形式によるキャラクターの会話劇から、事件発生後はトップビュー形式へ切り替わる。隊長の「後藤喜一」率いる特車二課第2小隊は、パトレイバー「イングラム」で犯人レイバーを探索&追い詰め、基本的には逮捕するのが目的。イングラムは常にバッテリーを消費するため、「レイバーキャリア」でその都度バッテリー補充を行う必要がある。バッテリーがなくなるか、イングラムを破壊されるとゲームオーバー。
特車二課第2小隊は、イングラム1号機搭乗の「泉野明」、指揮担当「篠原遊馬」、レイバーキャリア担当の「山崎ひろみ」による1班と、「太田功」、「熊耳武緒」、「進士幹泰」による2班体制で、出動時にどちらかの班を選択できるが、ステージによっては強制的に指定された班が出動する事もある。特に野明と太田の性格の違いによって1つのステージでもスムーズに事件が解決する場合もあれば、その逆もしかり。また、現場に到着した班によって会話劇も異なり、最終ステージでは野明の1号機、太田の2号機によってエンディングに至る経緯が異なる。
イングラムは主に「力技」8種、「器用技」8種の単発技から、錬度を増すと「連続技」3種が使用可能となる。これらの技は実戦での経験値によっても上がるが、イングラム同士の「模擬線」によって意図的に上げる事もできる。模擬戦はステージ1終了後から可能となるため、ここで1時間ほど延々と模擬戦を行い、1号機、2号機共にパラメーターを最大値まで上げておけば、以降のステージはストレスなく純粋にストーリーを楽む事もできるのだ。ただし、トップビュー画面で周辺の建物に被害を及ぼすと、ペナルティとして各種ポテンシャルが下がる。
特車二課第2小隊は、イングラム1号機搭乗の「泉野明」、指揮担当「篠原遊馬」、レイバーキャリア担当の「山崎ひろみ」による1班と、「太田功」、「熊耳武緒」、「進士幹泰」による2班体制で、出動時にどちらかの班を選択できるが、ステージによっては強制的に指定された班が出動する事もある。特に野明と太田の性格の違いによって1つのステージでもスムーズに事件が解決する場合もあれば、その逆もしかり。また、現場に到着した班によって会話劇も異なり、最終ステージでは野明の1号機、太田の2号機によってエンディングに至る経緯が異なる。
イングラムは主に「力技」8種、「器用技」8種の単発技から、錬度を増すと「連続技」3種が使用可能となる。これらの技は実戦での経験値によっても上がるが、イングラム同士の「模擬線」によって意図的に上げる事もできる。模擬戦はステージ1終了後から可能となるため、ここで1時間ほど延々と模擬戦を行い、1号機、2号機共にパラメーターを最大値まで上げておけば、以降のステージはストレスなく純粋にストーリーを楽む事もできるのだ。ただし、トップビュー画面で周辺の建物に被害を及ぼすと、ペナルティとして各種ポテンシャルが下がる。
【総評】
『パトレイバー』は本作以前にも、ファミコン用ディスクカード『機動警察パトレイバー 第2小隊出動せよ!』(バンダイ)、ゲームボーイ用 カートリッジ『機動警察パトレイバー 狙われた街1990』(ユタカ)、メガドライブ用カートリッジ『機動警察パトレイバー〜98式起動せよ〜』(マーバ)、PCエンジンスーパーCD-ROM専用『機動警察パトレイバー グリフォン篇』(リバーヒルソフト)と、主要ハード全てにおいてゲーム化されていたが、デジタルコミックの『グリフォン篇』を除けば、粗製乱造の「悪しきキャラクターゲーム」の代表とも言え、特に『狙われた街1990』は怒りすら覚えるほどメーカーの志が低かった。
キャラクターゲームに駄作が多い理由は、その作品に依存し過ぎてゲームとして成立していないか、原作を無視し過ぎてキャラクター性が希薄になり、ファンからヒンシュクを買うかのどちらかのケースが多い。デベロッパーとして、数々のバンダイ(現バンダイナムコエンターテインメント)製ゲームを手がけたベック(現B.B.スタジオ)は、本作を完全に『パトレイバー』ファンのみにターゲットを絞る舵を切った。この舵取りは、当時の情勢から鑑みれば、かなり思い切った決断だった様に思う。
ゲームの前評判は基本的に専門誌の偏ったレビューが多大に影響していた時代、原作付きのキャラクターゲームは、往々にして及第点以下と判断されていた。また、本作が発売された94年は、各メーカーがスーパーファミコン用ソフトの開発に手慣れた頃であり、過去最多の370タイトルが発売されている。その中で、ゲームに関しては過去の実績がほぼゼロに等しい『パトレイバー』の5度目のゲーム化は、ファンからしても期待度は薄かった。更に、91年の湾岸戦争の影響により、世界中で慢性的な半導体不足にあったスーパーファミコン用ソフトの価格は、ファミコン時代のほぼ倍の9,800円が主流であった。それでも、「原作ファン以外のユーザーは切り捨てる」というベックのこの決断は、功を奏した。
コミックス版の後日譚として01年の7月から8月を舞台とし、シナリオはテレビ版などの脚本を担当した横手美智子氏に依頼。本作のオリジナルキャラクター「沢弥すみか」のデザインとパッケージイラストは、ヘッドギアの1人である高田明美氏、同オリジナルレイバー「グスタフ」のデザイン及び戦闘シーンの原画は、アニメ版のサブメカニックデザイン全般を担った佐山善則氏が描き下ろし、アニメ版のプロデューサーである鵜之澤伸氏(現バンダイナムコホールディングス執行役員)と杉田敦氏(現バンダイナムコアーツ)が「チェック機構」として名を連ねた。
結果として、本作は「5度目の正直」としてようやく「志のある『パトレイバー』のゲーム」と相成った。目の前の事件を解決しながらも、過当競争時代のレイバー開発によって人生を狂わされた元令嬢と、レイバーの基礎理論を確立しながら冷や飯を食わされてきた「古柳研究所」の研究者達による思惑に、特車二課が徐々に巻き込まれていくストーリー。「ビジュアルバトル」と銘打った美麗でスピーディーなレイバー戦。スーパーファミコンの機能を充分に活かしたゲーム性。事実、『パトレイバー』のゲームとしては初めて、週刊ファミ通の「売り上げトップ30」のコーナーにも顔を出し、「商品」としての実績も作った。
実は、ベックはほぼ同時期に開発を手がけた『スレイヤーズ』(バンプレスト)でも、ファンのみにターゲットを絞った手法を取っており、ある程度の勝算はあったのかもしれない。バンダイグループの中で一般的にはあまり馴染みのない同社だが、メーカーとしての目利きと、デベロッパーとしてのスキルを備え、その後も良質なキャラクターゲームを輩出。開発コストの高騰と半導体の安定供給の見込みが立たない中、本作発売の半年後には、家庭用ゲーム機のメディアはコストの安いCD-ROMへと移ると、同社は後にセガサターンの名作『機動戦士ガンダム外伝1 戦慄のブルー』(バンダイ)をはじめとする『ガンダム外伝』三部作でゲームファンからの認知度も一気に上がった。
本作の細かい点にも少し触れておこう。まずは音響関係。『パトレイバー』の劇伴はアニメ、実写共に全て川井憲次氏が手がけているが、本作では同社のサウンドチームが川井氏の音楽に近いオリジナルのBGMを作曲(ただし、スーパーファミコン音源のギター音がちょっとうるさい)。また、効果音も劇場版に近いそれを実現している。これらのBGMと効果音は、ゲーム内の「待機室」でいつでも聴く事ができ、ステレオ、モノラルの他、ダイナミックバスブーストの3種のサウンド出力が可能となっている。
一方、前述した様に小難しいシミュレーション要素はほぼ皆無である。また、トップビュー画面のグラフィックが若干ヘボい。そして、最大の欠点はとかく文字が見難い事!明朝体風のフォントに長体をかけ過ぎであり、会話劇を楽しむにはちと辛いのだった。
とは言え、ゲーム初心者のファンでも充分に楽しめる作品に仕上がっているのは間違いない。現在での中古価格は完品で1,000円前後なので、コミックスを読む感覚でプレイしてみるとよいよいよいよい(残響音含む)。
とは言え、ゲーム初心者のファンでも充分に楽しめる作品に仕上がっているのは間違いない。現在での中古価格は完品で1,000円前後なので、コミックスを読む感覚でプレイしてみるとよいよいよいよい(残響音含む)。
Goods
発売前に専門誌で掲載された発売告知広告。
前述した様に『パトレイバー』は主に下記の3つのパラレルワールドに分かれる。
・コミックス版
・オリジナルビデオ版→劇場版→小説版→実写版
・テレビ版→新オリジナルビデオ版
前述した様に『パトレイバー』は主に下記の3つのパラレルワールドに分かれる。
・コミックス版
・オリジナルビデオ版→劇場版→小説版→実写版
・テレビ版→新オリジナルビデオ版
本作はこのうちのコミックス版を元にしているが(そのために「香貫花クランシー」は登場しないが、第1小隊の「石和巡査部長」が登場する)、パッケージイラストが公開されるまではテレビ版のビジュアルで構成されている。また、発売日が94年春→94年初春→94年4月と移り変わっている。
(C)HEADGEAR / EMOTION / TFC / SHOGAKUKAN (C)BEC 1994
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