2022/01/17

山村美紗サスペンス 京都龍の寺殺人事件

 



【発売】タイトー
【開発】トーセ
【発売日】1987年12月11日
【定価】5,500円
【媒体】ファミコン用カートリッジ
【容量】2M
【ジャンル】アドベンチャー




薄いストーリーと致命的なバグを抱えたお粗末な「商品」


【ストーリー】
 その事件は、桜の花の舞う京都・龍の寺で起こった。

 主人公は、新作ゲームのイベントのため、京都の龍安寺にやって来たゲームデザイナー。ところが、龍安寺で偶然にも女性の死体を発見。その手のひらには、文字の書かれた6枚の桜の花びらが握り締められていた。殺された女性の名は、尾沢百合子。京都でも有数の資産家の娘だ。しかし、事件はこれだけに留まらず、第二、第三の殺人事件に発展していく。京都の龍の寺々を舞台にして…。

 驚くべき事に、一連の殺人事件は、ゲームデザイナーが構想中の次のゲームの内容とそっくりに進んでいくのだった。そのために京都府警本部の狩矢警部に、容疑者としてマークされてしまう。このゲームデザイナーとは、あなたの事。推理力バツグンのパートナー、キャサリンの協力を得て、独自で事件の捜査を開始するが、尾沢家の財産を巡る争いなど、複雑な人間関係が入り乱れ、謎はますます深まっていくのだった…。


【概要】
 ミステリー作家の山村美紗氏が『キャサリンシリーズ』より脚本を書き下ろしたアドベンチャーゲーム。ドラマも多く放送されており、特に96~06年までTBS系列で放送されたかたせ梨乃氏主演『名探偵キャサリン』の印象が個人的には強いが、本来の「キャサリン・ターナー」は「アメリカ副大統領の娘」という設定。龍安寺、天龍寺、善峯寺、三玄院など、京都を舞台にしているのが特徴。


【ゲームシステム】
 オーソドックスなコマンド選択式アドベンチャーゲーム。メインコマンドはアイコン化され、視覚的に分かりやすい。このテのゲームでは刑事や探偵が主人公の場合が多いが、主観が容疑者の1人(のわりには自由に動けるけど)という点もユニークだ。ゲームに詰まった時は、自分の部屋に戻って考えをまとめたり、キャサリンに助言を求める事もできる。捜査期間は4月15~23日までで、その日に行うべき事を全て完了させると、日付が変わる仕組み。


【総評】
 タイトー初の本格アドベンチャーゲームとしては及第点と言いたいが、本作にはゲーム進行を妨ぐバグがいくつか存在する。各攻略サイトでも言及されているが、ここでは致命的な3点を挙げておく。

・17日に尾沢家へ行き、「およね」に「みなこ」の写真を見せると画面がバグり、フリーズする。
・20日にヴィラ都で「きく」→「あたりのひと」→「さわお」を行わずに移動すると、尾沢家の「みなお」の部屋と「みなこ」の部屋へ行けなくなり、進行不能となる。
・コンティニューはパスワード制だが、正しいパスワードを入力しても「パスワードがまちがっています」と表示される。何度かパスワードを最初から入力し直せば認識するが、これにはまいった。

 

 『影の伝説』『スペースインベーダー』の項でも述べたが、タイトー製ファミコン作品は「大味で詰めが甘い」という印象を僕は抱いていて、今回も残念ながら払拭できず。バグに関しては国内最大手のデベロッパーであるトーセ側の問題もあるが、デバックの甘いタイトー側の責任でもある。特にパスワード制コンティニューで正しいパスワードを認識しないのでは、これでゲームを止めてしまっても仕方がない。人物の顔グラフィックなど、頑張っている部分もあるが(特に松方弘樹氏が演じた京都府警刑事部捜査一課警部の「狩矢荘助」がすげー似ている)、「商品」としてはお粗末と言えよう。

 ストーリーは、旧家の遺産相続を巡る男女の愛憎を描いた、わりかし2時間ドラマなどでお馴染みのお話だが、山村美紗氏が書き下ろした脚本のわりには薄っぺらい。最初の被害者である「百合子」が握っていた6枚の桜の花びらに書かれた文字も、似た様な名前の平仮名表記なので覚え難く、誰にでも該当してしまう。進行上のフラグ立ても不必要なものが多く、これでストーリーに深みを加えようとしたつもりなら、舐められたものだ。肝心のキャサリンもあまり役に立たず、事件の辻褄合わせというか狂言回しに終始と、全体的に浅く薄く大雑把なのだった。



(C)TAITO CORP. 1987

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