2026/09/10

サンパギータ

 

 



【発売】ソニー・コンピュータエンタテインメント
【開発】シュガーアンドロケッツ、プロダクションI.G
【発売日】1998年10月15日(PlayStation the Best版:2001年8月16日)
【定価】4,800円(PlayStation the Best版:2,800円)
【媒体】プレイステーション用CD-ROM
【容量】CD-ROM2枚組
【ジャンル】アドベンチャー
【周辺機器】アナログコントローラ対応(振動のみ)




「やるドラ」とは何だったのか その3


【ストーリー】
 その夜、主人公は秋の冷たい雨が降り続く中、黙々と家路を急いでいた。気の乗らない合コンに付き合い、終電を乗り逃し、友人の1人にホテル代を貸したおかげでタクシーにも乗れず、ずぶ濡れになって歩くしかなかった。

 ようやく見慣れた光景が見えた辺りで、主人公はふと、物音を聞いた様な気がした。酒屋の裏の小道。覗き見ると、ひとりの女性がしゃがみ込んでいる。主人公の呼びかけに振り向いた彼女は、東南アジア系の朝黒い顔立ち。額からは血が流れている。放っておけなくなった主人公は、彼女を背負い、自分の部屋へ連れて行く。人心地ついたところで名前を聞いた主人公に、彼女は「マリア」と名乗る。出身はたぶんフィリピン。

 「...たぶん?」

 マリアはどうして雨の夜にあんな場所にいたのか、まるで思い出せないと言う。手掛かりを求めてマリアの荷物を調べてみると、2枚の写真に、カセットテープや化粧品、現金の他に一丁の拳銃が出て来る。驚いた主人公。混乱状態のマリアに、どういう言葉を掛けていいのか分からない。とりあえず、その晩は彼女を休ませ、明朝、主人公はバイトに出かけた。多分マリアはいなくなっているだろう。そう思いながら帰宅すると、部屋の中は綺麗に掃除されていて、見る限り誰もいない。だが、突然トイレの中から音がして、マリアが出て来る。

 「だって、行くトコないもの」

 こんな風にして、主人公とマリアの同居生活が始まった…。


【概要】
 「みるドラマから、やるドラマへ。」のキャッチコピーで98年にソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)が発売した「やるドラ」シリーズ4作の第3弾。キャラクターデザインは『アップルシード』や『攻殻機動隊』の士郎正宗氏。アニメーション制作会社のプロダクションI.Gによるフルアニメーション&フルボイスのクオリティは非常に高い。やるドラシリーズは当初、『フォーシーズンストーリー』という1本のソフトとして企画されていたため、各作品ごとに季節と花が設定されている。本作は当初『ダヒル・サ・ヨ』=フィリピン語で「あなたの故に(あなたを愛している)」というタイトルで、舞台の季節は「秋」、象徴的な花は「マツリカ」=フィリピン語で「サンパギータ」。


【ゲームシステム】
 フルアニメーション&フルボイスで進行するアドベンチャーゲーム。プレイヤーは途中で表示される選択肢を選び、その結果によってストーリーが変化する。マルチエンディング方式で、ベストエンディングは3種類、ノーマル及びバッドエンディングは25種類ある。1周するごとにゲーム中に存在する経路のうち、どれくらいの経路を通過したかが分かる「達成率」が表示され、その数字が高くなるごとに新たな選択肢が登場するため、プレイする度にストーリーのバリエーションが増える。マニュアルは珍しい縦読み表示で、士郎氏のイラストが大きく掲載されている。

 何度もクリアする事が前提なので、1回のプレイ時間は1~1時間半と比較的短く、また、1度クリアしただけでは登場しないキャラクターもいる。


【総評】
 「やるドラ」シリーズは4作全て「大学生の主人公が記憶喪失のヒロインと出会う」という共通点がある。そのため、そーんな簡単に上手い事いくわけないだろー的な思いは導入部分に感じるが、そこはもう『季節を抱きしめて』『ダブルキャスト』で慣れました。まあ、これはそーゆーモンだとしよう。全体的に前2作よりブラッシュアップされており、特にアニメーション部分は、更に高品質になっている。



 ノーマルエンディングには無難な選択肢を選んでいけば比較的早く到達できるだろう。グッドエンディングに辿り着けなかった場合は、2回目以降のプレイで選択肢に「こっちを選べ」と「H」マークが表示され、グッドエンディングへと導かれる。前作でも述べたが、これをやっちゃうと完全に「見るドラマ」になってしまい、「見るドラマから、やるドラマへ。」の「やるドラマ」の根本が揺らいでしまう。また、本作からはプレイヤー(主人公)にも「声」が充てられ、更に「見るドラマ」の割合が強くなり、それに合わせてゲーム性=「やるドラマ」の部分が弱くなってしまっている。



 『季節を抱きしめて』のSFファンタジー、『ダブルキャスト』のサイコサスペンスに次ぎ、本作では硬派なサスペンスドラマに仕上がっている。キャラクターデザインとイラストを担当した士郎氏のグラフィックも際立っている。個人的好みだが、シナリオも前2作より面白かった。アニメーションも更に美しく動く様になっている。一方、主題歌「Hold On」はフィリピンのジャズ歌手であるマリーン・ペーニャ・リム氏の歌声はゲームとも合っているが、シナリオやグラフィックに比べて、サウンド面の弱さが目立つ。



 やるドラの面白さは、1度同じ選択肢を選んでノーマルかバッドエンディングにまで辿り着くと、次のプレイでは、新しい選択肢が出るだけではなく、前回までと同じ展開と思いきや、選択肢が出ずに急展開する事も多く、本作ではその部分もまたストーリーの展開が何度も気になって繰り返しプレイしたくなる魅力的なストーリーだ。前述した事と反対になるが、そう言った意味では好みに合ったストーリーでは、「やるドラマ」の部分も決しておろそかにはなっていないと言えるかもしんない。


 本作では『機動戦士ガンダム』や『うる星やつら』、『めぞん一刻』などの演出を手掛けたやまざきかずお氏の原作によるものだが、主人公の住んでいた木造アパートやフィリピンを彷徨っていた際に女性に案内された事、そして、そのフィリピン人の女性と結婚して移住。日本には「出稼ぎ」の様な生活をしていたそうで、やまざき氏の経験が存分に反映されている。特にフィリピンの日差しの美しさなどは素晴らしい描写だ。また、回想シーンで出て来る「九龍」の街並みは、映画監督の押井守氏が『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』で使用した写真集を使っている。『攻殻機動隊』は士郎氏原作のマンガであり、面白い繋がりですな。やまざき氏はネットでの情報によれば、13年に糖尿病を患い、右足の膝から下を切断。逆に奥様が日本へ移住しているという。そうだよなぁ、レトロゲーム扱ってるブログだけど、プレイステーションやセガサターンは喋るし動くしで「レトロ感」が個人的には薄くても、およそ30年前後経って、開発スタッフもその分お歳を召されているんだもんなぁ。しみじみ。

 個人手には必ずしもノーマルエンディングが悪いわけではなく、展開や個人的思いではそれがグッドエンディングとなる時も多い。ここがやるドラシリーズの面白い部分だ。逆に「グッドエンディング3」なんかは僕には共感できなかったなーとかね。やるドラが発表された際に、一番個性的で面白そうだと思っていたけど、その考えは間違ってなかったですよ。3作目だからこそ、個性的と言うか少しクセのあるデザインやストーリーにしたのはよかったと思う。



Books
『オフィシャルやるドラファンブック サンパギータ CD-ROMスペシャルデータ集』


   




【著】murmur's GROUP
【発売】ソニー・コンピュータエンタテインメント
【発売日】1998年10月15日
【定価】2,500円

 SCEIのオフィシャルブック。基本的には前2作と同じ構成。キャラクターや舞台背景などの設定画、スタッフインタビューなど、特にビジュアル面での内容が充実している。付属のCD-ROMにはグッドエンディング3種類のセーブデータ、ドラマ台本、キャラクターや舞台の設定画、スタッフインタビューと充実している。


(C)1998 Sony Computer Entertainment Inc. All rights reserved. Produced by Sugar & Rockets Inc.
※「やるドラ」はソニー・コンピュータエンタテインメントの商標です。

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