2014/11/18

めぞん一刻

【発売】ボーステック
【開発】クエスト
【発売日】1988年7月21日
【定価】5,900円
【媒体】ファミコン用バックアップカートリッジ
【容量】2M+64KRAM
【ジャンル】アドベンチャー




志のあるキャラゲー


【ストーリー】
「管理人さん!」
「管理人さんだなんて…響子って呼んで」
「きょ、響子…好きだ!」
「いけませんわ、そんな、五代さん」
「いいじゃないか、響子、響子、響子…」






 時計坂のオンボロアパート「一刻館」で、妄想に浸っている五代裕作。一浪の末にやっと大学に入り、現在3年生。一刻館の管理人・音無響子にひたすら思いを寄せている、頼りなくて貧乏なこの五代をキミが演じます。ところが、若き未亡人の管理人さんはヤキモチ妬きで、機嫌を損ねると部屋に入れてくれないどころか、話もしてくれなくなります。おまけに一刻館の住人達は、ひと癖もふた癖もある人達ばかり。たかるは、邪魔はされるは…。どうやら響子さんは秘密の写真をどこかに落としてしまったらしいという事は分かっても、その写真がどんなものなのかを調べるのにひと苦労。さあ、響子さんの秘密の写真とは…。『めぞん一刻』はじまり、はじまり―――。


【概要】
 高橋留美子氏原作の『めぞん一刻』は、80~87年にビックコミックスピリッツに連載され、86~88年にはテレビ&劇場アニメ化された他、86年には実写映画、07~08年にはテレビドラマ化もされている、80年代を代表するラブコメマンガの金字塔だ。その人気を受けて、86年にマイクロキャビンからパソコン用として『めぞん一刻~思いでのフォトグラフ~』が発売。本作はそれをクエストがファミコンへ移植したものであり、原作の中盤あたりが物語の舞台となっている。


【ゲームシステム】
 主人公の「五代裕作」を操り、管理人「音無響子」のなくした写真を見つけるのが目的のコマンド選択式アドベンチャーゲーム。電源を入れるとアニメ第1期の主題歌「悲しみよこんにちわ」が流れ、ストーリーもアニメの1エピソード的なものとなっている。プレイヤーは五代くんだが、三人称視点なので、たまに原作のちょっとしたエピソードが語られたりするのがファンには嬉しい。エンディングでは第4期の主題歌「サニーシャイニーモーニング」が流れるが、個人的には村下孝蔵の歌う第5期の主題歌「陽だまり」が一番好きだ。


【総評】
 難解な謎解きがあるわけではなく、ただ一刻館の中で管理人さんの写真を探すだけなのだが、導入部分からしばらくは目的が分かり辛い。それに、タイトル画面でロードができず、毎回初期状態からスタートし、トイレまで移動してロードしなければならないのも若干出鼻を挫かれる感じだ。また、「一の瀬花枝」、「四谷さん」、「六本木朱美」の住人達がことあるごとに邪魔をしてくるため、なけなしの仕送りの食料や少ないバイト代で買った酒を与え、彼らのご機嫌を取らなければならない。ファンならお馴染みの展開なんだけど、この「ご機嫌取り」をやっている時間が大半を占めてしまうのは、もう少しなんとかならなかったものかと思う。

 数こそ少ないが、選択肢を誤るとゲームオーバーになるパターンもある。でも、これはたいてい自分の取ったうかつな行動が原因なので、ファンなら納得できるはず。同様に自分の行動が原因で管理人さんの機嫌を損ねてしまう事もあるので、響子さんってほんと面倒臭いオンナだな!こうして住人達の隙を見て管理人さんと少しづつコミュニケーションを取り、原作を読む様に、アニメを見る様に、ゲームでももどかしい気持ちになりながらプレイするのが正しいファンの姿勢なのかもしれない。

 不満点ばかり述べたが、「このゲームはダメなのか?」と問われれば、いやいやどうして、駄作の多いキャラクターゲームの中で、この『めぞん一刻』は掃き溜めの鶴子さんですよ。ゲーム雑誌の常套句である「ファンなら」という評価は、ファンではないレビュアーが不特定多数へ向けたある種の逃げ表現だと思ってるんだけど、コミックスを全巻揃え、アニメも全話見て、サントラや主題歌CDも買っていて、就職活動中に見た再放送の話で履歴書書いてる五代くんに共感を覚えた直後に四谷さんから「そんな物いくら書いても無駄ですよ」と言われ書くのをやめた(←おい)ファン視点から言わせてもらえば、肯定的な意味で「ファンなら楽しめる」と評したい。

 この時期のアドベンチャーゲームとしては、確かに荒削りである。ゲームとしての体裁が雑な部分も少なくない。けれども、このゲームにはそこかしこに原作への愛情が見え隠れしているのだ。前述の三人称視点による原作エピソードのネタしかり。キャラクターにしても、五代くんの祖母「ゆかりばあちゃん」や悪友の「坂本」、スナック「茶々丸」のマスターは、その性格をよく表したうえで「システム」として存在している。1度しか出番のないキャラクター達も、開発側の「なるべく多くのキャラを出して喜んでもらおう」という計らいを感じさせるのだ。また、高橋留美子ファンならニヤリとさせられる、どこかで見たキャラクターも2ヶ所にゲスト出演している。

 グラフィックはアニメ版を基本にしつつも、高橋留美子の画風をも盛り込んだ美麗な一枚絵が多い。取扱説明書の4ページに渡る登場人物紹介はコミックスから抜粋されており、アニメ準拠の本作において、これまたファンには嬉しい心遣いだ。特徴のない様に聴こえるBGMも、アニメの劇伴を手がけた杉山卓夫&川井憲次両氏の音楽に似たテイストで、『めぞん一刻』の雰囲気がとてもよく出ている。多くのキャラクターゲームに見られる「よく分かんないけど人気あるみたいだからとりあえず作りました」とは違う、キャラクターゲームならではの志が見えるゲームだ。

 このファミコン版とほぼ同時期に、本家マイクロキャビンからPCエンジンにも移植されており、現在はどちらも完品で1,500円前後、カセットのみなら400円前後で入手できるので(僕はTwitterのフォロワーさんからいただきました)、ファンなら持っておいても損はない。


(C)R.TAKAHASHI (C)SHOGAKUKAN・KITTY・FUJI TV
ORIGINAL PROGRAM (C)MICROCABIN FAMILY COMPUTER PROGRAM (C)1988 BOTHTEC JASRAC V-80446号

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