2021/11/19

女神異聞録ペルソナ


【発売】アトラス
【開発】アトラス
【発売日】1996年9月20日(PlayStation The Best版:1997年6月27日)
【定価】6,800円(PlayStation The Best版:2,800円)
【媒体】プレイステーション用CD-ROM
【ジャンル】ロールプレイング




『女神転生』の残り香濃い新シリーズ


【ストーリー】

 瀬田区御影町…それが、主人公であるあなたが通う聖エルミン学園のある街。遺跡や神社など、歴史の古さを感じさせる建造物と、近代的なビルが群れをなす、歴史が凝縮された街である。

 その中で一際異彩を放つハイテク企業「S・E・B・E・C」~セベク~。エジプト神話で、獰猛かつ悪の化身として語られる神の名を冠した企業は、10ヶ月ほど前に御影町に拠点を設けた最先端企業である。しかし、若くしてセベクの支社長に抜擢された神取鷹久とセベクには、常に黒い噂が付き纏っている。街のあちこちで見かける黒いスーツに身を包んだ怪しい男達。夜中に地下より聞こえてくる不気味な機械音。社内を徘徊する黒い幼女の亡霊など、これらは全て街に渦巻くセベクに関連した噂の数々である。そして、胸に昏い野望を抱きつつ、平和な街を睥睨する神取の目的など、人々はまるで知らない…。

 主人公であるあなたも、そんな人々の1人。ミッション系私立高校、聖エルミン学園の2年生であるあなたは、マーク、ゆきの、南条、そして、幼少の頃から病弱なため、1年前から再入院している影のある少女・麻希など、何人かのクラスメイトに囲まれながらも、ごく平凡な日常を送っている。ありきたりな日常、当たり前のごとく流れて行く青春の僅かな時間…。

 そんな学園生活の中で、「未来の自分の姿が見える」という事から、いつの間にか生徒達の間で流行りだした、ちょっとした占い遊びである「ペルソナ様遊び」。主人公達は、この「ペルソナ様遊び」を始めた事がきっかけとなった一連の神秘的な出来事によって、心の奥底に潜む自分の多面性~別なる人格~の力である「ペルソナ」に目覚め始める。

 折しも、主人公達が麻希の見舞いに訪れているちょうどその頃、神取の野望が街を覆い尽くそうとしていた。街を襲う突然の変異の中で、否応なしに社会に投げ出された主人公達は、やがてセベクや神取と関わる事になり、事件に巻き込まれていく…。


【概要】
 ファミコン及びスーパーファミコンでコアユーザーに根強い人気を博した『女神転生』シリーズから派生した本作は、これまでのマクロな視点から、各々の苦悩や葛藤を抱えながらも前に進もうとする思春期に揺れる高校生達のミクロな視点で物語を紡いでおり、新たなファン層を獲得。『女神転生』シリーズから独立した『ペルソナ』シリーズとして、現在も続編が作られている。


【ゲームシステム】
 ダンジョン移動時は3Dビュー、会話や「ベルベットルーム」、イベントなどはクォータービュー形式のロールプレイングゲーム。遭遇した敵(悪魔)とは戦闘以外にも「会話」を行う事ができ、うまく交渉するとその悪魔の「スペルカード」が手に入る。これを複数枚集め、ベルベットルームへ持っていくと、悪魔を「ペルソナ」として身に着けたり、「合体」でより強力なペルソナを作る事ができる。本作では怪しい企業「セベク」とその親玉「神取鷹久」の野望を食い止める「セベク編」と、主人公の偶発的行為から学園が氷漬けになってしまう「雪の女王編」の2本のシナリオが収録されている。

 『女神転生』シリーズから引き継がれた要素もいくつかあるが、最も大きなポイントは、月齢(=月の満ち欠け)だろう。新月(NEW MOON)から満月(FULL MOON)までの間は9段階で表示されるが、この月齢がゲーム進行上大きなポイントとなる。まず、新月→満月の流れで悪魔の興奮度が上昇し、交渉が成立し難くなるだけでなく、戦闘時には全体攻撃など、威力の高いものを優先する様になる。そのため、FULL MOONに近い月齢でボス戦などに挑むのは得策ではない。また、ベルベットルームでのペルソナ作成時において、潜在能力や合体事故でのランダム魔法継承にも関係してくる。
 
 パーティーは5人編成。プレイヤーである主人公、病弱だけど明るい「園村麻希(マキ)」、お調子者だが人情にあつい「稲葉正男(マーク)」、たぶん元ヤンの「黛ゆきの(ゆきのさん)」、口の悪い金持ちのボンボン「南条圭(なんじょうくん)」、帰国子女で怪奇現象好きな「桐島英理子(エリー)」、今が楽しけりゃそれでいい「綾瀬優香(アヤセ)」、チャラチャラしてるので使った事がない「上杉秀彦(ブラウン)」の8人。「セベク編」ではマキ、マーク、南条くんが固定メンバー。「雪の女王編」ではゆきのさん、アヤセが固定メンバー。残りは任意選択でメンバーを選び、物語を進める。僕のお気に入りは南条くんとゆきのさんだ。


【総評】
 スーパーファミコンからいわゆる次世代機へとプラットフォームが変わった際、アトラスはそれまでの『女神転生』シリーズを受け継いだ『真・女神転生 デビルサマナー』をセガサターンで、新しい派生シリーズとしてプレイステーションで本作を発売した。当初は学園モノで少年少女が主人公、クォータービューの採用、悪魔を「仲魔」にできないといった面で『デビルサマナー』よりも低い前評判だった本作だが、いざ蓋を開けてみると、その新要素とこれまでの『女神転生』シリーズの残り香の強い内容に評価は一変し、狙い通りに新しいファン層の取り込みに成功した。

 
 
 全般としては、セーブポイントの少なさ、敵とのエンカウント率の高さ、ダンジョン内のサディスティックでスパルタンなトラップの数々など、若干ゲームバランスが崩れかけているほど非常にシビアなものとなっている。ついでに長い時間かけてクリアと思いきやバッドエンディング(アナザーエンディング)まで用意されてる徹底ぶり。また、スタッフ陣の岡田耕始ディレクター、金子一馬アートディレクターは従来のままだが、これまで尖ったサウンドを輩出していた増子司氏が『デビルサマナー』チームに行った事で、サウンド面がかなり弱くなってしまっている。本作のサウンドチームは、薬局「サトミタダシ」の店内BGMや本職のオペラ歌手を起用したベルベットルームのBGMを手掛けた沖辺美佐紀氏(現スパイク・チュンソフト)の他、後のシリーズで手腕を存分に発揮する目黒将司、土屋憲一の両氏による3名が担当しているが、このサウンド面の弱さは06年にプレイステーション2用ソフト『ペルソナ3』から目黒、土屋両氏が中心となり、ヴォーカル曲を多用したものに一新。09年にプレイステーション・ポータブルに移植された本作(タイトル名は『Persona』に変更)でも、『ペルソナ3』以降のイメージで多くの曲が差し替え、強化されている。

 やり込み要素が多いのも特徴だ。悪魔を倒して得る経験値はパーティー一律同じではなく、その戦闘中に活躍した順に振り分けられる。狙ったキャラクターが上手く育たない場合は、パーティーのフォーメーションを任意で変えてみるのも一考だ。また、キャラクターと同じく、ペルソナにも経験値が振り分けられる。レベルが上がると当然使用できる魔法などが増え、強くなる。ペルソナは1人につき3体まで降魔できるが、状況やゲームの進行具合に合わせて新しいペルソナを作るもよし、1つのペルソナを最大レベルまで育ててみるのもまた楽しい。

 ストーリーとしては、「セベク編」が本筋で、「雪の女王編」がサブシナリオに当たるが、どちらもクリアまでにはかなりの時間と根気が必要だ。僕の場合、「セベク編」だけでもクリアするのに94時間を要した。「セベク編」は、悪い会社が街を孤立させて悪魔を生み出したのでやっつけるゼ!的な内容で、「雪の女王編」は、主人公が見つけた仮面に悪魔が乗り移って学園が氷漬けになった&4本の塔が出現したので攻略するゼ!的な内容だ。相変わらずいい加減な説明でありすまんす。「セベク編」はあまり学園モノという事を感じさせないが、「雪の女王編」では学園内で起こった事件であるため、教師や生徒達とのコミュニケーションも多い。

 

 悪魔を除けば『女神転生』シリーズとの直接的な関係はないが、まだシリーズ1作目という事もあり、その影響は各所に見られる。また、フェンシング部に所属する「内田たまき」は、94年にスーパーファミコンで発売された『真・女神転生if…』の女性主人公だったりする。とにかく盛沢山であり、厳しいゲームバランスの中でも、それだけの時間を費やすに値する作品である。僕もまだやり込みが足りない部分があるので、引き続き楽しみたいと思う。



Books
『女神異聞録ペルソナ公式ガイドブック』








【著】飯田真佐史、新城健一、ファミ通編集部責任編集
【発売】アスペクト
【発売日】1997年1月9日
【定価】1,300円



 全4章で構成されたガイドブックだが、第1章の報告書風にまとめられた攻略チャートは、著者の独りよがりも甚だしく全く以て分かり難く、正直に言ってまるで役に立たない。全編を通してこの文体なので少々辛いが、第2章のマップ攻略は本作をプレイするうえで必須であるっつーか、攻略本なしでクリアとか僕には無理でした。ファミ通の攻略本が得意とするデータ類も充実しており実用的だ。
岡田耕始ディレクター、金子一馬アートディレクター、里見直シナリオライターのインタビューも掲載されており、全体としては無難な出来である。文体はアレだがマップだけでも必要性の感じられる1冊。表紙がイカス。



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