【発売】セガ・エンタープライゼス
【開発】セガ・エンタープライゼス(チームアクイラ)
【発売日】1998年6月11日
【定価】5,800円
【媒体】セガサターン用CD-ROM
【ジャンル】スポーツ
【周辺機器】セガマルチコントローラー、マルチターミナル6対応
【レーティング】全年齢
スポーツゲームの宿命には逆らえずの終幕
【概要】
『Jリーグ ビクトリーゴール'96』の続編。日本が初めてワールドカップに出場した98年フランス大会を戦う代表戦版で、シリーズ最終作。実況はサッカージャーナリストの小谷泰介氏、解説は元日本代表の金田喜稔氏、本シリーズではレギュラーの「ミスター・マリノス」こと木村和司氏、ナビゲーターにこれまで実況を務めていた金子勝彦氏の4人が名を連ねる。本作での日本代表は、97年のアジア最終予選から98年4月1日に行われた対韓国戦に出場またはベンチ入りした全35名の選手で構成されている。
【ゲームシステム】
これまでのシリーズ同様、トップビュー、サイドビュー、クォータービューへの切り替え式サッカーゲーム。ゲームモードは全32チームが世界の頂点を目指す「ワールドカップ98」、1試合のみの「フレンドリーマッチ」、選手の名前を変更できる「プレイヤーエディット」、難易度やハーフタイムの時間、実況の有無などを選択できる「オプション」。
また、本作独自のモード「Road to FRANCE」では、後にいわゆる「ジョホールバルの歓喜」と呼ばれるマレーシアのジョホールバルで行われたアジア第3代表決定戦対イラン戦を行う。このモードでは、通常の試合開始「はじめから」の他、前半39分にMF中田英寿が先制点を挙げた「日本先取点後」、後半開始僅か25秒で同点とされ、続く後半14分には逆転を許し、2トップのFW三浦知良とFW中山雅史をFW城彰二とFW呂比須ワグナーに同時交代させる背水の陣で挑んだ「後半18分」、このシステム変更が功を奏し後半31分に城が同点とし、延長戦に突入した「延長前半開始」という、実際にあった状況からプレイができる。
尚、この試合でイランに敗れると、アジア・オセアニア・プレーオフに回り、オーストラリアとのホーム&アウェイという「幻の試合」を行う事になる。
【総評】
本作の大きな特徴は、前述した様に、やはりアジア第3代表決定戦だろう。日本は途中で監督更迭など、アジア最終予選では最後まで苦戦を強いられ、毎試合ピリピリとした緊張感が漂っていた。なんとか上位2位に滑り込み、中立国のマレーシアで強豪イランと戦うも、試合はシーソーゲームとなり、延長戦へ突入。日本は最終予選で1度も出場機会が与えられなかったFW岡野雅行を投入するが、ミスを連発。逆にイランも反撃を見せる。両チームとも決定的なチャンスをものにできなかったが、PK戦突入も間近に迫った延長後半13分、呂比須が中盤で奪取したボールを中田がドリブルで持ち上がり、ミドルシュート。相手GKが弾いたボールを岡野が走り込み、右足でスライディングしながらゴールに押し込み、ゴールデンゴール(決勝点)を決めた。いやー、今思い返しても痺れる試合だったなー。54年のスイス大会予選に参加して以来43年。10回目の挑戦でワールドカップへの出場を果たした日本。ちなみに、ワールドカップ予選及び本大会でゴールデンゴール方式が採用されたのはフランス大会と02年の日韓大会のみのため、同方式でワールドカップ出場を決めたのは、この試合に勝った日本だけである。また、イランもオーストラリアとのプレーオフに勝利して本大会出場と相成った。
フランス大会は、98年6月10日から7月12日までの期間行われ、決勝では開催国のフランスが前回大会優勝のブラジルを3-0で下して優勝した。日本は、アルゼンチン、クロアチア、ジャマイカと同じグループに入るも、ワールドカップの壁は厚く、1勝もできなかったが、対ジャマイカ戦では中山が骨折しながらも日本の初ゴールを挙げた。このフランス大会を皮切りに、02年日韓大会、06年ドイツ大会、10年南アフリカ大会、14年ブラジル大会、18年ロシア大会、そして22年カタール大会と、途切れる事なくワールドカップ7大会連続出場を果たしているっていうか、サッカーの話ばっかしてますな。すまんす。
ゲームの方に話を戻すと、オープニングムービーで金子氏のナレーションと共にこれまでの日本のワールドカップへの挑戦が語られ、アジア第3代表決定戦でも途中途中にムービーを挟みながら金子氏が試合状況を伝える。正直、本作を所持しておく理由はこのためだけかもしんない。ムービーは『’96』のユニフォーム柄を変えただけの流用。また、これまで力を入れていたサウンド面だが、今回は実況のみ。金子氏と木村氏はさすがに安定しているが、ややクセのある小谷氏の実況と棒読みの金田氏の解説は若干辛いものがある。登録されているボキャブラリーも前作までに比べて少ない。そして、ワールドカップで優勝してもスタッフロールもなくいきなりタイトル画面に戻る淡泊さ。更に、画面に選手が密集すると処理落ちで動きが遅くなってしまう「劣化」も見られる。見た限り、フォントもフォントワークスの書体を使用してないと思われ、隙のない作りだった『’96』と比較すると、ワールドカップ初出場が決まった勢いだけで作った感が見え隠れする。まあ、嬉しいのは分かるんだけどさ、もうちょっとシリーズを大切にしてほしかったなー。
Jリーグやプロ野球のゲームでは、ゲームの基本が完成すれば、後は毎年選手及びチームデータを更新しただけの「新作」が発売され、前年のソフトは途端にワゴンセールへ放り込まれるのは当時も今も変わらない。これはスポーツゲームの悲しい宿命とも言えるが、本作を見る限りではこれ以上のアップデートも無理そうであり、記念すべきワールドカップ初出場を機にシリーズを終わらせたのは、セガの英断だと思おう。僕は中西永輔をFWに登録変更してワールドカップ得点王になるまで遊びましたけどね。
【2023.8.20.追記】
本作のナビゲーターを担当された金子勝彦氏が8月20日、肺炎のため死去されました。謹んで哀悼の意を表します。
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